メディアで取り上げられることも多い詐欺事件。注意喚起のために、オレオレ詐欺やワンクリック詐欺、結婚詐欺など、その手口に由来したネーミングとなることでも有名だが、被害の額や規模を見聞きすることはあっても、被害者への対応などが報道されることは多くない。
つまり、詐欺で騙し取られたお金が、被害者の元に戻ってくるのかどうかである。もしも加害者が既にそのお金を使ってしまい、手元に残っていなかった場合は泣き寝入りとなるのだろうか。今回はこの問題について荻原邦夫弁護士に伺った。

詐欺で騙し取られたお金は戻ってくるの?戻ってこない場合の救済...の画像はこちら >>

■被害者には加害者に返還請求する権利がある

そもそも違法に儲けたお金は、どのような対応がなされるのだろうか。

「違法に儲けたお金は、多くの場合、お金を出した側からの民事上の返還請求権が成立します。また刑事手続の中でも、刑法19条1項には没収という刑罰があり、これは犯罪により得た物等を国庫に帰属させるというものです。
没収ができない場合には、追徴といった金員を支払わせる処分もあります」(荻原邦夫弁護士)

つまり、被害者は泣き寝入りすること無く、返還請求する権利があるということである。では、加害者の手元に残っていなかった場合はどうなるのだろうか。

「本来的には、被害の回復は、被害を受けた者が相手方に対して民事的な請求をすることになります。しかし、犯罪者を含む相手方の手元にお金がない場合には、仮に民事裁判で勝訴しても回収できないという場合もあり得ます」(荻原邦夫弁護士)

なんと、相手に請求する権利はあっても、相手にそれを支払うだけの能力がなければ、結局泣き寝入りになるということだろうか…。

■取り戻せるかもしれない二つのケース

泣き寝入りとなった場合、救済策はないのだろうか。

「没収された財産を被害者に対して給付する手続もあります(犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律)。
しかし、没収等できる財産がなかったり少なかったりする場合には、この手続を利用しても,給付される金額は限られてしまいます」(荻原邦夫弁護士)

「また、相手方が、刑事事件になることを避けるなどのために、任意に被害者への返還に応じる場合もなくはありません」(荻原邦夫弁護士)

没収した財産で被害者に給付するという方法か、あるいは、事件化することを恐れた加害者が、自ら返還に応じるという方法のどちらかがあるという。しかしこうも付け加えた。

「このように、被害者がお金を取り戻せる場合はいくつか考えられるのですが、相手は違法行為をして被害者から金員を奪った者ですので、いずれにしても、どの方法や手続によっても、被害の回復はとても難しい場合が少なくないのが現状です」(荻原邦夫弁護士)

■騙されないための対策を覚えておこう

詐欺については「騙すほうが悪いのか。騙される方が悪いのか」という議論がしばしば起こる。これについては言うまでもなく、騙すほうが悪い。

しかし、詐欺の手口は益々巧妙化している。
勿論、それに応じて防犯や対策も進化してはいるが、イタチごっことなっている感は否めない。

結局、このような現状を踏まえると、詐欺に遭わないために私達に出来るのは、知識や知恵を身につけることだろう。

主な詐欺の手口とその対策は警察庁もインターネットで公開している。騙されて、辛い思いをするのは自分なのだから、せめて騙されないための対策は怠らないようにしたい。