【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】

本連載では、国内外問わず通用するマーケティング施策を取り上げ、インバウンド対策にも役立つヒントをお届けします。

※本記事は、2020年10月5日に掲載した記事を一部修正の上、再掲しています。


新型コロナウイルスの流行により、世界各国においてフードデリバリーサービスが広く普及し、家にいながらにして気軽に地元の名店の料理を楽しめるようになりました。

一方で、配達員が配達を急ぐあまり交通事故が多発していることからも目をそらせません。

そんな中、中国フードデリバリー大手の「Ele.me(餓了麼)」は2020年9月9日に配達員に配慮した新機能として「5分・10分待てます」ボタンを導入しています。

導入の背景や中国ユーザーの声を見ていきましょう。


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    目次

  • 中国フードデリバリー大手「Ele.me(餓了麼)」の「待つ」ボタンとは
    • 中国ではフードデリバリー配達員の死傷事故が続出
  • 原因は歩合制の報酬制度にあり?
  • 中国ユーザーの声は両極端なものに
    • 「安全運転のためなら待てる」「配達員も大変だ」という声が
    • 一方で「遅延はプラットフォームの問題」との声も

中国フードデリバリー大手「Ele.me(餓了麼)」の「待つ」ボタンとは

Ele.me(餓了麼)は、アリババグループ傘下の上海拉扎斯信息科技が提供しているフードデリバリーサービスです。

2009年に設立され、現在では中国フードデリバリー市場においてMeituan Waimai(美団外売)と並ぶ主要なサービスとして知られています。

Ele.meでは配達員が配達時間を気にするあまり事故を起こしてしまう事態を防ぐことを目的に、注文時の画面に「5分・10分待てます」ボタンを導入しています。

ユーザーが注文時にこのボタンを押すと配達員にその旨が通知され、配達員は余裕を持って配達できる、というものです。

ユーザーには配達員に協力した謝礼として、Ele.me内で利用できるポイントが付与されます。

なお、Ele.meの競争相手であるMeituan Waimaiも同時期に、最大8分までの配達遅延を許容すると発表しています。

中国ではフードデリバリー配達員の死傷事故が続出

中国においてフードデリバリーサービスを利用しているユーザーは2019年時点で4億6,000万人を超えています。

また、市場規模は2023年時点で約2,140億ドルにのぼります。

ユーザー数および市場規模の拡大と同時に配達員が巻き込まれる事故も増加しています。

2017年上半期には中国において計76名の配達員が交通事故により死傷しており、中国大手報道社「環球時報」により問題性が取り沙汰されました。

また、2019年1月から6月の間に宅配便やデリバリーに関連する事故が325件発生し、そのうち5人が命を落とし、324人がけがを負いました。

中には配達が5分遅れただけでユーザーが激怒し骨折するほどの暴力を受けた配達員の例も報告されており、配達員の保護は各社における課題とされています。

原因は歩合制の報酬制度にあり?

交通事故をはじめとするさまざまなトラブルの原因となっているのは、配達員の報酬制度が歩合制であるからともいわれています。

効率を重視するのであれば短時間で多くの配達をこなす必要があり、このことが配達員の危険運転を招く一因となっているようです。

Ele.meやMeituan Waimaiは、注文から30分以内の配達を目標として掲げています。

この目標を達成するために、コンピューターが交通渋滞などを計算した上で、注文ごとに30分以内に配達を遂行できる配達員を選んでいます。

しかし、コンピューターの計算と実際の状況が合わず配達にかかる時間が30分を超えてしまう場合もあります。

合わせて、Ele.meとMeituan Waimaiでは30分以内に配達を完了させると賞金がもらえ、30分を超えてしまった場合は罰金が科せられるシステムが採用されています。

そのため、配達員は多少無理をしてでも30分以内に配達を終えるようになってしまいました。

中国ユーザーの声は両極端なものに

Ele.meが導入した「5分・10分待てます」ボタンに対し、中国インターネットユーザーからはさまざまな意見が寄せられました。

意見の内容は両極端なものとなっており、配達員を気遣う立場から「待つ」ボタンに賛成する意見と、会社による配達員管理の怠慢を指摘する立場から「待つ」ボタンに反対する意見の両方が見られました。

「安全運転のためなら待てる」「配達員も大変だ」という声が

「待つ」ボタンに賛成する意見としては、「配達員の身の安全が最も重要だ」「配達員の安全のためなら、5分10分と言わず何分でも待つ」「配達員は大変な職業なのだから、自分は絶対に配達員を急かさない」といった配達員を気遣う声が多く寄せられています。

また、中には「飲食店が料理を準備する時間にも余裕を持たせてあげて欲しい」といった飲食店を気遣う声も寄せられていました。

一方で「遅延はプラットフォームの問題」との声も

「待つ」ボタンに反対する意見としては、「5分10分待ったところで、配達員はその時間で更に多くの配達をこなすだけ」「配達員が無理な運転をするのは配達遅延に罰金を科す制度が原因なのに、その責任を消費者に転嫁するな」「配達時間計算システムを改良して、配達員に要求する配達時間に余裕を持たせれば良いだけの話」というように、配達員に要求する配達時間の余裕のなさや配達遅延への罰金という根本的な原因を排除しないことへの批判も寄せられています。

また、「ほとんどのユーザーは多少配達が遅れても何とも思わない。理不尽なクレームを言うユーザーは退会させれば良い」というように、良心的なユーザーを顧客として選ぶようEle.me側に求める声もあります。

<参照>

Weibo:https://weibo.com/1282440983/JjJZmlZ7o

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