漫画家・山本さほさんへの不適切対応で世田谷区役所が謝罪 問題点を解説

記事まとめ

  • 世田谷区職員が漫画家・山本さほさんへの報酬を一方的に差し引こうとした問題について弁護士が解説した。
  • きちんと仕事をしていない等の場合を除き、相手方の同意なしに報酬を一方的に減額することはできないという。
  • 準委任契約の場合は、委任事務を処理するのに必要と認められる経費の支払いを求めることもできるとのこと。

漫画家・山本さほさんに世田谷区職員が不適切対応 行動に問題はないか弁護士が解説

漫画家・山本さほさんに世田谷区職員が不適切対応 行動に問題はないか弁護士が解説

先日、漫画家の山本さほさんが、「講師として引き受けた世田谷区のイベントで、会場のダブルブッキングにより生じたキャンセル料を、自身の報酬から差し引くと区の職員に告げられた。区の職員のミスであるはずなのに遺憾だ」とTwitter上で訴え、物議を醸しました。
その後、世田谷区職員の行為は不適切だったとして、区長と職員の上司らが謝罪し一件落着となりましたが、現在も世田谷区職員の発言については非難の声が上がっています。

不手際を人のせいに…
世田谷区職員の行動は、自身の不手際が招いたダブルブッキングの責任を、立場の弱いフリーランス漫画家になすりつけようとしているとしか思えませんから、世間の怒りは当然ですよね。
このような行動がまかり通ってしまう場合、仕事を請ける側としては不安を感じてしまいます。世田谷区職員の行動は、法律的に見て問題のないものなのでしょうか?
パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に見解をお伺いしました。

世田谷区職員の行動に問題は?
櫻町弁護士:「山本さんご自身のツイートを拝見しますと、『海外の子ども達にまんがを教えるというイベントがあり、講師としてお仕事をお受けしました』とあります。
この内容を前提にしますと、山本さんと世田谷区との間では、『海外の子ども達にまんがを教えること』を業務内容とする業務委託契約(準委任契約・民法656条)が成立していた、といえるでしょう。
この契約に基づき、山本さんは海外の子ども達にまんがを教える』という債務を負い、世田谷区は『山本さんに対して一定額の報酬を支払う』という債務を負っていたことになります。
同じく山本さんのツイートによれば、区の担当者は、『お店のキャンセル料2万円、山本さんのギャラから出しますね』と述べたとのこと。契約で定められた報酬額を一方的に減額しようとしたということになります。
契約当事者は取り交わした契約の内容に拘束されます。そのため、きちんと仕事をしていない等の債務不履行がある場合を除き、相手方の同意なしに内容を変更することはできません。
したがって、山本さんの同意なくして区の担当者が報酬額を一方的に減額することはできず、たとえ天引きされたとしても、山本さんは世田谷区に対し、当初の合意どおりの報酬を支払うよう請求することができます」

準委任契約の場合も費用などを請求できる
櫻町弁護士:「なお、山本さんのツイートには『ちなみに子どもの画材も買いに行ってくれと言われたので子供たち全員分の画材も自腹で買いました』とあります。
準委任契約の場合、「受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる」(民法650条)という規定があります。
『子どもの画材を購入する費用』は、上記における『委任事務を処理するのに必要と認められる費用』に該当しますので、山本さんが負担するという約束(契約)になっていないのであれば、山本さんは世田谷区に対し、画材購入に要した費用の支払いを求めることができるでしょう」

フリーランスがこのような事態を防ぐには?
世田谷区職員の対応は、多くの個人事業主に不安を与えました。理由は、対応が立場の弱い山本さんにつけこんでいるように思えたからです。
実際、役所との仕事ではフリーランスを下に見るように横柄な態度を取られることも少なくないと聞きます。理不尽な振る舞いを防止するためにはどうすればいいのでしょうか? 櫻町直樹弁護士に聞いてみると…
櫻町弁護士:「こうした事態を防ぐためには、少なくとも『業務としてするべき内容』をなるべく具体的に挙げ、それに対して支払われる報酬額や支払時期、受任者が自己負担すべき費用は具体的に何であるのかなどの主要な点について、書面にしておくことが望ましいといえるでしょう。
会場までの交通費なども含め、費用負担はきちんと決めておきましょう。なお、書面化が難しい場合は、少なくともメールのやり取りなど、後の残るもので発注者の確認を得ておくことが重要です」
山本さんのような被害に遭うことは稀かもしれませんが、自分を守るためにも、契約時に関する証拠はできるだけ残しておきましょう。

*取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)
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「漫画家・山本さほさんに世田谷区職員が不適切対応 行動に問題はないか弁護士が解説」の みんなの反応 1
  • 匿名さん 通報

    こういう恥知らずな担当者、企業にもゴロゴロいる。区役所の職員だから騒ぎになったが、一般企業が相手の場合、被害額が数百万程度では警察も相手にしてくれない。根本的に日本には弱者を守る法律がないのだ。

    0
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