
白塗りメイクで反キリスト教的な歌詞をがなり立てる、特異な音楽性が世界中のコアな音楽ファンを惹きつけてやまないブラックメタル。一般の音楽ファンにはまるで馴染みのないジャンルだが、そのなかでも東欧各国のものに限るとなると、さらにリスナーの数は限られるだろう。
◆未承認国家にも存在するブラックメタル一般人にとっては単なる騒音にしか聴こえないであろうブラックメタル。一見しただけではおどろおどろしい雰囲気しか目に入らないし、一聴しただけではうるさすぎていったい何を歌っているのかわからないという人も多いはずだ。
しかし、読者の皆さんには、ぜひブラックメタルは単なる“ゲテモノ”ではなく、歴史や宗教、政治に関連した深いメッセージが込められているということを知ってほしい。
そのような思いが嵩じて自ら東欧・ポーランドに移住までしてしまったのが、『東欧ブラックメタルガイドブック2 ウクライナ・ベラルーシ・バルト・バルカンの暗黒音楽』(パブリブ)の著者である岡田早由氏だ。まずはブラックメタルとはいったいどのような音楽なのか、解説していただいた。
「ブラックメタルは、ヘヴィメタル音楽のサブジャンルで、基本的には『コープスペイント』と呼ばれる死体をイメージした白塗りメイクを施し、悪魔崇拝的な歌詞を金切り声で歌います。しかし、なかにはメイクをしないバンドや、悪魔崇拝ではなく、自然崇拝や土着宗教、愛国心、絶望、死などについて歌うバンドもいます」