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今回は、国が発行する広報誌である「官報」についてお届けします。
官報には自己破産・個人再生などの債務整理を行った破産者情報をはじめ、国が決定した情報が掲載されています。
この官報の破産者情報を利用して作られた「破産者マップ」というサイトが、先日大きく話題になりました。(現在は閉鎖されています)
作成者は当初「官報で公開されている情報を活用しているから問題ない」という認識でこのサイトを作ったようです。確かに一般の人でも閲覧可能な官報の情報ですから、そのように考える人がいてもおかしくないのかもしれません。
しかし、編集部からは新たな疑問が生まれました。
「そもそも、なぜ国は破産者情報を官報に掲載し、一般へ公開しているのか?」
そこで今回の疑問について、虎ノ門法律経済事務所 池袋支店 齋藤健博弁護士へうかがいました!
Q官報には破産者以外の情報もあるのは承知していますが、そもそもなぜ、一般に破産者情報が公開されているのでしょうか?
A齋藤弁護士:
「官報は、国が発行する広報誌をいい、破産者が公開されるだけではなく、法律が制定されたり、政令などを公布するのに用いられます。実は毎日発行されており、破産者をことさらに開示する目的というよりは、あくまでも国家として公にしておくべき情報を開示しているというのが正しい理解です。
破産者は、もともとの債権者に対する影響の度合いなども大きいものがありますから、適法に決定手続を経た結果として、公開されています。」
主に債権者への影響を考えて、公開されているということのようですね。
Q官報に破産者情報が載ることで、闇金などの業者に悪用されるような例もあると聞きます。
A齋藤弁護士:
「現行では、破産するということは、今までの貸金などの債権を免れる大きな効果を有することから、取引などに悪影響がないように開示されています。国家が正確な情報提供をするという意味では重要な理由がありますが、逆に言えば、プライバシーの温床となっている事実は否定できないでしょう。」
Qそれでもあえて一般に公開するということは、もっと大切な理由があるのでしょうか?
例えば信用情報機関や弁護士、警察などが必要な手続きを行って受理された場合だけ開示するようなシステムでもよいのでは?
A齋藤弁護士:
「このようなシステムを用いることも、法律の制度を変えて、行うことはあり得るでしょう。しかし、実際官報を見ている人がどの程度いるのかと問われると、もちろん実態はあまり見られていません。」
今までは、閲覧規制をかけずとも、必要な機関のみが閲覧するようなものだったために、昔から変わらず運用されてきたということのよう。
今回の「破産者マップ」騒動が、いかに今までの常識を覆す出来事だったかがわかります。
これを契機として、官報の運用が見直される…可能性は0ではないでしょうが、そう簡単ではないでしょう。
この騒動が今後どんな結末を迎えるのか、続報が待たれますね。
*取材協力弁護士: 虎ノ門法律経済事務所 池袋支店 齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)
*取材・文:アシロ編集部
【弁護士に聞いた!】官報で破産者情報を一般公開しているのはなぜ?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
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