米ベンチャーの超小型ロケットが打ち上げに成功。宇宙ビジネスがさらに加速へ!

米ベンチャーの超小型ロケットが打ち上げに成功。宇宙ビジネスがさらに加速へ!
ロケット・ラボが打ち上げた「エレクトロン」ロケット Image Credit: Rocket Lab

 米国のベンチャー企業「ロケット・ラボ」は2018年1月21日、新開発の超小型ロケット「エレクトロン」の打ち上げに初めて成功。搭載していた3機の超小型衛星を宇宙へと送り届けた。

 質量が数百kg~数十kgほどの小型衛星を打ち上げることができる超小型ロケットは、現在世界中で開発が進められており、今回の成功によって同社が一歩抜きん出た形となった。しかし、小型衛星市場の拡大と共に、さらに多くのロケットが登場すると期待されている。

 なぜ、こうした超小型ロケットが求められているのか、なぜベンチャーが開発にいそしんでいるのか、そしてどのような可能性があるのかだろうか。

◆なぜ、超小型ロケットが必要なのか

 近年、その市場規模が拡大しつつある宇宙ビジネスの中で、エレクトロンのような超小型ロケット(英語ではマイクロ・ローンチャーなどと呼ばれる)は、かねてより待ち望まれていた存在だった。

 宇宙ビジネスが拡大しつつある理由のひとつに、衛星の小型化がある。電子部品の技術進歩と低コスト化により、高性能な小型衛星が、安価に製造できるようになった。その結果、かつては1トン以上ある衛星でしかできなかったことが、小型の衛星でもできるようになった。

 小型で安価ということは造りやすく、ベンチャーが新規参入しやすいということでもある。また、数十機から数千機単位という大量の衛星を打ち上げ、いままでにない、まったく新しいサービスを展開することもできる可能性もある。

 しかし、せっかく小型衛星を開発しても、それを宇宙へ打ち上げる手段が限られていた。

 これまでは、大型のロケットで大型の衛星を打ち上げる際に生じる余力を利用するのが主流だった。しかし、打ち上げの時期や、衛星が投入される軌道を大型衛星に合わせなくてはならず、自由な時期に、打ち上げたい軌道へ打ち上げることができない。

 そのため、小型衛星を打ち上げることに特化した、それでいて低コストな、超小型ロケットが待ち望まれていたのである。

◆ニュージーランド発のベンチャー「ロケット・ラボ」

 そんな超小型ロケットの打ち上げに初めて成功したのが、米国に本拠地を置く「ロケット・ラボ」という会社である。同社は2006年に設立され、いくつかの有力なベンチャー・キャピタルからの出資を受けるなどし、現在では評価額10億ドルを超える、いわゆるユニコーン企業として知られる。

 創設者はニュージーランド出身で、ロケットの発射場などもニュージーランドにある。米国に本拠地を置いているのは、民間企業が宇宙開発をやる際の法律面がしっかり整っていて活動しやすいためで、日本など他の宇宙ベンチャーでも、米国などに本社や支社を置いているところは多い。

 今回打ち上げに成功した「エレクトロン」というロケットは、全長17m、直径1.2mと、他の宇宙ロケットに比べると段違いに小さい。高度500kmの太陽同期軌道(地球観測衛星などがよく打ち上げられる軌道)に、最大225kgの打ち上げ能力をもち、まさに100kgくらいの小型衛星から、数kgくらいの超小型衛星を打ち上げるのに特化している。

 また、いままでにない仕組みで動くロケットエンジンを採用したり、その製造に3Dプリンターを活用したり、機体には軽くて丈夫な炭素繊維複合材料を使うなど、さまざまな先進的な技術をふんだんに取り入れている。最新の技術、素材を使い、安くて性能のいいロケットを開発するという方針が貫かれている。

 2017年5月には1号機の打ち上げが行われるも、失敗。ただ、その原因は簡単に修正可能なもので、またその部分さえ動いていたらなら打ち上げが成功していた可能性が高いとされたことから、今回の2号機の打ち上げに注目が集まっていた。

