「半年前に盗まれた自転車を駅前で発見!」ーーもしもこんな状況に出くわしたら、思わず乗って帰ってしまうのではないだろうか。しかし、これが罪に問われる可能性がある。

では何故、本当の持ち主にも関わらず、罪に問われるのだろうか?これを理解するにあたってポイントとなるのが「自力救済」である。そこで今回はこの問題について井上義之弁護士に話を伺った。

「盗まれた自転車を発見」ーー乗って帰るとなんと本当の持ち主で...の画像はこちら >>

■自力救済とは?

まず自力救済について伺った。

「自力救済とは、権利者が自分の権利を侵害された場合に、法的な手続によることなく、実力で権利を実現(回復)することを言います。刑事法では自救行為とも言います。典型的には、窃盗の被害者が、窃盗犯人の家に無断で立ち入り、盗品を実力で奪い返すような場合が自力救済です」(井上義之弁護士)

冒頭で触れた自転車の件がまさしくそうだが、これが禁止されているということなのだろうか。


「法治国家では権利の実現は法的な手続を通じて行うことが要請されており、自力救済は原則として禁止されます。その理由は、自力救済を広く許容するといわゆる弱肉強食の弊害が生じ、社会秩序の維持が難しくなってしまうためです」(井上義之弁護士)

■禁止されている自力救済をやったらどうなるの?

禁止されている自力救済とは知らずに、自転車を乗って帰り、その後窃盗罪に問われた場合は、本当の持ち主であるということが、罪を軽くするのだろうか。

「まず、自力救済が特定の犯罪構成要件に該当しても正当防衛や正当行為にあたる場合はそもそも処罰されません。正当防衛や正当行為にあたらず犯罪として処罰される場合も、量刑判断において実力行使に至った事情が被告人に有利に考慮される可能性はあると思われます」(井上義之弁護士)

盗まれた自転車を発見した場合は、乗って帰ることはせずに、まずは警察に連絡することが先決だ。