ファストファッション「ZARA」の本拠地に切り込んだ「ユニクロ」。現地ファッション業界はこう見た!

ファストファッション「ZARA」の本拠地に切り込んだ「ユニクロ」。現地ファッション業界はこう見た!
ユニクロスペインのサイト
       

 ユニクロがスペインに出店するという噂が流れてから実に7年――。

 遂に9月20日、バルセロナの中心街のパセオ・デ・グラシア通りに1号店がオープンした。地下1階と地上3階の売り場面積1730平方mの店である。

 この通りはガウディーの建造物が二つあり、バルセロナで著名ブランドが出店する場所である。

 スペインではユニクロの創業者柳井正会長兼社長は「日本のアマンシオ・オルテガ」と称されている。アマンシオ・オルテガは1975年にスペイン北西部ガリシア地方で設立されたZARAの創業者だ。それだけに、ユニクロのスペイン進出は注目されていた。

 一方、ユニクロのスペインへの進出を虎視眈々と観ていたZARAはユニクロが開発したウルトラライト・ジャケットとコートのコピー版をユニクロのバルセロナ進出に合わせて市場に出した。

 ファスト・ファッション(Fast Fashon)の業界ではZARAの右に出る企業は世界に存在しない。最新の流行を素早く取り入れて、量産体制で他社よりもより安価に、しかもスピーディーに市場に提供するという能力ではZARAを凌ぐ企業は世界に存在しないのだ。しかも、ZARAは模写するデザインを決めてから市場に出すまでひと月でやってしまう企業だ。因みに、ZARAのウルトラライト・ジャケットは39.95ユーロ(5195円)、コートは49.95ユーロ(6495円)で販売している。

◆「ZARA」vs「ユニクロ」、その違い

 ユニクロのコレクションはシンプルであることをコンセプトに日常をより快適に過ごすために着易さなどを追及している。品質を高める為に原材料の選択を始め、何度洗濯しても傷まないと言ったことを目標にしている。

 一方のZARAはコレクションを創作し、それが早く消滅するというのを繰り替えしている。最新のファッションの流行を上手く模写してZARAのブランドでそれを絶え間なく市場に提供し続けるということがポリシーである。

 ZARAは一つの商品を誕生させるのに、デザインを起こす段階からそれが商品となって市場に出すまで僅かひと月でそれをやってしまう。多くの企業ではこの過程をこなすのに10か月を必要としている。

 著名デザイナーによる秋/冬、春/夏、リゾートの3度のファッションショーで紹介された新作をいち早く模写して手頃な価格で市場に提供するのがZARAなのだ。

 この3度のファッションショーで、仮に100の新作コレクションが発表されれば、そこから20のコレクションを模写して市場に提供できる能力をZARAは備えているという。H&Mも16のコレクションを模写できるまでになっているそうだ。(参照:「Vanity Fair」)

 ZARAはひと月に店の85%の商品を新しい商品と変えるだけの能力を備えている。このポテンシャルが、ZARAを含めたグループ企業が年間で1万8000着の新作を生むことを可能にしている。(参照:「El Mundo」)

 この様なZARAが得意とする能力から消費者はZARAの新作に常に注目せざるを得なくなっている。

 一方のユニクロは、このようなZARAのスタイルとは異なる。

 ZARAの商品は先述したように<ファッションに焦点を合わせているが、ユニクロは<基本服にデザインを少し加味しながら機能性とユニセックスに焦点を合わせている>と『marketingdirecto』デジタル情報紙は指摘している。(参照:「marketingdirecto」)

◆スペイン・ファッション業界の反応

 こうしたポリシーの差も踏まえた上で、スペインのファッション業界はどのように反応しているのだろうか?

 ファションビジネスのデジタル情報紙として評判の高い『modaes.es』が、スペインのファッション業界の人に「スペインでユニクロは何店構えることができるのか?」という質問をしている。

 同紙が業界の企業役員や専門家に尋ねたところ、<最低10店舗構えることが出来ればスペインへの進出はそれなりに評価される>としている。<10店舗を同時に開店できるだろうか?><しかし、最大15店舗となるとユニクロでは難しいだろう>という回答だ。

 ユニクロのコンセプトはスペインでは商業的にマッチしないとして<50店舗を構えるまでには至らない>と同紙は言及している。また、ユニクロが今回店舗を開設したパセオ・デ・グラシア通りにある<ZARAの店には年間で700万―1000万人の消費者の訪問があるが、ユニクロには400万―500万の訪問が見込まれる程度だ>と予測もしている。(参照:「modaes.es」)

 イタリアのBrandsdistributionの創業者のひとりカルロ・タフリは<「ユニクロがZARAのように大きく成長することは難しい。何故ならユニクロのビジネススタイルはZARAのそれとは違うからだ」>と述べ、<「ユニクロは寧ろ新しいBenettonだ」>と指摘している。(参照:「El Mundo」)

◆ユニクロのスペイン進出成功に必要なもの

 ユニクロの“シンプルで着易く機能性がある”というコンセプトだけではスペインを始めヨーロッパ市場での発展は大きくは望めないであろうというのがスペインファッション業界の概ねの見方である。

 つまり、成功するためには、より高いファッション性が必要なのである。

 ユニクロは、現在までにヨーロッパで英国、フランス、ドイツ、ベルギーの4か国36店舗を構えている。しかし、流行に非常に敏感に反応するスペインやイタリアでは着易さよりも着にくくても流行のファッションを追うという傾向にあるのが消費者なのである。しかも、価格もより安いほうに消費者は向かっている。

 アイルランド生まれのPRIMARKが、ユニクロと同様に基本服をベースにしているにも関わらずスペインでも急成長しているのは正に価格の安さに要因がある。ZARAよりも安いということで、ZARAは対PRIMARKのために更に価格帯を下げた別ブランドLEFTIESを設けたほどだ。

 このような観点からも、ユニクロは価格の安さよりも品質の高さを重視するままでは、ヨーロッパで急激に成長することは難しいと思われる。

 既にバルセロナでは2号店の場所は確保している。ショッピングセンターGlories de Barcelonaの中に出店が予定されているという。業界ではこの場所は一般の観光ルートと人通りの多さから外れており、この場所の選択が疑問視されているという。

 マドリードの1号店も、同じくショッピングセンターでEl Jardin de Serranoに2020年にオープンする予定だとしている。高級ショップが並ぶセラノ通りの近くで、場所としては適切だと思われる。

 ただ、こうした出店計画を見ても、ユニクロの決定はZARAなどヨーロッパ企業に比べ非常に遅い。慎重さとミスをしたくないということから決定が遅くなるのであろうが、2020年までマドリードでユニクロの店がないというのはユニクロのスペインでの伸展には遅すぎるという見方もある。

 日本を代表するブランドとなったユニクロ。スペインでの今後を見守っていきたい。

<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

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