SNS発の世界的ヒット商品「ドバイチョコレート」の勢いが、東南アジアの新興市場から日本国内の定番棚へと広がっている。一過性の熱狂を経て、独自の製法と食感を武器にプレミアムスイーツとして定着しつつある。
その流通の最前線を、フィリピンの店頭とパッケージ分析から読み解く。

その他の写真:「ドバイチョコレート」

 フィリピンの主要都市で中間層や富裕層、外国人駐在員に支持される米国系会員制スーパー「S&R」の菓子売場では、鮮やかなピスタチオグリーンの箱が山積みになっている。並ぶのは金と緑の華やかな包装に包まれた200グラム入り板チョコ「Bind DUBAI CITY MILK CHOCOLATE」。値札は349ペソ(約950~1000円)と、一般的な板チョコの3~7倍に達する高価格だが、次々と手に取られていく様子は「ご褒美消費」の象徴だ。

 パッケージには、1971年創業のトルコ老舗メーカー「Bind CHOCOLATE」のロゴが刻まれ、バーコードの国コード「868」もトルコ製を示す。ドバイ発のレシピをトルコの技術力で量産し、世界市場へ供給する構図が浮かぶ。表面にはブルジュ・ハリファを中心としたドバイのスカイラインが描かれ、裏面にはアラビア語を含む多言語表示とハラル認証マーク。中東からアジアまでを視野に入れたグローバル仕様だ。

 厚みのあるミルクチョコの外殻に包まれたピスタチオグリーンのフィリング。中東伝統菓子「クナフェ」に使われる極細生地「カダイフ」をバターで炒め、ピスタチオペーストと合わせたものだ。ひとかじりすれば「ザクザク」「バリバリ」と弾ける音が響き、濃厚なコクと塩味が交錯する。このASMR的食感こそが世界を魅了した核心である。


 日本では2024~2025年にかけて新大久保などでブームが過熱し、SNS投稿目的の若年層を中心に1本数千円で取引される事態となった。現在は熱狂期を終え、定着と進化の段階へ。大手コンビニや国内メーカーがカダイフ食感を再現した商品を投入し、甘さを抑えた日常スイーツとして定着。パフェやクレープ、ドーナツなどとのコラボも広がり、ジャンルとして確立しつつある。

 「映え」から「体験」へ。フィリピンでの圧倒的存在感と日本での定番化という二つの潮流は、世界の製菓業界に新たな刺激を与え続けている。
【編集:Eula】
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