2015年6月16日(現地時間)、スクウェア・エニックスがアメリカ・ロサンゼルスで開催した「E3 2015 プレスカンファレンス」にて、後に『ニーア オートマタ』と命名される「ニーア」シリーズ最新作「NieR New Project」が発表されました。ニーアの新作だ!しかもプラチナゲームズが開発だぞ!これは予想してなかった!――と会場は大きな歓声に包まれ、主要スタッフ陣がステージに登壇。
ディレクターのヨコオタロウ氏らから作品の説明が行われました。今思えば、本作のサプライズはこの時から始まっていたように思えます。

その後、徐々に情報が公開されて行き、2016年4月19日に開催されたコンサート「NieR Music Concert & Talk Live 滅ビノシロ 再生ノクロ」にて実機を用いた「工場廃墟」ステージのプレイが初お披露目。12月には同ステージをプレイできる体験版も配信されました。ところがこの体験版、何とも衝撃的なシーンで終わってしまうのです。

定期的にサプライズを提供してくれる『ニーア オートマタ』ですが、ついに発売日である2017年2月23日を迎えましたので、本作のプレイレポートをお届けします。
ネタバレに関しては事前にスクウェア・エニックスの確認を通しているため“おそらく大丈夫”という状況ですが、なにぶん本作はサプライズの塊です。少しでもネタバレを気にされる方はこのページを閉じることをオススメします。なお、プレイ状況は1周目を終えたところ。画像はPS4(CUH1000型)でキャプチャーしています。

◆伏線から漂う違和感

感情を持つことは禁じられている――主人公「2B」が物語の冒頭に放った言葉です。本作における母なる大地「地球」は突如侵略してきた異星人により蹂躙され、地上ではその異星人が生み出した「機械生命体」と人類が生み出した「アンドロイド」による熾烈な戦いが長く繰り広げられています。
「2B」はそんな膠着状況を打破するために投入された、自立歩行人形「ヨルハ」部隊の汎用戦闘モデルの新型アンドロイド。彼女たちアンドロイドは創造主たる人類の兵器であり、それゆえに感情を持つことは規則上で禁止されているのです。

ただ“禁止されている”ということは“持つことができる”ということ。実際「アンドロイド」たちには自我があり、固体によって性格が異なり、明らかに感情があります。そして感情的なのは「機械生命体」側にも同じことが言えます。例えば「パスカル」という機械生命体は、争いを嫌う平和主義者として同じ志を持つ「機械生命体」と共に平和の道を模索しているのです。


私は主人公に感情移入しやすいタイプなため、「2B」と同じく「感情を持つことは禁じられているんだぞ」というテンションでゲームをスタートします。ところが、他のキャラクターと触れ合っていくにつれて「2B」の表情が柔らかくなっていき、プレイヤーである私自身もどんどん楽しい感情が湧き上がり、気がつけば「禁じられているけどまぁいいか」と思うように。そんな状況で「機械生命体」をバッタバッタと人類様のために破壊していくわけですが、「機械生命体は人類の敵」と分かっていても、心のどこかで「こいつらの感情は本物かもしれない」「少し可哀想だな」と思い、罪悪感のようなものを抱くようになっていきました。

そう思わせることが奴らの作戦だった場合はまんまとハメられているわけですが、どうにもこの世界は何かがおかしい――つまり違和感があるわけです。おそらくこの違和感は「2B」自身も感じていると思われ、コントローラーと画面を通して彼女との繋がりのようなものを感じました。この違和感は複数の伏線から来るものですが、本作のディレクターは『ドラッグオンドラグーン』シリーズも手掛けたヨコオタロウ氏。
伏線が出る毎に嫌な予感が増していきます。しかもその伏線が、何となく「多分そういうことだろう」と想像できてしまうのがまた憎い。おそらく、そういった想像の斜め上を行く展開が用意されているのでしょう。

