現地流アレンジなど不要! タイ人CEOが語る、タイ人による日本ブームの傾向

現地流アレンジなど不要! タイ人CEOが語る、タイ人による日本ブームの傾向
濃厚つけ麺は中毒性があるほどのおいしさ。余ったスープでおじやなどもでき、男性客には特に好評だ

◆セオリーとは逆に郊外に拡大する急成長チェーン

 タイには和食店が約3600店もあると言われている。ほとんどの店は客の半数以上がタイ人だということ。今やタイの和食店は、着実に地域に根づいており、6万5000万人いる在留邦人だけに支えられているわけではないのである。

 中でも、特に人気なのは日本式のラーメン店だ。タイにも米粉でできたクイッティアオなどといった麺料理があり、タイ人自身も麺類が好きなのでラーメンはわかりやすいのかもしれない。

 ただ、バンコクの日本式ラーメンは味は日本並みにおいしいけれども、近年は値段が高くなっているのがネックだ。それまでタイにあった日本のラーメンは100バーツ(約330円)台と安かった。今食べると味こそひどいが、限られた店しかなかったのでそれでも繁盛していたのだ。現在そういった古い店はほとんどが姿を消し、残っているのは数店しかない。代わりに進出してきた日本のラーメンは300バーツ(約1000円)前後と、日本よりも高いほど。これは、日本のラーメン店によるタイ進出ブームが始まる直前に、バンコクの一等地に建つ高級デパートにタイ1号店を出したある店がテナント料などを考慮してそのレベルで設定し、後続がその料金に追随したことがきっかけだとされている。

 これは逆に在タイ日本人にはモヤモヤした気分が残る点だ。なにしろ、日本の料金を知っているわけだから。もちろん、不満はあるものの、海外でこのレベルの味を楽しめるのだから仕方がないという諦めを抱いたまま食べてしまうのだが……。

 そんな中、在タイ日本人の特に20代から40代の男性に好評を博しているラーメンチェーンがある。

 それは「フジヤマ55」という店だ。名古屋に本拠地を置くこのラーメン店、味もさることながらランチタイムに余ったスープで作るおじやセットが無料でつく点で、料金的にお得感があるため、若い在タイ邦人に人気になっているのだ。

 そして、この店、他の日系ラーメンチェーンとちょっと違ったところがある。

 同店は、2012年8月の初進出から約3年半が経った現在で7店舗にもなるのだが、最も遠いところではタイ北部のチェンマイで、東北地方のコンケーン県にも進出を果たしている。この進出の展開が通常のチェーン店と少し違うのだ。というのも、日本から進出してきた店は、2号店3号店と増やしていくのは同じでも、できる限り日本人もしくはタイ人富裕層が多い地域を狙うのがこれまでのセオリーであった。しかし、「フジヤマ55」はどんどんバンコクの外へと向かっているのだ。

 なぜセオリーとは逆を行くのか? 「フジヤマ55」をタイで運営するタイ企業「メグミ・グループ」のCEO、ウィチアン氏に話を聞いてみた。

◆「本物」を食べたいタイ人が増えている

 タイの「フジヤマ55」をFC展開する「メグミ・グループ」は、元はアパレル関係であった。ここで成功をおさめたのち、飲食にも進出し、「フジヤマ55」のほかには居酒屋も経営している。同社のCEOであるウィチアン氏は、今年40歳の実業家。日本在住経験がないにも関わらず、日本語が堪能な人物だ。日本旅行の際「フジヤマ55」の味に出会い、タイで出したいと考えたのがきっかけだという。

「今のタイは日本旅行ブームです。日本で食べた本物の味をまた食べたいというタイ人が増えているので、日本人だけのエリアで出す必要はありません」

 日本は2013年7月からタイ人の15日を超えない日本滞在に対して短期査証の免除を実施している。その影響もあって2012年は28万人程度だったタイ人の日本入国者数が2013年は約48万人、2014年には68万人を突破している。この日本ブームは富裕層だけではなく、中流層にも浸透しているのだ。

「給料が2万バーツ(約6.6万円)程度の会社員もがんばってお金を貯めて日本旅行に出かけています。当然、またすぐに行くことはできないので、タイ国内で日本の味を楽しみたいという声が高まっている。ですから、そういった層が暮らす郊外でも集客力になんら問題はないのです」

 ウィチアン氏は逆にかつてのモノマネのような和食店は今は通用しないという。よくタイに進出するラーメン店はタイ人顧客に合わせてなのか、それともタイ独自開発のつもりなのか、バカのひとつ覚えのようにトムヤム味のラーメンを出す。トムヤムクンといった、タイ料理を代表する酸味と辛味が一体となったスープだ。日本の味に惚れ込んだウィチアン氏は絶対にそれを許さない。

「本物の味をコンセプトにしている以上、タイの味を入れるのは違うと思います」

 名古屋にある「フジヤマ55」の本部は比較的FC店に自由のある契約をしてくれるようで、タイの支店で独自の商品開発やプロモーションなどをすることが許されているという。しかし、ウィチアン氏はあくまでも日本の本物の味であることを前提として考えている。

「つけ麺はタイ人にとっては未知の食べもの。できるだけスタッフからも説明するようにはしていますが、初めての人はスープを麺にかけてしまいます」

 タイの麺類につけ麺風のものはない。そのため、いくら日本好きでもつけ麺まで知っている人はまだ少ない。この点だけは日本人が少ない郊外へと出店するときにリスクになる。そのため、タイにある支店は殆どが売り上げを伸ばしているのだが、日本人がほとんどいないコンケーン店の売上は最も低いのが現実だ。しかし、それでもウィチアン氏は本物の味にこだわり続ける。タイ国内の各支店へはバンコク近郊にあるセントラルキッチンから食材を配送する。麺も日本のレシピのまま製造しており、間違いなく日本の味である。タイの工場には日本の「フジヤマ55」に関わっていた日本人が常駐しているので、味がぶれることもない。

 そのこだわりに、日本人が少ない地域でも徐々に理解され、売り上げも伸びつつあるという。

「今後も郊外や他県に展開するつもりです。今の状況だと15店舗くらいまでは行けると思っています」

 若きタイ人社長だからこそ見抜いている、タイ人の日本ブームの傾向。だからこそ、中心地ではなく、あえて外へ外へと向かっている。いよいよ日本の本物の味がタイの田舎で浸透する日も近い。

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NaturalNENEAM) 取材協力:Mr.Wichian Inkraidee(Megumi Group CEO)>

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