2026年9月13日未明、東南アジア最大の海上交通国家インドネシアで、極めて深刻な海難事故が発生した。ジャワ海を航行中だった大型カーフェリー「Virgo Transport 8」が悪天候下で通信を絶ち、行方不明となった。
船には乗客・乗員合わせて243人が乗っており、船体が大きく傾斜した後、多数の乗客が荒れた海へ投げ出されたとみられる。

【その他の写真:Wikipediaから、「フェリーくるしま」】

インドネシア国家捜索救助庁(Basarnas)や海上警察、運輸省海運総局の現地機関であるバンジャルマシン港湾業務庁(KSOP)などが救助活動を続けている。現地メディアの報道によれば、これまでに100人以上が周辺を航行していた船舶により救助されたものの、1人の死亡が確認され、依然140人前後の行方が分かっていない。悪天候の影響で捜索は難航している。

■ 日本の名船「フェリーくるしま」だった船体
行方不明となった「Virgo Transport 8」は、かつて日本で「フェリーくるしま」として長年運航されていた船である。日本の船舶ファンや海事関係者の間では広く知られた名船で、今回の事故報道は多くの関係者に衝撃を与えた。

同船は1987年4月、愛媛県今治市の来島どっく大西工場(現・新来島ドック)で建造された。全長約119メートル、全幅約21メートルのバランスの取れた船体を持ち、瀬戸内海・関門海峡・九州方面を結ぶ航路で長年活躍。関西汽船、フェリーさんふらわあ、松山・小倉フェリーなど国内主要フェリー会社で運航され、ビジネス客から観光客、長距離トラックのドライバーまで幅広く支持された。

しかし、燃料価格の高騰や利用客の減少、船齢の進行などを背景に航路が廃止され、2025年7月1日に日本での運航を終了。その後、インドネシアの船会社「Virgo Karya Shipping」に売却され、同国の主要幹線航路へ投入された。

■ 事故発生までの経緯
「Virgo Transport 8」は243人と車両89台を載せ、9月12日に東ジャワ州スラバヤを出港。
南カリマンタン州バンジャルマシンへ向けて北上していた。ところが13日午前2時ごろ、マサレンボ諸島近海で天候が急変し、船体が大きく傾斜。直後に通信が途絶え、位置情報の送信も停止した。

Basarnasによると、船長は荒天で波高が最大3メートルに達し、船が「傾斜している」と報告した後に連絡が途絶えたという。周辺を航行していた複数の船舶が救助に加わり、これまでに103人が救助されたが、140人以上が依然行方不明となっている。捜索隊はヘリコプターや大型救助艇を投入し、広大な海域で捜索を続けている。

■ 安全管理体制への疑問
インドネシアは1万7千以上の島々から成る世界最大級の多島海国家で、フェリーは国民生活と物流を支える重要な交通手段だ。しかし、同国では安全基準の運用が十分でないとの指摘が多く、海難事故は毎年のように発生している。今回の事故でも、積載量の妥当性や老朽船の維持管理、安全管理体制などが調査対象となる見通しだ。

日本で長年安全に運航され、多くの人々に愛された「フェリーくるしま」が、異国の海で過酷な事故に巻き込まれたことに対し、日本の船舶ファンや関係者からは、乗客全員の無事を願う声が相次いでいる。
【編集:WR】
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