 そしてその言葉どおり、2機目の打ち上げにして、完璧な成功を収めたのである。

◆順調なスタートを切ったロケット・ラボ

 今回の打ち上げが成功したことで、次の3号機からは、いよいよ商業的に打ち上げサービスを始める段階に入る。つまり衛星会社などからの発注を受け、衛星を宇宙に送り届けることで対価をもらう、宇宙の輸送業のようなサービスである。

 エレクトロンの打ち上げ価格は明らかにされていないが、おおよそ600万ドル以下とされる。これは十分に妥当な数字であるとみなされているようで、すでにいくつもの企業から受注を取り付けている。今回の打ち上げ成功を受けて、さらに契約数は増えるだろう。

 また、エレクトロンは、ニュージーランドだけでなく米国などからも打ち上げができ、年間100機を超える打ち上げをこなすことができるという特徴もある。これまで、これほど矢継ぎ早に打ち上げができるロケットはなかった。これにより顧客の希望どおりのスケジュールで打ち上げられる柔軟性が生まれるばかりか、規模の経済によって価格も安くなっていくだろう。

 もちろん、ロケットには失敗がつきものであるなど、宇宙ベンチャーは大きなリスクと隣り合わせであることを考えると、ロケット・ラボがビジネスとして成功できるかどうかまだわからない。しかし、ひとまずは良いスタートを切ったといえよう。

◆世界中で進む超小型ロケット開発、小型衛星ビジネスはさらに拡大へ

 小型衛星の市場から待ち望まれていた超小型ロケットがいよいよ誕生したことで、今後その市場のさらなる拡大が予想される。

 たとえば、数十機の小型・超小型衛星を使って地球を高頻度に、絶え間なく観測しようという企業はいくつか立ち上がっている。質の高い写真を撮影するためには、ある決まった軌道に正確に入れなければならない。そのため、小型衛星を1機単位で打ち上げることに特化したエレクトロンのような超小型ロケットは、まさにうってつけの存在である。

 また、数千機の衛星を打ち上げて全世界にインターネットをつなげようという企業もある。この場合、まずは大型のロケットで一度に数十機の衛星を打ち上げ、ばらまくように配備することになるが、たとえば衛星が故障した場合など、代替機を1機だけ打ち上げる必要が生じたときなどにも、超小型ロケットは真価を発揮する。

 そしてロケット・ラボが一歩抜きん出た形になったといえ、超小型ロケットはいまも世界中で開発が続けられており、今年以降、打ち上げを予定している企業はいくつもある。日本でも堀江貴文氏らが立ち上げたインターステラテクノロジズ、キヤノン電子などが設立した新世代小型ロケット開発企画などが開発を進めている。

 このうち、どれくらいの企業が生き残れるかはわからない。しかし、小型衛星の市場規模のは、とても一社だけでまかなえるほどには留まらないだろう。また、ロケットの打ち上げが失敗したり、どこかが事業から撤退したりといったリスクや、企業間で競争を起こす必要があることを考えれば、あえて複数の企業と契約するなど、市場が複数の企業を残すように動くことにもなろう。

 期待と需要が高まる小型衛星の市場と、それに応えるように続々と生まれつつある超小型ロケット。宇宙ビジネスは新たな、そしていよいよ本格的に始まる時代を迎えつつある。



<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
Webサイト: http://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info(https://twitter.com/Kosmograd_Info

・Rocket Lab successfully reaches orbit and deploys payloads | Rocket Lab(https://www.rocketlabusa.com/news/updates/rocket-lab-successfully-reaches-orbit-and-deploys-payloads-january-21-2018/
・Rocket Lab | Electron – satellite launch vehicle | Rocket Lab(https://www.rocketlabusa.com/electron/
・Rocket Lab | About Us | Rocket Lab(https://www.rocketlabusa.com/about-us/
・Rocket Lab poised to provide dedicated launcher for CubeSat science | Science | AAAS(http://www.sciencemag.org/news/2017/12/rocket-lab-poised-provide-dedicated-launcher-cubesat-science
・Rocket Lab delivers nanosatellites to orbit on first successful test launch – Spaceflight Now(https://spaceflightnow.com/2018/01/21/rocket-lab-delivers-nanosatellites-to-orbit-on-first-successful-test-launch/

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