必要以上に英雄化されたところで 犠牲者は喜ぶというのだろうか?

海外で大きな事故や事件が起きる。すると、日本のマスコミは、THE YELLOW MONKEYの吉井和哉さんが『JAM』という曲で歌うように「乗客に日本人はいませんでした」の世界に没入し、騒ぎ立てる。そういう報道を見聞きするたび、「日本人に犠牲者がいなけりゃ、それでいいのかよ」と思う。

けれど、自分は日本人だから、同じ日本人が助かっていたらいいなあ、となんとなく思ったりもする。さらに、ご遺族には申し訳ないが、同じ日本人が「事故現場で生きているのか死んでいるのか」という素朴な好奇心もある。だから、海外の事故や事件における日本人の安否確認は、テレビでいえば視聴率が取れる。

そんなわけで、いろいろ言いたいことはあるけれど、安否確認まではよしとしよう。筆者が気になるのは、そこから先の話である。それはズバリ、亡くなった犠牲者の英雄化だ。

例えば、国連が暫定的に統治していた1993年のカンボジアで、国連ボランティアのスタッフとして働いていた青年が射殺された。犯人はわからずじまいであり、現地にいた筆者は、この事件について、「よくわからない事件だなぁ。いずれにしても、日本人がこの国で順調に働くのは、大変なんだよね」などと思った程度であった。

ところが、青年の死後、マスコミを中心とする青年の英雄化がはじまった。「苦労の多い国で、ボランティアとしてがんばっていた」、「高い志を持って働いていたのに、亡くなって残念だ」、「すばらしい青年だった」……。たしかに、そうなのかもしれない。だが、現地には彼と同じような仕事をしながら生きている若者が、山ほどいたのである。

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