◆まるで踊っているような爽快アクション

ここからはバトルの話。世界に対する違和感、そして「機械生命体」に対する罪悪感――を抱きながら人類のため戦うわけですが、そんな感覚なんて忘れてしまうほど『ニーア オートマタ』のアクションはよく出来ています。「機械生命体」には大変申し訳ないのですが、見つけた瞬間にボコボコにしたくなるのです。
その魅力を順に説明していきましょう。

まずは武器を2つ装備できること。近接攻撃は□ボタンのスピードアタックと△ボタンのヘビーアタックという2種類があり、それぞれに武器を設定可能です。例えば「小型剣」「大型剣」という2つのカテゴリーがあるだけで「小型剣×大型剣」「大型剣×小型剣」「小型剣×小型剣」「大型剣×大型剣」というバリエーションが生まれ、それぞれの組み合わせによってアクションが変化。武器カテゴリーは他にも「槍」や「格闘武器」があります。しかも武器セットは最大で2つまで設定でき、それを瞬時に切り替え可能なので、アクションの幅はかなり広いのです。


そして回避が万能ということ。一般的なアクションゲームの回避は文字通り“攻撃を回避”するものであり、当然本作でもその役割は変わらず、ジャスト回避からの専用攻撃も用意されていますが、個人的には“攻撃モーションのキャンセル”や“高速移動”といった役割の方が強いと感じました。コンボの手数は組み合わせた武器セットによって異なりますが、基本的にどんなコンボでも回避でモーションをキャンセルすることができ、そこからまた攻撃に繋げることができるのです。これが凄く気持ちいい。特に敵は“機械”ですので、固く、吹っ飛びにくく、数が沢山いる――という特性があり、これらが爽快感を引き立ててくれます。

また60fpsで描画される滑らかなモーションにも注目。ハイスピードでありながらも、動きの始まりから終わりまで、一つひとつのモーションが丁寧に作られています。例えば槍カテゴリーの武器では、コンボ中に石突を爪先でカンッと蹴り上げるモーションが挟み込まれているなど、武器ごとのツボを確りと押さえた動きになっていました。そして戦っている姿はまるで踊っているようで、見ているだけで楽しくなります。

文字や画像だけだと難しいように感じられるかもしれませんが、実際にやっていることは□ボタンと△ボタンを連打しているだけ。それも何となく連打しているだけでそれっぽい動きになり、そこに回避を何となく入れると、さらにそれっぽい動きになりますので、アクションゲームが苦手な方でもご安心を。本作はあくまでもアクション“RPG”です。

◆遊びの自由度が広がるプラグイン・チップ

「プラグイン・チップ」とはいわゆるスキルのこと。「2B」たちはアンドロイドですので、ストレージ容量という概念があり、そこにチップ状のプラグインを挿していけばパワーアップしていくのです。面白いのがそのバリエーション。単純なパラメーターアップはもちろん、自動的にHPが回復する「オートHP回復」、敵を倒した時にHPが回復する「撃破HP回復」、ダメージを受けた後○秒無敵になる「連続ダメージ防止」、武器による攻撃時に衝撃波を発生させる「衝撃波」(いわゆる飛ぶ斬撃)、ジャスト回避後○秒間世界がスローになる「オーバークロック」、HPが○%以上の時に敵から攻撃を受けてもひるまない「耐衝撃制御」など、バトルに関するチップだけでも多種多様で、プレイヤーの手によって様々な組み合わせが誕生しそうです。

チップの組み合わせは最大で3パターンまで設定可能で、足が速くなる「移動速度UP」やミニマップに周辺のアイテムを表示させる「アイテムスキャン」といったものまであるため、例えば「雑魚用」「ボス用」「探索用」という3つのパターンを設定し、状況に合わせて瞬時に付け替えることもできます。

