すしざんまいが救いきれなかったソマリア海賊の微妙な転職先

すしざんまいが救いきれなかったソマリア海賊の微妙な転職先
Telegraphより

 一時、世界中の海を恐怖に陥れていたアフリカ・ソマリア沖で出没していた海賊たち。だが、近年、これらソマリア海賊の発生件数が激減している。

 1月18日に配信した『すしざんまい社長が語る「築地市場移転問題」と「ソマリア海賊問題」』でもお伝えしたように、一部のソマリア海賊たちは「すしざんまい」の支援もと、漁師への転職(または復職)を果たしていた。

 もともと、ソマリア沖はキハダマグロの恰好の漁場として、世界的にも有名だ。だが、海賊が出没するようになってからは、その漁場は放置されたままだった。

 そこに目をつけたすしざんまいの木村清社長は、ソマリア海賊たちと面会。略奪行為で得たカネではなく、「自分の稼いだカネで家族を養うべきだ」と説得を試みた。

 さらに木村社長は、漁師としては素人同然だった彼らにマグロ漁船を与え、漁の技術を教え、彼らに代わってマグロの輸出ルートも確保。「海賊」から足を洗う手伝いをしたという。

 しかし、当然ながら、全員が漁師に転職できたわけではない。では、そのほかの海賊たちは、いまなにをしているのだろうか。

 そもそもソマリア海賊による海賊行為自体は1990年代からおこなわれていたものの、2008年から被害件数が急増。運航船を襲撃しては人質をとり、身代金を要求するケースが相次いだ。世界銀行の試算によると、ハイジャックでの平均身代金額は306万ドル。2005年から2012年までの被害総額は3億1500万ドルから3億8500万ドルと言われている。

 2008年のソマリア海賊のハイジャック事件急増を転機として、事態を重く受け止めた各国は、2009年から海賊対策を実施。

 欧州連合による「アトランタ作戦」や北大西洋条約機構(NATO)による「オーシャンシールズ作戦」をはじめ、各国が人員を派遣し、掃討作戦の実施や一般船舶の護衛を開始した。日本でも、2009年から自衛隊を派遣し、船舶の護衛にあたっているという。また、ソマリア沖を運行する船舶側でも危機意識が高まり、武装護衛をつけるケースが増えた。

 こうした努力の末、2009年には218件だった海賊発生件数が、2012年には75件へと減少。さらに、2015年の7月30日の時点で発生件数0件にまで激減した(国際商業会議所(ICC)国際海事局(IMB)海賊情報センターの発表より)。数字を見ると、ソマリア海賊による略奪行為が収まったかのように見える。

 だが、一方ではいまだ「違法行為」に手を染めるソマリア海賊たちも存在する。

 イギリスのテレグラフ紙の報道によれば、かつては運航船を襲っていたソマリア海賊たちのなかには、海外漁船を守る「ボディーガード」に転身している者もいるという。

 これが普通の漁船の警護ならばよいのだが、問題は、元・ソマリア海賊たちが警護しているのが「違法な漁船」であることだ。

 もともと、ソマリア沖はマグロをはじめ、世界的にも水産資源が豊富なエリアとして知られている。だが、内戦が勃発後、漁業水域が曖昧になり、先進国からやってきた漁船軍団がソマリア沖に来て、不法な漁業を繰り返し、地元漁民の生活を圧迫し続けてきた。

 外国船の乱獲により生態系が破壊されている上、地元漁民たちの生活の糧となる水産資源が根こそぎ持って行かれてしまうため、地元漁民にとっての経済的被害も拡大。現在、地元住民は、海賊だけでなく、これら不法な漁船の取り締まりを希望しているが、その被害は拡大する一方だという。

 また、ソマリア沖でもうひとつ問題視されているのが先進国から持ち運ばれる産業廃棄物の不法投棄だ。ソマリアでは、1990年代頃から、有害な産業廃棄物や医療廃棄物の投棄も多数おこなわれてきた。これにより、ソマリア沖の生態系が汚染され、ソマリア漁民や水産資源に甚大なるダメージを与えている。

 東京大学教授・遠藤貢氏の著書『崩壊国家と国際安全保障』によれば、外国船によってもたらされる違法漁業などから自国の海洋資源を守るため、海賊へと「転職」した漁民もいるとの分析もある。現状、こうしたソマリアを取り巻く現状の根本的な改善がおこなわれていない以上、いつ海賊行為が再開されるとも限らない。

 なお、海賊行為の発生件数が減ったことで、以前に比べて運航船の警戒が薄れつつある上、2016年12月に欧州連合海軍部隊のソマリア沖派遣期限が切れるため、このタイミングを狙って再びソマリア海賊が復活する可能性も低くはないとの声もある。

 国際海事局(IMB)海賊情報センターのポッテンガル・ムクンダン局長も、昨年の海賊発生件数減少を楽観視せず、「いまだにソマリア沖の運航リスクは高く、いつ海賊行為が再開するとも限らない」と注意喚起を呼びかけている。

 一見沈静化したかのように見えるソマリア海賊だが、その火種はまだまだ当分は燃え尽きそうもない。<文/HBO取材班>

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