対米交渉で農業を犠牲にして自動車を優先する安倍三選内閣。「国民騙し」のTAGを許すな

対米交渉で農業を犠牲にして自動車を優先する安倍三選内閣。「国民騙し」のTAGを許すな
9月26日の日米首脳会談。photo by The White House (Public Domain)

 9月26日、三選を終えた安倍首相が日米首脳会談で決めた「TAG」。あたかも「FTA」とは別物かのように説明されているこのTAGについて、日本金融財政研究所所長の菊池英博氏は「国民だまし」と鋭く批判する。月刊誌『月刊日本』11月号に掲載された菊池氏の論考を紹介したい。

◆言葉だけで変えて国民を欺く「TAG」

 安倍三選が決まってから最初の仕事が国民だましの日米物品貿易協定(TAG=Trade Agreement on Goods、モノの貿易協定)である。

 対日貿易赤字の削減を求める米国のトランプ大統領と安倍首相は、9月26日に米ニューヨークで首脳会談を開催し、農産物を含むすべての通商取引について二国間交渉に入ることで合意した。

 交渉前の段階までは、日本政府は2国間取引には反対で、多国間でルールを取り決める多国間貿易協定(環太平洋パートナーシップ協定)を進めており、米国が離脱した後も中国包囲網という政治的狙いをもってTPPを進め、TPP11を締結している。

 しかし、TPP離脱を決めたトランプは多国間の協定を拒否し、米国と相手国との2国間取引を主張し、すでにNAFTA(米国・カナダ・メキシコ3国自由貿易協定)では、米国とメキシコ、米国とカナダが2国間で協議して改訂合意に達している。

 米国の強い姿勢に同調せざるを得なくなった日本は、新関税交渉をTAGと称してFTA(Free Trade Agreement)ではないと国民に説明している。しかし2国間の貿易協定では、まずモノの取引が骨格を占めて双方の関税引き下げを決めることから始めるので、TAGはFTAそのものであり、米韓FTAなどはモノの取引に加えて投資・サービス関連のルール等を加えて条約になっている。

 「二国間取引に合意した」ということは、「FTAを締結することに合意した」ということである。これを「FTAではない、TAGだ」と国民に説明しているのは、まさに「国民だまし」である。米国のペンス副大統領は10月4日の演説で「日本と歴史的なFTAに関する交渉をまもなく始める」と述べ、安倍首相の国民だましを裏付けている。

 これ以上に大きな問題は、対米交渉にあたって安倍政権が「日本の農業を犠牲にして米国に差し出し、対米貿易黒字の主因である自動車産業を守ろうとしている」ことだ。

◆農業を人身御供で米国に差し出す

 日本の対米貿易収支黒字額は2017年で7兆円であり、このうち自動車輸出額は4.6兆円であって、黒字額の66%を占め、これが貿易赤字の主因である。安倍内閣になってからの5年間(2013─17年)で、円の対ドル相場は約39%の円安(円の切下げ)であって、日本の自動車業界は大幅な利益を享受し、とくに対米輸出はこの5年間で53%も増えている(2012年3兆円から17年は4.6兆円に増加)。

 この異常な増加に対して米国は、「日本の自動車輸入に25%の関税をかける」と発言し、さらに米国は「日本は米国の農産物輸入関税を引き下げろ」と主張している。

 これに対して日本政府は、「農産物に対する関税はTPPなどで約束した水準まで下げるから、自動車への関税は止めてほしい」と嘆願した。ところが10月4日になって米国のバーデユー米農務長官は、「日本との通商交渉で、日本と欧州連合(EU)が署名した経済連携協定(EPA)以上の農産物関税引き下げを求める」と演説し、さらに「われわれは日本を守っている、(貿易で)他国にできることをなぜ日本は米国にできないのか」と反論している。

 9月30日にNAFTAの改訂合意内容が発表された。これによると、メキシコとカナダが関税ゼロで米国に輸出できる自動車は、「域内での部品調達比率の引き上げ(62.5%から75%へ)と時給16ドル以上の地域で生産した割合が40%以上」で生産されたうえで年260万台に制限され、同部品にも輸出金額に制限が付けられた。

 農産物ではカナダが「TPPで米国に約束した輸入割当枠を復活する」形で設けたにとどまった。TPP11とEPAで署名した農産物関税引き下げが実現すれば、日本はコメや酪農等で甚大な影響を受けて主要国で最も低い食料自給率(カロリーベースで38%)がさらに低下することが明確になっているのに、対米交渉で、TPP11とEPA並みの関税引下げを差し出してまで、円安で多額の利益を得た自動車を守らなければならないのか。

 NAFTAと同様に対米黒字の主因である自動車だけで対米黒字を調整すべきではないか大きな疑問だ。

◆食料問題は日本の「安全保障」の問題

 食料は天変地異や国際的な紛争で一挙になくなってしまう。とくに食料自給率の低い日本のリスクは大きい。大儲けした自動車優遇でよいのか、食料安保を優先すべきではないか。

 国民が選挙で判断すべきである。

<文/菊池英博>
エコノミスト。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て1995年文京女子大学教授に。現在は日本金融財政研究所所長

提供元/月刊日本編集部
げっかんにっぽん●「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

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「対米交渉で農業を犠牲にして自動車を優先する安倍三選内閣。「国民騙し」のTAGを許すな」の みんなの反応 46
  • 匿名さん 通報

    「外交の安倍」というフェイクな印象操作に騙されてはいけない。自動車も農業も非常に危ない

    25
  • 匿名さん 通報

    そもそも日本の自動車が 電気自動車で中国に追い抜かれ 世界の孤児となりつつあるのに 日本のものつくりのスキルが失われていく その失速を加速させる話では?

    24
  • 匿名さん 通報

    食糧安全保障を考えれば、農畜産物の自給率が一定以上なくてはならないのは明白(兵糧攻めされたらイチコロ)。EUも多くの第一次産業産品の関税を認めている。

    23
  • 匿名さん 通報

    FTAを「TAG」と名付けて日本国民をだます安倍一味。こんな連中がTPPも推進してきた。国民を騙して締結する協定が国民の利益になるはずがない。後ろ暗いから騙すのだ。脱退あるのみ。

    21
  • 匿名さん 通報

    与党公明党は徹底的に隠ぺいするゴミメディアたち

    11
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