中東のエネルギー安全保障を揺るがす事態が、2026年9月中旬にかけて急速に深刻化している。ペルシャ湾沿岸では、石油関連インフラや商船を標的としたドローン(無人機)およびミサイルによる非対称攻撃が連続発生し、地域の緊張は過去数年で最も高い水準に達した。


【その他の写真:イメージ】

攻撃を主導しているのは、イエメンの反政府武装組織フーシ派や、イラク国内で活動するイラン支援の武装勢力など、いわゆる「同盟非国家主体」とされる勢力である。これらの組織は、中東各国の基幹エネルギーラインを狙い撃ちし、地域の物流と安全保障に深刻な打撃を与えている。

■ サウジの東西パイプラインが複数ドローン攻撃を受け稼働停止
サウジアラビア政府は、首都リヤドおよびメディナ州を横断する国家的基幹インフラ「東西パイプライン」のポンプステーションが、イラク領内から発射された複数のドローン攻撃を受けたと発表した。衛星画像には、メディナ南部のパイプライン沿いから黒煙が立ち上る様子が確認されている。

サウジ外務省は予防措置としてパイプラインの稼働を全面停止。イラク政府も攻撃を非難し、関係が疑われるマイサン県の軍司令官を解任したうえで、武装組織の関与を調査する「調査評議会」を設置した。

この東西パイプラインは、ホルムズ海峡が事実上閉塞状態にある中、1日あたり400万~500万バレル(世界供給の4~5%)を輸送する代替ルートとして機能していた。今回の停止は、サウジの原油輸出に直結する重大な支障となっている。

■ 紅海・ホルムズ海峡の二大チョークポイントが同時に危機
アラブ首長国連邦の国営通信WAMは、紅海沿岸の石油施設や海域で警戒レベルが引き上げられていると報じた。ホルムズ海峡の封鎖懸念が高まる中、中東諸国は陸路の代替ルートとして東西パイプラインを活用していたが、その代替ルートすら攻撃対象となったことで、地域のエネルギー輸送網は深刻な機能不全のリスクに直面している。

紅海側では、フーシ派がバブ・エル・マンデブ海峡周辺で支配力を強め、戦略拠点であるマユン島を掌握したとされる。これにより、世界の海上輸送ルートの要衝が複数同時に脅威に晒される異例の状況が続いている。


■ 米中央軍(CENTCOM)は警戒レベルを最高段階へ
米中央軍(CENTCOM)は、紅海およびペルシャ湾周辺での監視・迎撃態勢を最高レベルに引き上げた。イラン革命防衛隊(IRGC)に関連する拠点や船舶への対抗措置を進める一方、民間商船や沿岸インフラを狙う無人機・弾道ミサイルの迎撃任務を強化している。

米国防総省は、これらの攻撃を「世界の海上輸送ルートを意図的に混乱させる組織的テロ行為」と非難している。

■ イラン側は「抵抗の枢軸」による自衛行動と主張
イラン国営通信IRNAおよび国営放送IRIBは、米軍や対立勢力による圧力に対し、同盟勢力が自衛的措置を取っていると主張。周辺国の港湾に停泊するタンカーに退去勧告を出すなど、牽制を強めている。

■ ドローン戦争が中東の軍事常識を塗り替える
今回の一連の攻撃は、安価で大量投入可能な無人機が、広大な砂漠地帯に張り巡らされた防衛網の隙を突き、数百キロ離れた地点から高精度の打撃を可能にしている点で、従来の軍事バランスを大きく変える象徴的事例となった。

■ 世界経済への影響:日本企業も深刻な打撃
ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡という二大チョークポイントが同時に危機に陥ったことで、世界のサプライチェーンは大きな混乱に直面している。

主要航路の回避による運賃高騰

迂回ルート選択による輸送日数の大幅増

原油価格の急騰によるエネルギーコスト上昇

これらは日本の海運会社、製造業、エネルギー企業にも直接的な負担となり、世界経済全体の先行きに暗い影を落としている。
【編集:WR】
編集部おすすめ