―― 地球温暖化を防止するためには、二酸化炭素を排出しないグリーンエネルギーを推進する必要があります。しかし、たとえば太陽光パネルを設置するために山林を切り開くといったことが行われる場合もあります。また、ドイツは福島原発事故をきっかけに脱原発へ舵を切りましたが、ここにきて二酸化炭素を出さない原発が再び注目されるようになっています。これでは本末転倒です。
斎藤:グリーンエネルギーの全てが全て良いわけではありません。太陽光パネルを作るためには非常に多くの資源が必要ですし、リチウムイオン蓄電池の原料であるリチウムやコバルトはチリやコンゴなどから輸入しており、その採掘が環境を破壊し、搾取の温床となっています。
アメリカのジャーナリスト、トーマス・フリードマンは「グリーン革命」を掲げ、脱炭素社会へ移行するために必要な公共投資や、そこで生じる新たな雇用によって経済成長が可能だと述べています。しかし、経済規模が大きくなれば、二酸化炭素の排出量を削減することがさらに困難になります。結局のところ、グリーンエネルギーに転換することで、地球環境を維持しつつ、さらに豊かで快適な生活を送ろうという発想自体が間違いなのではないでしょうか。
私は脱成長を実現し、持続可能な社会へ移行しなければならないと考えています。脱成長という言葉が反感を呼ぶのであれば、自然の限界や地球の限界に重きを置いた生産に転換していくと言い換えてもいいでしょう。有限な地球で、無限の経済成長を求めることは、長期的には不合理です。