死刑囚がつくったアート。その創作の源泉とは? ギャラリーオーナーに聞いた

死刑囚がつくったアート。その創作の源泉とは? ギャラリーオーナーに聞いた
「極限芸術」ギャラリーオーナーの櫛野展正さん
       

 2013年に広島県福山市の鞆の津ミュージアムで開催された、死刑確定囚の絵ばかりを集めた「極限芸術」の第2弾が、4月29日から同市内にオープンしたギャラリー「クシノテラス」で開催されている。

 和歌山毒物カレー事件の林眞須美死刑囚や、埼玉愛犬家連続殺人事件の風間博子死刑囚など、数多くの死刑囚が出展作家に名を連ねている。「死刑囚がなぜ、そしてどんな絵を描くのか?」ギャラリーのオーナーであり、キュレーターでもある櫛野展正さんに聞いた。

◆死刑囚は刑が確定すると報道されなくなる

――まずは、櫛野さんのこれまでの経歴を教えてください。

 元々は大学が教育学部で、卒業後に広島県福山市の知的障害者福祉施設に就職し、障害者の支援を16年間やってきました。そこで障害がある人のアートサポートを始めたことがきっかけで、社会的に注目されることの少ないアウトサイダーアートに興味を持つようになり、2012年に鞆の津ミュージアムが開館してから、2015年3月までそこでキュレーターとして活動していました。その後独立し、今年の4月にクシノテラスを正式にオープンしました。

――鞆の津ミュージアムで「極限芸術」の第1弾を開催されていますが、どういった経緯で開催することになったのでしょうか。

 広島市にある「カフェ・テアトロ アビエルト」という店がありまして、最初はそこで死刑囚の人が描いた絵の展示会をやっていたんです。そこで初めて死刑囚で絵を描いている人の存在を知って、「死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金」という死刑廃止団体が、そういった死刑囚の絵や詩の公募展をやっていたので、そこに頼んで保管している絵を貸していただきました。死刑囚って、事件発生後や裁判中は騒がれるんですが、死刑が確定した途端に報道されなくなるので、「もっと死刑囚のことを理解して欲しい」という願いから、大道寺将司さんの甥達が団体を設立して、公募展を主催しています。

◆「検閲印」が捺された絵画

⇒【画像】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=93870

――絵はどうやって外に出しているのでしょうか?拘置所の検閲はかなり厳しいと思うのですが。

 展示会を実際に見に来ていただけたらわかると思うのですが、作品は全て拘置所が検閲し、検閲印が捺されています。例えば東京拘置所ですと青い丸、大阪だと桜紋に「大」、福岡だと「F」と書いてある検印が端の方に必ず押されています。若林一行死刑囚(岩手県洋野町母娘強盗殺人事件)が刑務官を茶化す漫画や、他の死刑囚を批判するような絵を描いていますが、死刑囚だから特別チェックが緩いということではないんですよ。ああいう作品も、基本的には許可が下りるんです。

――便箋や色紙に描かれているものが多いですが、画材はどうやって調達しているのでしょうか。

 画材は接見交通権のある人から差し入れてもらったり、拘置所の差入店で刑務官に頼んで自費で購入したりするんですが、売店には手紙を書く材料しかありません。絵を描く上で「画材」は非常に限られていますし、拘置所によって色数の制限なども異なっています。例えば、青と黄のマーカーで塗って緑色を作っる人もいて、色々と工夫されていますね。広瀬健一死刑囚(地下鉄サリン事件など)は、ご家族の話だと差し入れの花の樹液を使っていたそうです。

◆限られた画材ゆえの表現

――どの絵も色使いが独特ですが、それには「そもそも画材が限られている」という理由もあるんですね。

 その通りです。絵を描くキャンバスになるものも、手紙を書くための便箋が多いんですが、画用紙だったり、和紙だったり様々です。これもみなさん工夫されていて、宮前一明さん(坂本堤弁護士一家殺害事件・オウム真理教元幹部)は、かなり大きいサイズの和紙を使っているんですが、これは拘置所の差入店では販売していません。そこで大きな和紙に「手紙」を書いて差し入れてもらい、鉛筆で書かれた文字を消しゴムで消して、絵を描いていたそうです。松田康敏さん(宮崎連続強盗殺人事件)もかなり大きな作品を描いていますが、あれは小さい紙の裏に番号が書いてあって外に送付。外部の支援者が順番通りに繋ぎ合わせると一枚の絵になるように描かれました。

◆如何に色眼鏡で見ているかがわかる

――「死刑囚の書いた絵」と聞いて、自分は最初「仏画」のようなものを想像していました。ところがHPで「極限芸術2」の作品を見たところ、意外に抽象画のような内省的な絵が多かった。そして実際に展示を見に来てみたら、お寿司の絵や、エッチな絵や、四コマギャグ漫画があったりと、こちらのイメージがことごとく覆されています。考えてみれば当然なんですが、「死刑囚の絵」だから何か特別なパターンがある訳ではなく、作家さんによって作風はそれぞれバラバラなんですね。

 それはやっぱり、僕らが如何に色眼鏡で物事を見ているか、ということの証明であると思うんですよ。死刑囚は懲役刑と違って「死ぬことが刑」なので、基本的に更生の余地すら与えられていないんです。死刑囚の方たちが絵を描く理由もそこにあって、その中でいつ来るかわからない死刑執行の日までの時間を過ごすために、絵を描いたり詩を書いたりしているんです。だから、本来は別にどんな絵を描いたって構わないはずなんですが、どうしても世間一般では「死刑囚なんだから反省している絵を描かなければいけない」と思われていて、それは変な話なんですよね。

◆芸術文化プログラムには奨励されない

――最後に、「極限芸術2」を始めとした、「クシノテラス」の今後の展望を教えてください。

 今回は別団体からも「是非この作品を展示して欲しい」と作品を提供していただけました。夏に向けて、都築響一さんや茂木健一郎さんに来ていただいて、トークイベントも開催する予定です。東京オリンピックパラリンピックに向けて、どうしてもこういったアウトサイダーアートは芸術文化プログラムには奨励されない傾向にあるので、今後もクシノテラスでは継続的に本来の意味での「アウトサイダーアート」を打ち出していきたいですね。

<取材・文/カルロス矢吹>

<都築響一トークイベント>
お申し込み・詳細は→https://goo.gl/WzW4FI
5月29日(日)18:30~20:30
クシノテラスオフィス(広島県福山市花園町 ギャラリーの上です)
参加費2,500円(1ドリンク付き)

<茂木健一郎トークイベント>
7月4日(月)18:30~20:30
お申し込み・詳細は→https://goo.gl/cXlwIw
クシノテラスオフィス(広島県福山市花園町 ギャラリーの上です)
参加費2,500円(1ドリンク付き)

『極限芸術2~死刑囚は描く~』
開催中~8月29日(月)まで
12:00~18:00
開館/土・日・祝・月 6/11・6/25・6/26は休館
観覧/500円 ※小学生以下、障害のある人は無料
会場/クシノテラス(福山市花園町2-5-20)

【櫛野展正】
広島県在住。2000年より知的障害者福祉施設職員として働きながら、広島県福山市鞆の浦にある「鞆の津ミュージアム」 でキュレーターを担当。2016年4月よりアウトサイダーアート専門ギャラリー「クシノテラス」オープンのため独立。社会の周縁で表現を行う人たちに焦点を当て、全国各地の取材を続けている。

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