1人につき30~40万円のプチぼったくり、いわゆる「やっつけ」といわれるキャバクラがひしめき合っていた歌舞町。
2014年の年末などは、歌舞伎町交番前には50人以上の客と店のスタッフが料金トラブルで深夜にもかかわらず、交渉のため長時間立っている風景がありました。

料金トラブルが民事であるということで、警察もなかなか手を出せず、その光景が世間でも非難の的となるなどある種の社会問題化していました。

●条例と兵糧責めで攻める警察
そこで、警察としては伝家の宝刀として、いわゆるぼったくり防止条例を積極的に運用し(この条例の面白いところは金額ではなく取り立ての仕方を問題にしているという点です。)、交番で免許証などの名前を確認させれば、それ以上の拘束は条例違反の現行犯として逮捕するという手法から始まり、徐々に客からの被害届で通常逮捕するという手法でスタッフを次々と逮捕していきました。
また、兵糧責めとして交番に相談に来た客を片っ端から新宿警察署の生活安全課に連れ去り、料金はおろか、住所や名前も店には教えないという対応で、店は回収が出来ず、逮捕者のフォローの費用も含め、資金繰りが出来ず苦境に立たされました。

●キャッチの取り締まりも強化
また、ぼったくり店が客を誘因する一番の手段であるキャッチ(客引き)に対しても取り締まりの強化を図り、新宿警察署の生活安全課では、面が割れているということもあり、本庁と周辺の所轄の生活安全課の人員を投入して大量の私服警により、キャッチの取り締まりに当たりました。
連日の逮捕者と兵糧責めにぼったくり店はほぼ撤退を余儀なくされたようです。


●またいつかぼったくり店が席巻する
生活安全課の方と話しましたが、「しばらくは静かな歌舞伎町に戻るでしょうが、ほとぼりが覚めるとまた出てきますよ、きっと!」と、確かに、歌舞伎町のぼったくり店は今に始まった訳ではなく昔から存在するもので、人も流動的ですし、油断が生じ始めるとまたぼったくり店が街を席巻する日が来るのかも知れません。
警察署の皆様には、本当にお疲れ様でしたとの思いでいっぱいの心境です。

*著者:弁護士 小西一郎(聖マグダラ法律事務所。風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律を専門分野とする風俗弁護士として全国を飛び回る。)
*yoshi78 / PIXTA(ピクスタ)