◆オープンワールドな世界

本作のステージはオープンワールドとなっていますが、世界はそれほど広くありません。活動の中心となる「廃墟都市」があり、例えば東に行けば「砂漠」、西に行けば「森」というように、各ステージと「廃墟都市」がコンパクトに繋がっているイメージです。そのため“広大な世界を探検する”といった体験はできませんが、面倒な要素を排除してサクッと探索できるように設計されている印象を受けました。とはいえ、細かく探索しないと分からないような場所にNPCや武器やアイテムが隠されており、同じ道を行き来するだけでも新たな発見があるようになっています。

そんなオープンワールドで展開されるのは「メインクエスト」と「サブクエスト」。特にメインクエストのサプライズと言いますか、“おもてなし感”のようなものが凄まじく、地続きのオープンワールド型アクションRPGでありつつも、ステージによって特色があり、まるで良く出来たステージクリア型のアクションゲームを遊んでいるようなワクワク感を楽しむことができました。それはもはや「○○というステージがある」という情報すらもネタバレになってしまいそうな勢いで、これはサブクエストにも同じことが言えます。そのためあまり詳しくは書けないのです。

ネタバレにならず書ける部分といえば色味でしょうか。本作では敢えて世界全体の色味が抑えられており、それぞれのステージによって異なる表現方法を用いているような印象を受けました。また、攻撃エフェクトやSE、音楽効果も控えめになっており、全体的にシックな世界に。おそらく、ある時「なるほど、だからこういう雰囲気なんだ」と思うことになるのでしょう。

前作で好評だった音楽に関しても名曲揃いで、ぜひヘッドフォンでプレイして頂きたいです。特に「カミニナル」というフレーズの曲は耳から離れなくなります。その意味やどこで流れるのかはまだ言えないわけですが……。

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冒頭でもお伝えしましたが、本稿の内容は1周目を終えた時点のものです。2周目以降にどのような体験が待っているのか、今から楽しみで仕方がありません。それでは「E3 2016」で収録した開発陣インタビューから一部を抜粋し、本稿を終えようと思います。

「『ニーア オートマタ』はハッピーエンド?それとも絶望?開発陣に気になるアレコレを訊いた」より。インタビュイー:プラチナゲームズ ゲームデザイナーの田浦貴久氏、ディレクターのヨコオタロウ氏、スクウェア・エニックス プロデューサーの齊藤陽介

――ユーザーに伝えたいことがありましたらお願いします。

齊藤:絶望ですかね?ヨコオさん。

ヨコオ:あまりこっちで決めるのは好きではないので、色んな要素の中から選択して感じてもらえたらいいなと。結果として嫌なことかもしれないし良いことかもしれないですが、それを選択して、プレイして意味のある作品でありたいですね。

齊藤:前作も人によって捕らえ方が全然違うんですよ。私は比較的ハッピーエンドな気持ちで居たんですが、よく鬱ゲーだと言われ、そういう人もいるんだなと。

ヨコオ:今回はハッピーエンドですよ!田浦さんはどうですか?

田浦:ヨコオさんの狂気が伝わればと……。

ヨコオ:狂気じゃないでしょ、普通でしょ(笑)。

齊藤:いや、あれは狂気だな。

――やっぱりハッピーエンドじゃないんですね……。

ヨコオ:いやハッピーエンドですよ!ほんとです(笑)。シナリオ読んでいるのに適当なこと言いすぎですよ。

齊藤:ここだけは毎回足並みがそろわないですね(笑)

ヨコオ:そうそう、ファンの中にはネタバレを嫌ってゲーム情報見ない方もいらっしゃるんですが、個人的にはネタバレしてても楽しめる作品じゃないといけないと考えていまして、そこは頑張って努力しているところです。

個人的には“話が分かったらやる意味がない”というゲームにしたくなくて、分かっていてもやることに意味があるようなゲームにしたいですね。

――本日はありがとうございました。

……一つだけ言い忘れていました。体験版にはなかったある項目をいじり、特定のアクションを行うと「2B」のスカートが取れますので、ご興味がある方は色々と試してみると面白い発見があるかもしれません。人類に栄光あれ。

PS4ソフト『ニーア オートマタ』は2017年2月23日発売で、価格は7,800円(税抜)です。

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