Q&AサイトのOKWAVEで「アルバイトの退職を申し出たら少額訴訟を提訴された」というタイトルで質問が投稿された。質問者は全国チェーンの小売店でアルバイトを始めた大学生。
しかし1ヶ月もすると、勉強との両立が難しくなり、次第に体調不良に。そこで大学生は、提出済のシフトを消化した段階で退職をしようと決意。
そこで勤務先に、その旨説明し、退職を申し出ると、聞いた途端に激昂した店長。結果的には退職を認めてもらえず、挙句の果てに、すぐに店に来るように凄まれたが、恐怖を感じたため断る。
その翌日、シフト通りに出勤すると、シフト表から自分の名前が消されていたため、勝手に解雇されたものだと思い帰宅。
数カ月後、裁判所から少額訴訟の損害賠償請求という内容で訴状が自宅に届く。

果たして、この訴状についてどう対応するべきだろうか、富士見坂法律事務所の井上義之弁護士に伺った。

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■質問 アルバイトの退職を申し出たら少額訴訟を提訴された

皆様、はじめまして。
数ヶ月ほど前、全国チェーンの小売店でアルバイトをはじめました。しばらく勤めていると、日に日に体調が思わしくなくなり勉強との両立が難しいと感じ、はじめてから1ヶ月を迎えようというところですでに決まっているシフトをこなしたら退職しようと考えました。

某月の12日、店の責任者に退職の旨を申し出る電話をしました。しかし、罵声怒号の嵐で断られ、あげく直接店に来いと凄まれましたが、怖かったし、大学に行かねばならないので断りました。
この時点で、13日、14日に出勤するシフトが残っていました。

翌13日は、前述のとおりシフトがまだ残っていますので、出勤時間に間に合うように家を出ました。そして、事務所に着くと、事務所にいた他の従業員が私を見るなり不思議な顔をしました。この不思議な顔の原因は、私がシフト表を見ることによってその謎が氷解しました。13、14日とシフト表から私の名前が塗りつぶされ、他の従業員の名前が記されていたのです。私は状況を理解出来かねていましたが、勝手に解雇されたのだと理解し、とりあえず、他の従業員に持ってきていた貸与物を預け、一時帰宅しました。


店の責任者に事の真相を聞こうと、責任者の携帯電話番号に電話をしました。かけてみると、来るか来ないかはっきりわからないのでシフトを変更し、私を退職させた、とのことです。私は少なくとも残っているシフトをこなした上での退職を望んでいましたし、それが断られたならば、最悪1ヶ月先まで続けて退職しようと思いました。ところが、店の責任者の独断専行でシフトを抹消され、解雇されました。

その電話を掛けた数ヶ月後、裁判所から特別送達が自宅に届きました。
少額訴訟の損害賠償請求とのことです。
原告は、例の店の責任者が役員となっている会社でした。会社の規模は極めて小さく、役員には家族の名前が名を連ねる同族企業です。

訴状に記載されている請求の原因を見ますと以下の通りになっていました。

(1)民法第627条1項の「期間の定めのない労働契約については各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができ、解約の申し入れから2習慣を経過することによって終了する。」という規定に正当な理由もなく背いている

(1)○月15日(○)~○/21(○)のスケジュール調整に余分に8時間かかった。
○月22日(○)~○月28(○)のスケジュール調整に余分に4時間かかった。
3000円×12時間=36,000円

(2)1ヶ月以上前に退職する書面に署名・捺印して提出している。

○月29日(○)~○月5日(○)のスケジュール調整に余分に4時間かかった。
○月6日(○)~○月12(○)のスケジュール調整に余分に4時間かかった。
3000円×8時間=24,000円

(3)一方的な契約違反によって負った精神的慰謝料 30,000円

とのことです。これらは承服出来かねる内容ばかりです。具体的な損害でもないのにそれを実損害としているのです。ちなみに請求の原因の金額の根拠となる書類は一切添付されておらず、相手の言い値である状態です。


裁判所は即日結審されるようですが、こちらの勝訴とはなりますか?
それとも原告の視聴がそのまま通ってしまいますか?
皆様の見解をお待ちしています。

■回答 すぐに対応しないと店側の勝訴が自動的に決定。しかし店側の主張には無理がある。

ご質問にある情報のみを前提としてコメント致します。質問に記載されていない事実については、不明なため、具体的な結論については、あくまでも想定される範囲でしかコメントできません。

1 質問の回答
他の方も返答されているように、既に裁判になっていますから、きちんと対応しないと、先方の勝訴となりえます。
逆に、きちんと対応すれば、ご質問にある情報のみから判断すると、原告の主張は通らないと思われます。

2 なすべき対応について
基本的には、この質問に記載されている事実を詳細かつ具体的に答弁書に記載すればいいと思われます。
また、通常訴訟への移行の申し出てその上で反訴を提起する(解雇が有効であることを前提とした解雇予告手当の請求など)といった方法を取ることも可能でしょう。

3 法的な観点からの説明
民法627条1項には「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」と規定されています。この規定からすると、一般的には、労働者は退職(解約)の申し入れをしてから2週間は就労義務があることになります。しかし、本件では相談者は退職の旨を申し出る電話をした翌日からシフトを外され、相談者は「解雇され」ていますので、少なくともこれ以降は雇用主に対して就労義務は負っていないと考えられます。
したがって、相談者の解約(退職)申し入れ及びその後の不就労は雇用主に対する債務不履行や不法行為を構成しないことになります。

なお、質問からは少し離れますが、今回の雇用主の解雇は不当なものと考えられますので、解雇の無効及び損害賠償などを主張出来ると考えられます。そのような主張をされたい場合には、弁護士への相談をお勧めいたします。

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