「もったいない」は逆効果? 省エネ家電への買い替えがもたらす効果

「もったいない」は逆効果? 省エネ家電への買い替えがもたらす効果

◆古い家電は、適切に省エネ型に買い替えたほうがいい

 古くなった電化製品を長く使用し続けながら、「うちは省エネ」などと思っている人がいたら、大きな勘違いをしている。

 日本では「もったいない」という文化があり、古いものを大事にするのは大切なことなのだが、何にでも当てはまるわけではない。

 特に、精密機械が多く使われる電化製品には寿命があり、無理に使い続けることで、かえってエネルギーを浪費してしまう。環境意識の高い人が、知らないうちに環境負荷をかけてしまっているとしたら残念なことだろう。

「ガマンしない省エネ」を実現する近道は、古い家電を適切に省エネ型に買い替えることだ。

 家電の消費電力では、国や自治体が行うほとんどの調査で、照明、冷蔵庫、エアコン、テレビ、そして温水洗浄便座の5つが上位を占める。この5つを合計すると、家庭の消費電力の約6割以上に達している。

 それだけに、この5つの家電を省エネ機器に交換したり、使い方を工夫したりすることで、大幅な光熱費削減が可能になる。

◆もっとも省エネ効果が高いのは冷蔵庫

 買い替えによる省エネ効果が最も期待できるのは、24時間稼働し続ける冷蔵庫だ。

 冷蔵庫の寿命は、製品の性能や使い方によっても異なるが、ほとんどのメーカーでは10年から15年の間としている。

 特に、この15年間の冷蔵庫の省エネ技術の進化は著しい。断熱材や効率よく冷やす機器の改良により、例えば2007年の冷蔵庫と8年後の2015年の冷蔵庫とでは、CO2排出量が56%削減され、年間の消費電力も半分以下に抑えられる。

 当然電気代も安くなり、400リットルのサイズでは年間8500円削減できると試算されている(資源エネルギー庁)。光熱費の差だけで、10年ちょっとで新製品の購入費がまかなえる計算だ。

「壊れていないものを捨てるのはもったいない」と考える人もいるだろう。しかし、寿命を超えて働かせ続けると機器の効率は著しく悪化し、エネルギーが無駄になる。

 一般的に電化製品はそういうものだと割り切って、寿命が来たら省エネ製品への買い換えを検討したい。

◆ライフサイクルコストも合わせて考える

 もちろん、何でもすぐに買い換えればよいわけではない。光熱費などランニングコストの部分だけでなく、製造や廃棄にかかるエネルギーも含めて考えなければ、社会にゴミを増やす結果になる。流行に合わせて、購入して5年しか経っていないテレビを大型の高精度の製品に買い替えるなどというのは、エネルギー、コスト、環境のどの角度から見ても愚かな選択だ。

 製品が生まれてから寿命を迎え、廃棄されるまでにかかるトータルのエネルギーコストを、「ライフサイクルコスト(LCC)」と言う。例えば、ノートパソコンは製造時のエネルギーがほとんどで、使用時のエネルギー消費が少ないため、頻繁に買い換えると社会全体のエネルギーコストが増えてしまう。そのため、限界ギリギリまで活用したほうが社会的にはエコになる。

 冷蔵庫はどうか。冷蔵庫はライフサイクル全体の中で、使用時に8割以上のCO2が排出される。使い方を工夫するとしても、10年から15年という寿命を過ぎて働かせてしまうと、使用時のエネルギーが必要以上に増加してしまうことになる。LCCの視点から考えても、冷蔵庫に関しては適切なタイミングで切り替えたほうが良さそうだ。

 また廃棄というと、埋め立てたり焼却されたりするイメージを持つ人がいるが、家電リサイクル法により収集・分解されてリサイクルされている。冷蔵庫の部品はほとんど鉄とプラスチックなので、リサイクルの難易度は高くはない。

 ちなみに冷蔵庫は、サイズが大きいものほど省エネ性能が高い。テレビやエアコンなど他の家電は、基本的にはサイズに応じて消費電力が大きくなるので「なぜ冷蔵庫だけ?」という疑問に思うかもしれない。冷蔵庫は、他の家電とは電子機器としての構造が異なっているため、サイズの大小は省エネ性能に関係がない。クーラーボックスと同じで、食品を入れる箱が大きいか小さいかという違いだと考えれば良い。

 重要なのは、効率よく冷やすためのコンプレッサーと、冷やした空気を外に逃さないための断熱材の性能だ。大きなサイズの冷蔵庫はそこに資金が投入されるため、初期費用は高くなるが、省エネ性能も高くなる。逆に小さな冷蔵庫は、メーカーとしてはコストをかけるメリットが少なく、やや性能が落ちる傾向にある。とはいえ、省エネ性能だけを重視して無駄に大きなサイズを購入する必要はない。生活に合わせ適切なサイズを選びたい。

◆照明やエアコンの切り替えも有効

 照明は、ひとつひとつの消費電力は小さいが、家中の照明をすべて合わせると、冷蔵庫以上の電気を消費している。LED電球は省エネ効果が抜群で、価格も大幅に下がっている。現在も白熱電球を使用しているようなら、すぐにでも換えたいところだ。

 白熱電球は、電気エネルギーの9割を明かりとしてではなく、熱にして捨ててしまっている。もったいないだけでなく、夏などは空調の効きの悪化にも影響するので積極的に見直したい。トイレや物置、玄関など、長時間使用しない場所には、人感センサー付きのLEDを使用すれば、消し忘れがなくなり省エネになる。

 エアコンは通常「畳数」で選ばれているが、冷暖房したい部屋の大きさだけでなく、家の断熱性能などによっても適切な出力は変わってくる。工務店や家電量販店では、「冷えない」「暖まらない」というクレームにならないよう、スタッフが実際の畳数よりも大きめな出力を薦めがちだ。しかし、オーバースペックの設備を設置すると、初期投資だけでなくランニングコストも余分にかかるので、本当にそのサイズが必要なのか、自室の断熱性能などと合わせて選びたい。

 あまり知られていないが、消費電力の5位は暖房便座だ。他の家電に比べてほんの僅かな時間しか使わないだけに、つけっぱなしにするのはあまりに非効率と言える。これは買い替えというより、使い方の工夫で省エネしたい。暖かい季節には電源を切り、使ったとしても設定温度を控えめにしたい。根本的な問題はトイレが寒いこと。おしりだけ温めるのではなく、トイレ全体の気温が下がらないよう、内窓設置などトイレの断熱を検討するのが合理的だ。

 今回紹介した照明、冷蔵庫、テレビ、エアコンなどは、年間の消費電力が大きいだけに、「壊れるまで使い続ける」という発想は切り替えたい。電気代だけでなく、CO2排出量やライフサイクルコストの観点から見ても、ある程度の年数で切り替え、リサイクルに回していくことが望ましい。環境省が運営する省エネ製品買替えナビゲーション「しんきゅうさん」では、省エネ製品に買い替えるとどれくらい電気代やが減らせるかというシミュレーショができる。家庭の機種を入力して数値を確認したら、交換のタイミングを検討してほしい。

◆ガマンしない省エネ 第7回

<文/高橋真樹>
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。環境・エネルギー問題など持続可能性をテーマに、国内外を精力的に取材。2017年より取材の過程で出会ったエコハウスに暮らし始める。自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画『おだやかな革命』(渡辺智史監督・2018年公開)ではアドバイザーを務める。著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)『ぼくの村は壁で囲まれた−パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)ほか多数。

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2018年10月23日の経済記事

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