年収1000万円から突如400万円に!? 石油価格下落のアラブ諸国が取る対策とは

年収1000万円から突如400万円に!? 石油価格下落のアラブ諸国が取る対策とは
アラブ首長国連邦の大型ショッピングモールには映画館が併設

 近年、産油諸国石油価格の下落と若年層の人口増加に伴う失業率の上昇を防ごうと多くの対策を取っています。それに伴い様々な分野で規制緩和が進み、5年前から定点観測している身からすると現地の様子が目まぐるしく変化していくことに大変驚いています。

 その代表例として12月11日の最新のニュースでは今まで禁止されていた映画館が来年の春頃についに解禁される、というニュースがありました。

 今までバーレーンやアラブ首長国連邦などに映画を観に行っていたサウジアラビア人がこれから国内の映画館を利用することができます。それと同時にサウジアラビアで映画会社が次々と設立されるようになるでしょう。

 他に大きく報道された有名なニュースで、女性の車の運転解禁があります。

 来年の6月から女性の車の運転が解禁される、との報道発表後、今まで女性の運転に反対していた人たちは鳴りを潜め、サウジアラビア国内ではすっかり女性の運転解禁を支持する世論が形成されてきました。

 それと同時に女性の社会進出や女性ドライバーが増えることに依拠した新車購入増による経済効果の話で盛り上がっており、サウジアラビアの女性が好きな車のランキングなどが発表されるようになりました。

 サウジアラビアの西側の大都市ジェッダにある名門のプリンセス・ヌーラ大学では女性に運転を教えるドライバースクールを設立する、という声明を出したり、同じく名門キング・アブドゥルアジーズ大学と交通警察の間で女性専用のドライバースクールの設立に合意が進んだり、と規制緩和に合わせた動きが社会全体で進んでいます。

 同時に、この女性ドライバー解禁のニュースの裏でガソリンの価格の値上がりと自動車に関する税金のニュースも同時に流れていました。

 海外のメディアでは、この動きに対して「経済的な要因が文化的要因を変化させた」という意味合いの文言が多く出ています。もちろん、そのような財政的な面や女性の社会進出に伴う労働力の増強という側面も今回の規制緩和の目的であることは否定できないと言えます。

◆中小企業への投資を進める産油国

 今まで中東の産油国諸国では埋蔵量の豊富な油田から原油や天然ガスを採掘して売る、その売上をインフラや国民の手厚い福利厚生に使う、という流れが主流でした。

 ですが、原油価格の下落や代替エネルギーの浸透などの影響で天然資源だけで国を維持することができなくなる、という未来を危惧するようになってきました。そこで今まで蓄えた資本を活用し、中小企業を育成していく、という形に変わりつつあります。2010年に「アラブ開発基金」が設立されその本部がクウェートに置かれました。これは産油国の国々が出資を行い、中小企業育成を行う横断的な基金でしたが、規模は1600億円程度でした。

 ですが、ここ数年の原油価格の下落に合わせて危機感が増したのか、産油国各国で続々と独自の中小企業育成プランが国家主導の元、行われるようになり投資額や計画の規模が数千億円~数兆円まで拡大するようになりました。

 例えば代表的な産油国、サウジアラビアではソフトバンクとの先端技術に対する投資ファンドの設立や紅海の巨大な観光地開発、北東部の55兆円規模の巨大な産業都市計画など目立つニュースがたくさんあります。

 近年のサウジアラビアが考えていることに中小企業の育成があります。

 サウジアラビアは国のGDP全体に占める中小企業の割合は20%程度しかありません。残りの80%は原油などの天然資源からの収入になります。埋蔵量の多い巨大油田を持っているとは言え、他の産油国と比較して5倍から10倍の人口を抱えるサウジアラビアでは原油価格の変動は国家の安定に関わる問題です。

 わかりやすく説明しますと、年収が今まで1200万円あり出費が年間1000万円だった家庭が、来年から突然年収400万円になるが出費はそのまま1000万円かかる、再来年の年収もわからないという状況ですと、長期計画を立てにくくなるということをおわかりいただけると思います。

 さらに産油国各国では手厚い福利厚生の影響から人口ピラミッドが健全な末広がりのピラミッド型を形成しているので今後続々と就労年齢に達する若者が増え続けることになります。

 ですが、今までのような原油や天然ガスの採掘と販売だけでは若年層の雇用を確保できず、じわじわと増えていく失業率増加にも歯止めをかけなければなりません。

◆HISが日本と産油国オマーンの経済フォーラムを企画支援!

 そのような流れに対して現在産油国は中小企業の育成を主目的とした外資向け工業団地や経済特区の計画を進めています。有名なところですと、ドバイのフリーゾーンがありますが、他の産油国の国々でも次々とこのようなフリーゾーン、外資が投資しやすい環境を整えています。

 そんな中で産油国の一つのオマーンが面白い試みを進めようとしています。来年2018年にオマーンと日本の国交樹立が45周年を迎えます。その記念行事として日本の中小企業を対象にした中小企業・起業家経済フォーラムが行われようとしています。

 オマーンは他の産油国と同じく主要産業は石油産業がほとんどで、農業、漁業が僅かながらあるという産業構造になります。

 その中でオアシスが点在して緑が多い労働人口に占める農業部門の比率はオマーンが他の産油国よりも高いと言えますが、自給率が100%を超える作物はナツメヤシとバナナだけで他の農業製品はほぼ輸入で賄っています。

 前述のように他の産業がほとんどありませんので日本の中小企業と提携して現地の中小企業を活性化させたい、という意図があると考えられます。

 このように今後、湾岸産油国諸国では日本と提携して様々な規制緩和に伴う様々なビジネスチャンスがありますが急速に進む規制緩和の中で何がどれだけ動くのか、見定める必要があります。

 個人的な意見ですが、今回のオマーンで行われる経済フォーラムの目玉はもちろん現地の経済特区の見学や現地企業による見本市などが挙げられますが、一番の目玉は通常はほとんど見る機会がない、「油田の視察」だと思います。

 油田は「軍事施設」に区分され、撮影も見学もほとんど行うことができません。これだけでも正直行く価値があると思います。筆者も行って油田を生で見るのを楽しみにしています。

【鷹鳥屋明】
たかとりや・あきら。大分県出身。大学で歴史学を学んだ後、重電メーカー、商社などを経て、日本と中東の合弁ベンチャー企業に勤務。個人的な活動として日本と中東各国で、アラブ民族衣装服を完璧に着て日々の仕事を行っていることから多くのメディアに取り上げられInstagramのフォロワーが約7万人、ツイッターのフォロワー3万人突破。中東と世界に日本文化、技術、文化を伝える語り手となるべく奮闘中。アラブ情勢について日本のテレビ番組でコメンテーターを務めることも。
ツイッター @Takatoriya
インスタグラム @shams_qamar_jp

あわせて読みたい

HARBOR BUSINESS Onlineの記事をもっと見る 2017年12月26日の国際総合記事

\ みんなに教えてあげよう! /

新着トピックス

国際総合ニュースアクセスランキング

国際総合ランキングをもっと見る

コメントランキング

コメントランキングをもっと見る

海外の人気のキーワード一覧

新着キーワード一覧

このカテゴリーについて

世界の経済情報、政治、外交、宗教や事件など世界中の情報をお届け中。