
このようなプロモーションは、価格競争激化の現れの一つということができますが、消費者には嬉しい面もあるでしょう。新年度を迎え、入社や異動で新生活を始めた人にとっては、少しでも安く家電を買い揃えたいと考えるはずです。
しかし、家電量販店での値下げ交渉も、無制限に許されるわけではなく、やり方によっては犯罪になってしまう場合も考えられます。具体的に紹介していきましょう。
■どのような場合に犯罪となってしまう?
例えば、「〇〇(他店)は、この商品をここよりも1,000円安く売っていた」と確認もせずに嘘をついたり、他店のチラシの値段の部分を書き換えて偽造チラシを店員に見せたりする場合、刑法上の詐欺罪(刑法246条)や、偽計業務妨害罪(刑法233条後段)が成立する可能性があります。
ただし、詐欺(既遂)罪の成立には、利用者の嘘によって家電量販店が錯誤に陥り、値下げに応じてしまうことが要件となります。家電量販店は小売のプロですから、利用者が他店のほうが安かったと言っているだけで、その言葉を信じ値下げに応じることは考えにくいでしょう。したがって、上記のような嘘をついただけでは、詐欺未遂罪が成立する可能性があるにとどまると考えられます。
一方で、他店のチラシを精巧に偽造した場合には、詐欺罪や、それに至らない場合にも偽計業務妨害罪が成立する可能性があるでしょう。