いまや、国会議員たちは党幹部に媚を売り、それによって当選し、ポストを得ることが政治だと思い始めているのです。政治家は選挙とポストのために、勇気と正義と倫理観を失ってはいけない。政治家たるもの、志、信念、矜持を持つべきです。官僚たちは、公務員法改正による内閣人事局によって人事権を官邸に握られた結果、官邸にものが言えなくなってしまいました。
しかし、堕落したのは政治家や役人だけではありません。国民全体が道義を失った背景には、戦後教育の失敗だと思います。「公の精神」を取り戻すために、教育を再建する必要もあると思います。
──マスコミも権力に対するチェック機能を果たしていません。
村上:マスコミは、日馬富士や和歌山のドンファン等、さほど重要でないことを繰り返し報道して、重要なことを伝えていません。マスコミが萎縮したのは、安倍政権による焚書坑儒の結果です。かつて、自民党政権はマスコミに批判されても、マスコミを力で押さえつけるようなことはしませんでした。ところが、安倍さんは特定秘密保護法成立を強行し、高市早苗総務相は、政治的公平性を欠く放送を繰り返した場合、電波停止を命じる可能性について言及しました。
何より、新聞社トップの働きかけによって、軽減税率の中に、食品とともに新聞を盛り込んだことは、社会の木鐸の放棄につながったのではないでしょうか。44年間も続いてきた政治番組『時事放談』も9月末で終了してしまいます。権力を批判できる番組がなくなりつつあるのです。