
日本は民主主義であったし、今も民主主義である。筆者は、そう考えている。
しかし、近年になって、公安警察を含む警察組織や、内閣情報調査室といった情報機関が「党派政治化」しているとすれば、その危険性を指摘しないわけにはいかない。新聞報道や、警察ジャーナリストの著作(※1)を読む限り、警察と内閣情報調査室は、国家の安寧に貢献するという本来の役割を大きく踏み越えて、政治に直接的に関与するようになってきていると思われる。特に、いわゆる「官邸警察派」の影響力の増大と、党派政治へののめり込みがあるとすれば、それは極めて危険である。なお本論考は筆者個人の見解であり、所属する組織の見解ではないことをあらかじめ断っておく。
(※1)時任兼作『特権キャリア警察官ー日本を支配する600人の野望』(講談社、2018年)、今井良『内閣情報調査室-公安警察、公安調査庁との三つ巴の闘い』(幻冬舎、2019年)など。
もちろん、筆者のこの判断は、一部の新聞報道や、情報の出どころが不明な雑誌記事に基づくものである。特に、匿名の警察官僚を名乗る人々の発言とされるものを、そのまま鵜呑みにするわけにはいかない。常識的に考えて、その発言が全くの虚偽でないにしても、匿名で組織の内情をジャーナリストに話す者には、彼ら独自の思惑があると考えられるからである。確固たる証拠なしに、匿名の警察官僚によるとされる発言をそのまま信じるべきではないかもしれない。