アメリカで起きているセクハラ告発“パンデミック”が意味するもの

アメリカで起きているセクハラ告発“パンデミック”が意味するもの
wavebreakmedia / PIXTA(ピクスタ)

 今、米国でセクハラ告発スキャンダルが連鎖的に続発している。それはハリウッドを中心とした芸能界から政界、スポーツ界、マスコミ業界などあらゆる分野に広がり、まるで「セクハラ告発“パンデミック”」といった様相だ。

 ハリウッドでは、大物映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン氏が多くの女優たちからセクハラ被害の告発を受け、大きな騒動になった。イタリア出身女優のアーシア・アルジェントや英国出身の女優リセット・アンソニーは駆け出しの若い頃に彼にレイプされたと暴露したのをはじめ、20人以上の女優からレイプ被害や性的行為の強要を受けたことを赤裸々に暴露されている。

 俳優であり映画ディレクターとしても活躍しているベン・アフレックはかつてテレビ番組で共演していた女優ヒラリー・バートンからセクハラを受けていたと槍玉に挙げられ、米国の人気テレビ番組「スタートレック」のヒカル・スールー役で有名な日系二世俳優ジョージ・タケイは、知人男性から36年前に性的暴行を受けたと告発された。スポーツ界では、元女子サッカー米国代表で人気スター選手だったホープ・ソロが、2013年のFIFA授賞式で当時の国際サッカー連盟会長ゼップ・ブラッター氏にセクハラを受けたことを明かしている。

 政界では、父ブッシュことジョージ・H・W・ブッシュ元大統領は93歳の今になって少なくとも8人の女性から昔のセクハラ被害を告発され、元芸能人で現在民主党上院議員のアル・フランケン氏は、ラジオの女性司会者から10年以上前にキスを強要され性的いたずらをされたと暴露され、証拠写真も公開されたため謝罪に追い込まれた。元アラバマ州最高裁判事で共和党上院議員候補のロイ・ムーア氏は6人もの女性にセクハラ被害を暴露され、そのうちの1人の女性はメディアの集まるニューヨークで会見を開き、16歳のときに車の中で同氏に性的暴行を受けたことを告発している。

◆米国社会に深く根ざす「セクハラ問題」

 米国でこれだけセクハラ告発が頻発している背景には、セクハラ問題が社会全体に根深く蔓延っている実態がある。ワシントン・ポスト紙では、一般社会、特に職場でセクハラに苦しめられている読者の生の声を集め電子版に掲載しているが、その告白の数々はどれも深刻なものだ。(参照:「Washington Post」)

 ある企業のカスタマーサービスで働く女性は、職場の同僚たちが下品な雑談ばかりしているのが嫌だったが雰囲気に合わせなければと話を合わせていたところ、あるとき自分のデスクで仕事をしていると同僚男性に背後から羽交い絞めにされ、両胸をもまれた。会社を辞めたかったが、3人の子供を抱えたシングルマザーなので働かなければならず、我慢したという。

 病院の事務部門で働く女性は、院長にオフィスで体をつかまれ、両胸を股間に押し付けられ、額に唇をつけられた。それを人事に報告し助けを求めると、4週間後に院長は辞任に追い込まれ、ようやくセクハラから解放された。被害者は1人だけではなく、病院で働く多くの女性職員が同じ被害にあっていたことを後から知ったという。

 レストランでウエイトレスをしている女性は、最初に職場に入ったとき店長から「セクシーな服装をするように」と言われ、スカートをはいていくようにした。あるとき狭い店長室に呼ばれ中に入ると、棚を整頓してくれと言われ脚立に上ってその通りにしていると、店長が椅子に座ってスカートの中をのぞいていた。それに気づいてからズボンをはいて働きセクハラに対抗していたのだが、あるとき自分の勤務が終わり帰ろうとすると、店長が粘りつくような視線を向け唇を舐めながら「お前は最後まで残れ」と言ってきた。危険を察して店長を振り切って帰り、その職場には二度と戻らなかったという。

◆「セクハラに厳しい米社会」の実像

 米国といえばセクハラ行為に厳しい社会というイメージが強かったが、実態はそうではないようだ。米4大ネットワークテレビのNBCと大手新聞社ウォールストリート・ジャーナルが10月に共同で発表した調査結果によると、米国の被雇用者女性の48%は職場でセクハラを受けたことがあると回答し、米国人67%が職場でのセクハラは日常的にあると回答している。

 何がセクハラかという認識については、性別や個人によって異なっている。米ナショナル・セクシャルバイオレンス・リソースセンターの調査によると「挑発的または一方的な性的発言はセクハラだと感じる」女性は60%なのに対し男性は48%、「他人の秘めた行為を許可なく覗き見ることはセクハラだと感じる」女性は72%なのに対し男性は56%、「相手に性的関係を強要し同意させて行為に及ぶこと」は女性の79%がセクハラと認識するのに対し、男性は67%にとどまっている。(参照:「NSVRC」)

 現在の「セクハラ告発パンデミック」はセクハラに対する認識を再確認し、問題意識を持たなければならないという、米社会の危機感の現れなのではないか。ワシントン・ポスト紙も「今のこの状況は、セクハラ問題の分水嶺となるのではないか」と書いている。(参照:「Washington Post」)

<取材・文/水次祥子 Twitter ID:@mizutsugi
みずつぎしょうこ●ニューヨーク大学でジャーナリズムを学び、現在もニューヨークを拠点に取材執筆活動を行う。主な著書に『格下婚のススメ』(CCCメディアハウス)、『シンデレラは40歳。~アラフォー世代の結婚の選択~』(扶桑社文庫)、『野茂、イチローはメジャーで何を見たか』(アドレナライズ)など。(「水次祥子official site」)

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