結論から言いますね。
ムリです。ビッグデータ企業による情報収集を防ぐことはできません。
いまや近所のスーパーに出かけるだけで、きわめて個人的なデータポイントの40や50ぐらいは知らぬ間に抜き取られている時代。Facebookアカウントを抹消するならもちろんどうぞ。でも、そんなことをしてもおそらくなにも変わらないと思います。そもそもFacebookに登録すらしていない人だって、情報収集と無関係ではありません。なにせ、Facebookはアカウントを持っていない人に対しても「シャドウプロフィール」なるものを作成できるぐらい、膨大な量の情報を収集しているそうですから。
この時点でわたしたちができることは、せいぜいビッグデータ企業に吸い上げられる情報量を少なくして、なるべくダメージコントロールするぐらいです。
専門家に喫緊の疑問・質問を投げかける米Gizmodoの「Giz Asks」シリーズ。今回は5人にビッグデータ企業とデータ収集会社について語ってもらいました。みなさん、心の準備はいいですか? 末恐ろしいですよ。
サイバー衛生にも限界があるScott Shackelford(米インディアナ大学商事法・経営倫理学准教授。サイバーセキュリティプログラム、およびサイバーセキュリティとインターネットガバナンスに関するOstrom Workshopのディレクターを兼任)
まず問題なのが、デフォルト設定のままではプライバシーが守られていないことです。ユーザーの一人ひとりが自主的にサイバー衛生*(cyber hygiene)を管理するためには、設定を変えるなりして常に所有権を掌握する努力をしなければなりません。*訳注:NTTアドバンステクノロジ株式会社の桑名栄二氏によれば、サイバー衛生とは「一般の衛生管理と同じように社内のIT環境や個人のインターネット利用環境を健全な状態に保つこと」。
基本的な予防措置としては、DuckDuckGoのようなネットの閲覧状況をトラッキングしない(というよりはする度合いが少ない)ブラウザを使ったり、プライバシーを守る拡張機能や仮想プライベートネットワーク(VPN)を導入するなどがあります。同じパスワードを使い回さないのも大事です。それと、FacebookやGoogleアカウントを使ってほかのサイトにログインする前に、その弊害についてよくよく考えてみましょう。「アカウントをリンクさせる」というオプションをクリックするたびに、むこうはあなたについてさらに多くのデータを集められるようになるわけですから。結局のところ、インターネットにどのような情報を発信しているのかを常に自覚していることが大切です。たとえLast Passのようなパスワードマネージャーを使っていたとしても、パスワードが暴かれて個人情報が流出してしまう可能性は常にあるからです。
一度GoogleやFacebookが持っているあなたの個人情報を洗いざらいダウンロードしてみるのもいいでしょう。やってみたことがなかったらぜひ試してみてください。きっと注意喚起になると思いますし、なぜ個人情報の管理が大切なのかがよくわかると思います。サイバー衛生をもっとしっかりやらなくてはいけないということは、すべての人に言えることです。企業側がもっと慎重に個人情報を扱わざるをえないような法的措置や市場原理が働かないかぎり、この問題は悪化の一途をたどるでしょう。
しかも、ビッグデータ企業はこの問題の一端でしかないんです。世の中には何百ものデータ収集会社(データ・アグリゲーター)が存在していて、GmailやFacebookアカウントの保有に関係なく、わたしたち全員の個人データを数千の単位で常に収集し続けています。逃れる術は残念ながらありません。このように不正かつ不公平な取引に従事しているデータ収集会社は公正取引委員会によって処罰されるべきですが、あまりに多すぎてとても追いつける状況ではありません。公正取引委員会ができることは限られていて、すでに限界に達しています。