「この人痴漢です!」と、あなたの手が急に掴まれて叫ばれたら、その時どういう行動をとりますか?
この時の行動が今後の人生を左右するかもしれません。
「無実を訴える」「走って逃げる」…など、色々な「最善の行動」が提案されていますが、実際どうなのでしょうか。

無罪になるのは0.02%とも言われる痴漢に関する裁判。今回はこの絶望的な裁判に巻き込まれる前に知るべき最善の方法を、シェアしたくなる法律相談所で執筆されている先生の中から8名の先生に聞いてみました。
痴漢に間違われた時「絶対にやってはいけないこと」 弁護士8人...の画像はこちら >>

銀座ウィザード法律事務所
小野智彦先生の場合
状況によりけりでしょう。
全くあり得ない状況で間違えられたのであれば、その場で「自分ではない。」と明確に主張すべきです。隣に居合わせた人に確認をとり、証言をしてもらうこともあり得るので、名刺交換しておくと良いでしょう。
注意すべきは、どんなに仕事の時間が押し迫っていたとしても、その場から足早に立ち去らないことです。
逃げたら、罪証隠滅、逃亡の恐れありとして、逮捕勾留されます。痴漢が行われやすい満員電車では、必ず正義感の強い人が乗り合わせていますので、女性が叫んだら、必ず捕獲されます。
ですので、絶対に立ち去らず、その女性と一緒に駅員なり、警察官なりのところへ同行しましょう。

その際、ご自身の身分証明書、名刺を差し出し、会社や親、顧問弁護士がいればその弁護士に連絡を取って身元を保証してもらい、いつでも出頭して取り調べに応じる旨を述べてください。恐らく、これで逮捕勾留されることはないと思います。
逆に、痴漢と疑われても仕方ないな、という状況の場合は、その場で素直に認めて謝るのが一番です。
自分の連絡先を教えて、示談したいから連絡が欲しいと伝えるか、顧問弁護士がいれば、その場で連絡をし、代理人として示談交渉にあたる旨を伝えてもらいましょう。これで、逮捕勾留されることはないと思います。

高島総合法律事務所
理崎智英先生の場合
まずは、知り合いの弁護士に連絡して、弁護士が現場に到着するのを待ちましょう。
もし、知り合いの弁護士がいなければ、弁護士会に電話をして「当番弁護士」を呼ぶようにしてください。
弁護士が到着するまでは、被疑事実に関する言い分等は何も話さないことです。
その後、弁護士立会いのもとで、駅員や警察に対して自己の言い分を話すようしてください。


星野法律事務所
星野宏明先生の場合
駅事務室に行かず、被害者(と称する方)に捕まえられても立ち止まらず、名刺2枚と免許証を渡して堂々と立ち去る。
駅事務室に一緒に行っても駅員は心理的に被害者の言い分を信じる傾向があります。一度逮捕されると、逮捕勾留中は無罪を理由に身柄解放を求めることができません。
保釈ができる起訴後まで最大23日間警察に入れられますので、逮捕されないようにその場を立ち去ることが重要です。
他人の名刺を2枚持っていることは通常ないので、名刺を2枚渡すことでいったん立ち去ることに同意してもらえる可能性が上がります。
走って逃げると大騒ぎになり、立ち去るのが困難になるので、堂々と歩いて立ち去る方がよいです。

家庭と勤務先がきちんとしている会社員であれば、後日勾留請求されても弁護士に依頼して勾留却下を得られる場合も多いです。立ち去ったら、後日なされるかもしれない逮捕勾留請求を防ぐために、とにかく早く(できればその日のうちに)弁護士に相談してください。

神楽坂中央法律事務所
山口政貴先生の場合
痴漢に間違われた際に絶対にやってはいけないことは、駅の事務室に行ってしまうことです。
その場で警察を呼ばれ、有無を言わさず現行犯逮捕をされてしまいます。家族や会社に連絡する時間もありません。そして、逮捕されると最低でも1か月、長いと数か月は外に出てこられません。

