北野武!?タランティーノ!?人生の不条理を黙って受けとめるニヒリズムの佳作 コウノコウジ『ロストドライブ』(少年画報社)

今回、紹介する作品は、コウノコウジの『ロストドライブ』です。

現代日本のヤクザが主人公で、題材は犯罪、見せどころはアクションとバイオレンス。

山ほどある類似作品のなかで、その独特の感じを強いていうなら、北野武やクエンティン・タランティーノの映画を連想させるということでしょうか。

つまり、ハードな暴力描写のなかに、ナンセンスに近い乾いたユーモアが点描され、その底には、人生の不条理を黙って受けとめるニヒリズムがあるのです。

主人公は「アニキ」と呼ばれる暴力団の幹部で、組の金をもって逃亡した会計士を追いかけて、アメリカに来ています。もちろん、英語などできないので、フィリピン女から生まれた混血の若者・拓也を通訳がわりに連れています。

「アニキ」の特徴は、どんなことがあっても一切顔に出さない無表情で、拓也はそこに痺れて、「アニキ」を慕っています。この「アニキ」の無表情には、子供のころ家庭で母親の情夫から暴力を受けつづけ、小学校では暗くてキモいといじめられた過去が原因だという説明がついています。しかし、それはまあ、物語の一応のお約束です。

ところが、この「アニキ」は、表面上は無表情なのですが、頭のなかでは延々と自分の不満やあせりや苛立ちを言葉にしてしゃべりつづけ、その内面のセリフがしばしばコマを埋めつくすのです。

この点で、主人公がほとんど内面を語らない北野武型と、主人公たちがたえずくだらない話を垂れ流しつづけるタランティーノ型の中間というか、折衷というか、総合というか、そんな感じになっているのです。


あわせて読みたい

幻冬舎plusの記事をもっと見る 2019年5月16日のライフスタイル記事
この記事にコメントする

\ みんなに教えてあげよう! /

新着トピックス

ライフスタイルニュースアクセスランキング

ライフスタイルランキングをもっと見る

コメントランキング

コメントランキングをもっと見る

コラムの人気のキーワード一覧

新着キーワード一覧

このカテゴリーについて

生活雑貨、グルメ、DIY、生活に役立つ裏技術を紹介。