【その他の写真:図表2】
【HSBC投信・経済レポート】
新型コロナウイルスの感染が拡大し、その社会および経済への影響が世界的に波及している。
政府は2020年3月にロックダウン(全土封鎖)に踏み切ったものの新型コロナウイルスの感染拡大を防げなかった。コロナ禍による経済への打撃は、感染が2019年の緩慢な成長から抜け出せない中で発生したこと、また山積みする構造問題が重なったことなどから、増幅された。しかしながら、極めて厳しい時期が約6ヶ月続いた後に経済活動は改善に転じ、その傾向は2020年10-12月期も継続している。
2021年の見通し: ワクチンへの期待、不均衡な回復
当社は、インド経済が2021年には、主としてベース効果によって、大きく回復すると予想している。ただし、ロックダウンの解除直後に見られた経済活動の急激な持ち直し、その後の経済の本格的な再開、ロックダウン中に生じた繰り延べ需要の顕在化を考慮すると、今後の連続的な成長モメンタムはより穏やかなものとなると見ている。2021年上半期については、ワクチン接種が始まるとしても当初は限定的な規模にとどまることや、感染の再拡大の恐れや感染への懸念の継続によって、成長軌道に時折乱れが生じることが考えられる。
個人消費は、緊急景気対策の縮小や新型コロナウイルスの様々なセクターへの影響はあっても、経済成長の主たるけん引役となる可能性が高い。その理由としては、雇用と家計収入の改善が見込まれること、消費者信頼感の向上、ロックダウン中に積み上がった貯蓄などが挙げられる。新型コロナワクチンの供給ペースが、インド経済、中でも対面サービスを基本とする旅行、観光、ホスピタリティなどの各セクターの回復速度の決め手となるだろう。景気回復は、ワクチンへの期待が、集団免疫の完全な形成を待たずに、消費者および企業の信頼度の改善や消費及び投資の積極化につながるかにかかっているとも言える。
インドは世界有数のワクチン生産国で、開発途上国向けワクチンも生産することになっている。
インド準備銀行(中央銀行)は最近、2020年度(2020年4月~2021年3月)の実質経済成長見通しを10月に発表した-9.5%から-7.5%に引き上げた。発表では、経済回復が不均衡に進んでいることが取り上げられた。新型コロナウイルスの感染が発生し、3月にロックダウンが導入されて以来、中央銀行は政策金利を合計で115ベーシスポイント(bp)引き下げた。中央銀行は、2020年12月の政策会合で、政策金利(レポレート)について、高水準で推移するインフレ圧力と景気回復の兆しを理由に、3会合連続で据え置きを決めた。
これまで見てきたように、効果的なワクチンが広範囲に提供される見通しを背景に、新型コロナウイルスの脅威が後退し、循環的な成長への期待が高まっているが、コロナ禍による経済的不均衡と需給ギャップという後遺症は長期化する可能性が高い。
【編集:LK】