一番お勧めするのはとにかく逃げることです。
そして、逃げ切ったらそのまま隠れるのではなく、その足 ですぐに弁護士のところに相談に行くことです。逃げることによって現行犯逮捕されることがなく、仮に後に逮捕されるとしてもそれまで時間的猶予があるのでいろいろな対策を練ることができます。
もっとも、逃げ切れずに駅員やほかの乗客に追いかけられて捕まってしまう可能性もありますので、逃げ切る自信がない場合は、事務室に行かずホーム上ですぐに弁護士に連絡することです。
とにかく絶対に事務室に行かないこと、早急に弁護士に連絡することの2点が肝要です。

法律事務所あすか
冨本和男先生の場合
痴漢事件の場合、認めれば早期に釈放され(ただし、前科前歴がない場合)、認めなければ逮捕されて勾留されるというのが通常です。


しかし、やっていないのであれば認めるべきではありません。
早急に弁護士を呼んでもらい、弁護士の方から、両手についた繊維と被害者の着衣の繊維が一致するかどうかの鑑定を求めてもらったり、身元が確かなので逮捕・勾留の必要性がない旨主張してもらったりしましょう。
これでも釈放されないかもしれませんが、我慢です。認めたら取り返しがつきません。
また、記憶が鮮明なうちに事件があった時の自身や周囲にいた人の行動を整理しておきましょう。
「走って逃げる」という意見もあるようですが、かえって疑われますし、取り押さえられて怪我をしたり、取り押さえようとした人に怪我をさせてしまう場合もあり、リスクが大きいと思います。

琥珀法律事務所
寺林智栄先生の場合
痴漢と間違われた場合に、私が取るべきと考える行動は、(1)逃げない、(2)最初から(女性に詰問された段階から) 「やっていない」 と言い続けること、(3)できるだけ早い段階から、自分と女性や、駅員、警察官とのやり取りを録音することの3つです。
もちろんこのような対処方法でも、身体拘束されるのを100パーセント免れることができるとは言えません。
しかし、(1)逃げてしまうと、逃亡の恐れがあるとなりかねず、逮捕後、原則10日間勾留されてしまう可能性が高くなります。
そして、(2)一貫して「やっていない」と言い続けなければ、言い分が信用できないとみなされてしまいます。

捜査段階でも、万が一起訴されて裁判になっても、非常に不利になります。
最後に(3)は証拠を残すということです。一貫して「やっていない」と言い続けていたことを裏付けることもできますし、相手の女性が初期にどんなこと を話していた か記録することもできます。

弥生共同法律事務所
寒竹里江先生の場合
その場で逮捕されない場合は、「私はやっていません。」と述べ、走らずに且つ速やかに現場を離脱する。
逮捕された場合は、「私はやっていません。弁護士を呼んで下さい。」と否認しつつ、弁護士を待つ。
理由:逮捕されない場合は、任意同行に応ずる法的義務はないので、速やかに現場を離脱する。
身分証明書の提示などは必要ない。「身の潔白を証明しよう」などと考えて警官等に同行しても、「身の潔白を証明する」手段がない以上、無理矢理自白に追い込まれる危険性大。
逮捕された場合は、自分で説得しようとすると自白に追い込まれかねない。否認を通しつつ弁護士の助言を得る方が安全。

琥珀法律事務所
川浪芳聖先生の場合
痴漢と間違われた場合に最も恐れるべき事態は、女性による現行犯逮捕の状態が警察に引き継がれ、そのまま身柄を拘束されてしまうことです。
やっていないと否認している場合にはほぼ間違いなく駅員室・警察署と連れて行かれてそのまま逮捕となりますので、これらの場所に連れて行かれる前に、その場を立ち去ることが重要です。
ただし、逃げ出そうとすると後々裁判となった場合に「やったから逃げようとした」という不利な心証を抱かれてしまうおそれがありますので、その場で弁護士に電話をして来てもらい、弁護士立会のもとで名刺等を見せて身分を明らかにし、その場を去るのが適切でしょう。

編集部より——–
以上の様に先生によって様々な意見がありましたが、その多くは「現行犯逮捕を避けるために現場から離れる 」というものでした。
急に自分が巻き込まれた時に、実際にこれらの行動をとることはなかなか難しいかもしれません。しかし、いつかのその時のために頭の片隅に置いておいても良いと思います。
今回の記事が、もしもの時に、少しでも参考になれば幸いです。