フィリピンの地方都市や郊外では、自動車のタイヤ空気圧を維持する携帯型電動空気入れの重要性が急速に高まっている。日本の常識を超える悪路と劣悪なインフラを背景に、ドライバーの間では単なる便利グッズではなく「命綱」として必需品化。
過酷な交通事情の中で、ハイテク機器を駆使して自衛する実態を追った。

その他の写真:シャオミーが製造するリチウムイオン電池式コードレス電動空気入れだ。片手で持てるコンパクトサイズながら、目標空気圧を設定すれば自動停止。内蔵LEDライトは街灯のない暗闇での作業を支える優れもの。

 首都マニラの中心部を離れると道路環境は一変する。激しいスコールでアスファルトが浸食され、至る所に深い「ポットホール」が出現。未舗装の脇道には鋭利な石や釘が散乱し、踏めば空気が徐々に抜ける「スローパンクチャー」を招く。

 現地在住の日本人ドライバーは「日本の3倍近い速度で空気が抜ける感覚」と語る。連続する微振動でタイヤとホイールの接合部から漏れ、直射日光に熱せられた路面がゴム分子を透過する空気の速度を加速させる。

 深刻なのはインフラ事情だ。地方のガソリンスタンドでは空気入れが故障したまま放置される例が多い。簡易修理小屋はあるが、携帯電話の電波すら届かない山道や治安不安の残る夜間の田舎道で立ち往生すれば、強盗など犯罪の標的となり得る。
近年の新型車は燃費やデザインが向上する一方、空気圧センサー非搭載車種も多く、異変に気付いた時には手遅れとなるケースも少なくない。

 そこで注目されるのが、中国の電子機器大手シャオミーなどが製造するリチウムイオン電池式コードレス電動空気入れだ。片手で持てるコンパクトサイズながら、目標空気圧を設定すれば自動停止。内蔵LEDライトは街灯のない暗闇での作業を支える。

 悪路からホイールを守り、燃費と安全性を維持するため「35ポンド(psi)」(車種により異なる)の空気圧を保つことが推奨される。毎朝の点検と携帯型空気入れによる補充を習慣化するドライバーも増加。危険な路上でのタイヤ交換を避け、安全な場所まで自走する時間を稼ぐツールとして定着しつつある。

 日本のようなロードサービスが存在しないフィリピン地方では、トラブルを自力で解決する備えが不可欠だ。トランクの隅に小型ながら堅牢な空気入れを常備することが、絶望的な立ち往生を防ぎ、過酷な南国道路を生き抜く最大の防犯・リスクマネジメントとなっている。
【編集:Eula】
編集部おすすめ