「世界で一番貧しい大統領」の南米諸国指導者評が面白い

「世界で一番貧しい大統領」の南米諸国指導者評が面白い
photo by Frente a Aratiri on flickr(CC BY-SA 2.0)

 日本では「世界で一番貧しい大統領」として紹介されたウルグアイの前大統領ホセ・ムヒカ氏(愛称ペペ)。

 すでに大統領の職務から離れてはいるが、その発言は日本で注目されている。もちろん、ラテンアメリカでもいまだに注目を集めている。

 ムヒカ氏は1960年代に経済が低迷して政情が不安定になったウルグアイに社会主義を唱えたゲリラ組織トゥパマロスのメンバーとして体制派との戦いを経験した人物だ。70年代に入ると政治活動として中道左派政党「拡大戦線」が誕生した。後に、ムヒカ氏は現大統領のタバレ・バスケス氏と同様に「拡大戦線」に加わって政治活動を展開した。

 2005年にタバレ・バスケス氏が大統領に就任するや、ムヒカ氏は農牧水産相として入閣。ウルグアイで初の左派政権の誕生であった。2010年にバスケス大統領を引き継いでムヒカ氏が大統領に就任したが、彼は歴代大統領のスアレス・イ・レイェス公邸での生活を辞退して郊外の質素な自宅で生活を続けた。バスケス現大統領も同様に自宅で生活し、公的行事などで公邸を利用するだけにとどめている。

 ブラジルのルラ前大統領は、彼の評して「ペペ・ムヒカは我々ラテンアメリカ人にとって、アフリカのマンデラのような存在だ」と言った。「長い期間、法による追跡を受け、収監された後に政治活動に復帰してからはより寛大になり、より包容力をもつようになった。そして、ウルグアイをこよなく愛している」と述べて彼を賛辞した。
(参照「LA PRENSA GRAFICA」)

 そんなムヒカ氏は、現在のラテンアメリカの指導者をどう見ているのか?

◆ 「ベネズエラのマドゥロは病的におかしい」

 ベネズエラのマドゥロ大統領については辛口に批判する。マドゥロ大統領と議会を支配する野党派議員との間で対立が益々過激化している現状について、テレビ10チャンネルの質問に〈「私はマドゥロ大統領とは友達だが、(彼に遠慮なく言わせてもらうと)病的なまでに彼はおかしくなっている」「ベネズエラのみんながおかしい」「これではもう何も解決出来やしない」〉と答えて紛争解決への道のりがまだ遠い印象を窺わせた。
(参照「El Pais」)

 そして、そこまで悪化したベネズエラの現状を前に、その元凶となったチャベス前大統領については次のように語っている。

「チャベスは多くのベネズエラ人を貧困から救ったことは評価する。しかし、それは社会主義ではない」

 彼がベネズエラの大統領に就任した時に、〈「それでは社会主義は構築できない」〉とチャベス大統領に伝えたこともあるという。(参照「Infobae」)

 ブラジルで起きたルセフ大統領の罷免事件については、「クーデターと思える、合法的に着せつけがされているが」と指摘している。
(参照「El Comercio」)

◆アルゼンチンの前大統領を「ババア」よばわり

 またマクリ大統領が誕生したアルゼンチンについては、こう語っている。

「マウリシオ・マクリが勝利したのではない。ペロン主義(※アルゼンチンで3回大統領になったフアン・ペロンの支持者であり、現在の正義党支持者)が敗けただけのことだ」

 そして、「アルゼンチンが過度の負債を背負い込むことになる。そうなるとそのあとの返済が難しくなる」と指摘している。
(参照「Infobae」 )

 また、マクリ氏への助言として、〈「成功するにはペロン主義者の一部も加えるべきだ」〉と述べている。
(参照「La Nacion」)

 ただ、マクリ大統領に対して批判的なわけではない。そもそも、アルゼンチンと言えばクリスチーナ・フェルナンデス前大統領とは幾度も衝突しているのだ。両者の衝突で良く知られた出来事は、ムヒカ氏がフェルナンデス大統領との口論の末に、まだマイクが切られていなかったことに気がつかなかったムヒカ氏が小声で〈「斜視の男よりも、このババアのほうがひどい」〉と言ったことが公然となったことである。斜視の男というのはフェルナンデス前大統領の夫でキルチネール元大統領のことである。彼の片方の目が斜視だっだことを揶揄したものである。
(参照「El Universo」)

 ちなみに、この口論の発端というのは、ウルグアイとアルゼンチンは川を挟んで国境を接しているが、ウルグアイが、この川に比較的近い所にセルロースに関係した商品の製造工場を建設しようとしたのだ。これに対し、アルゼンチン側ではそこから発散する廃棄物が環境汚染に影響するとして反対したのである。そして国際司法裁判所にまでこの紛争が持ち込まれて裁定を仰ぐというところまで発展した。

◆ラテンアメリカを愛するムヒカ

 ラテンアメリカ諸国の指導者についても辛口で批判するムヒカ氏だが、彼はラテンアメリカを愛している。

 「ラテンアメリカにはひとつのユートピアが存在している。即ち、我々は複数の国によって分かれているひとつの国家であるということだ」〉と説いているほどいだ。
(参照「Infobae」)

 その意味というのは、ラテンアメリカの殆んどの国がスペイン語を公用語としていることだ。各州が集まってアメリカ合衆国が形成されているように、ラテンアメリカもその為の重要な条件として共通のひとつの言語をもっていることからひとつの国家になれる要素を備えていた。ムヒカ氏はその意味でラテンアメリカのすべての国を愛していたといえる。

 しかし、ラテン人特有の個人主義に支配されてひとつの組織にまとまるのが苦手なのである。それが中南米合衆国といったひとつの国家が誕生しない理由であろう。

<文/白石和幸 photo by Frente a Aratiri on flickr(CC BY-SA 2.0) >
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

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