米メイヨークリニック神経学のAmaal Starling氏らの研究チームは、患者が自宅で使用できる携帯型の単一パルス経頭蓋磁気刺激(sTMS)装置「SpringTMS」が片頭痛の予防に有効であるとする研究結果を『Cephalalgia』3月4日オンライン版に発表した。

 発表によれば、研究チームは2014年12月~2017年3月の期間に頭痛専門クリニックに登録した、18~65歳の片頭痛患者263人を対象として行われた。

 まず患者は指導を受けた後、自宅で3カ月間「SpringTMS」を使用しながら頭痛日誌を付けた。患者は午前中と夜間に4回ずつ「SpringTMS」を使用し、1分未満の磁気刺激を与え、頭痛発作中に磁気刺激を3回与える治療を15分の間隔を空けて最大で3回行った。

 その結果、研究開始から3カ月後、片頭痛のタイプにかかわらず、頭痛発作が見られた日数が1カ月当たり平均で約3日減少し、頭痛の頻度が半減した人は46%に上った。

磁気エネルギーを用いて脳の興奮を抑制

 今回の論文が発表された「ESPOUSE Study」の成果は、「SpringTMS」を製造・販売するeNeura社の資金提供を受けて実施された。

 「SpringTMS」は、2014年5月に米国で初めて片頭痛の治療を目的としたTMS装置として米食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。以来「SpringTMS」は、神経疾患や精神疾患の治療や診断で広く使用され、2017年9月に片頭痛の予防にも適応されている。8cm×23cmのコンパクトサイズ、1.4kgの軽量。患者の使いやすさを配慮したデザインが特徴だ。

 「SpringTMS」は、磁気エネルギーを用いて神経細胞の電気的環境を変化させ、脳の興奮を抑制する仕組み。したがって、患者が発作した時は、装置を後頭部に当て、ボタンを押すだけで磁気パルスが発生する。つまり、過剰に興奮した片頭痛患者の脳の興奮を抑えるので、頭痛発作を予防できる。

 Starling氏は「『SpringTMS』を使用すれば、片頭痛患者の頭痛発作の頻度だけでなく、片頭痛治療薬の使用量も減量でき、忍容性も良好だ」と説明する。

 米国の片頭痛患者は3800万人。男性よりも女性の方が多く、女性の有病率は男性の3倍。根治療法はなく、抗てんかん薬、抗うつ薬、降圧薬のほか、ボツリヌス毒素注射、ストレスマネジメント、リラクゼーション法、適度の運動などが症状を軽減する。

 Starling氏の共同研究者の一人で米アルバートアインシュタイン医科大学神経学のRichard Lipton氏は「片頭痛に苦しむ患者に新たな治療の選択肢を提供したい。薬物治療を受けたくない患者や、薬物治療が奏効しないか副作用が問題になる患者の重要な選択肢になるだろう」と主張している。

「片頭痛」かどうかがわかる6つのポイント

 片頭痛の悶絶苦悶の激痛は、本人にしか分からない。片頭痛の自己チェック法がある(出典:NHK健康チャンネル「片頭痛かどうかがわかるセルフチェックと痛みをやわらげる自己対策」2017年10月18日)。北里大学客員教授の五十嵐久佳氏は「片頭痛かどうかがわかるチェック」を以下のようにアドバイスしている。早速見よう。

①頭の片側に起こる
②ズキンズキンと拍動性の痛みがある
③我慢できない、仕事などに支障がある
④体を動かすと痛みが悪化する
⑤頭痛が起きると吐き気がする
⑥光や音に敏感になる

 五十嵐氏によれば、①~④の症状のうち、2つ以上が当てはまり、かつ⑤と⑥のうち1つ以上が当てはまる場合は、片頭痛と考えられるという。

 片頭痛の持続時間は、4~72時間とさまざま。症状も、階段の昇り降りなどでも生じ、空腹感、生あくび、イライラ、手足のむくみなどの予兆がある場合がある。

 また、片頭痛の1~2割の人は、視野の中央にギザギザした光が現れ閃輝暗点(せんきあんてん)が見られる。5~60分間ほど続いてから、あるいは閃輝暗点が消えてから60分以内に頭痛が生じる。

 では、片頭痛を緩和する対処法は何だろう?

片頭痛を緩和する対処法は?

 まず、冷たいタオルや保冷剤を痛む部位に当てると、血管が収縮するため、動脈の拍動を抑え、ずきずきした痛みを軽減する。患部を温めたり、もんだりしてはいけない。

 また、入浴やマッサージは控えよう。入浴は血管を拡張し、痛みが増す。静かな暗い場所で安静にし、少しでも睡眠をとると症状が落ち着く。仕事中などに突然発作が起き、ひと眠りが無理なら、椅子に座って静かにするだけでも痛みが軽くなる。

 そして、痛みが強くないなら、市販の頭痛薬で症状を抑えよう。痛みがやまない場合は、医療機関を受診しなければならない。

 さらに、国際医療福祉大学三田病院予防医学センター長・神経内科教授の桂研一郎氏は、以下のように付け加えている(出典:同前)。

 まぶしい光やうるさい音を避けたり、睡眠不足・睡眠過多・過労によるストレス、過食・偏食、アルコールの過剰摂取を避け、生活習慣を改善するのも重要。

 コーヒー・紅茶・日本茶など、カフェインを含む飲み物を適量摂取することも効果的。カフェインは血管を収縮する作用があり、痛みの早期に飲めば、脳動脈の拡張が抑えられ、痛みが軽減しやすい。

 だが、軽快しないなら、医師が処方する鎮痛剤のトリプタン系薬剤薬(イミグラン、ゾーミッグ、レルパックスなど)を飲むのがベストだ。トリプタン系薬剤は、脳の血管に作用して広がり過ぎた脳の血管を元の太さに戻すため、三叉神経(顔の感覚を脳に伝える神経)からの神経ペプチドの放出を抑える。

 また、トリプタン系薬剤は、三叉神経が受けた刺激を大脳に伝達するのをブロックするので、片頭痛だけでなく、吐き気、嘔吐、光過敏・音過敏などの症状も抑える効果がある。

 我が身を振り返れば、「頭痛持ち」は慌て者の人が多い!? 片頭痛が急に起きても慌てず、対処しよう。
(文=編集部)

*参考文献:「きょうの健康」テキスト 2017年8月号