先日のニュースで鉄道会社が取り組む痴漢防止策が特集されていました。女性専用車両など社会全体が痴漢対策に向けて策を講じている昨今ではありますが、防止策以上に女性による自衛策も重要ではないでしょうか。

一般的にこうした反撃という自衛策は「正当防衛」として広く認知されています。しかし、ただ反撃すればよいというだけではありません。そこで今回は、痴漢に遭った被害者が加害者に対して反撃する際のリスクと注意点について、桐生貴央弁護士に聞いてみました。

痴漢などの性犯罪は絶対悪?!でも過度な撃退は禁物!撃退のリス...の画像はこちら >>

■痴漢撃退にも限度をわきまえましょう!

まずは痴漢撃退の際に被害者が負うリスクとは何でしょうか。

『痴漢という危機的状況に際して、自己の権利を守るために、防衛行為に出る事は人間本来の防衛本能ですので、犯罪とはなりません。ただ、そうはいってもやりすぎは良くないので、やりすぎた場合には「過剰防衛」といって、犯罪が成立します』(桐生貴央弁護士)

『また被害者側として、痴漢に遭っていると勘違いして防衛行為に出た場合には誤想防衛ということになります。
ただ、誤想防衛の場合、錯誤という勘違いにより、故意が認められませんので、犯罪とはなりません。ちなみに、誤想防衛の場合で、相手方にひどい怪我を負わせてしまった場合、誤想過剰防衛ということになります』(桐生貴央弁護士)

つまり痴漢撃退に際して、その程度によっては反対に加害者になってしまうというリスクが存在しているわけですね。

■やりすぎたとしても、刑が軽減されたり免除されることも!

痴漢の被害者でありながら、やり過ぎたとはいえ自衛のために防衛行為に及び、その結果犯罪者になってしまった場合、痴漢被害者としての心情やその状況を考慮はしてくれるのでしょうか。

『過剰防衛の場合であっても、過剰誤想防衛の場合であっても、その事情を汲みして、情状により刑が軽くなったり、または免除されたりすることがあります』(桐生貴央弁護士)

『ただ、相手に怪我を負わせたならば、治療費等の負担はせざるを得ないでしょう』(桐生貴央弁護士)

以上のことは言われてみれば自明のことかもしれません。
しかし普段よりこのような意識を持っていないと、いざ痴漢に遭ったときにパニックに陥り、気づいたら相手に怪我を負わせてしまっていたということも十分にあり得ます。
痴漢に遭わないことが最重要ですが、もし遭ってしまったら、を考えておくことも必要ではないでしょうか。