iOS/Androidアプリ『Fate/Grand Order』第1部を振り返る短期連載最終回。そして本日は大晦日!特番の放送もあり、楽しみですね。
最終回である第9回目の今回は「終局特異点 冠位時間神殿 ソロモン」。最後ということで、気になる点やキャラクターの関係性などを中心に解いていきます。

※『Fate/Grand Order』のネタバレにご注意ください。
※ 書かれているのはあくまでも一個人の推察と解釈です。

◆ストーリーを振り返ろう
第七特異点の聖杯を解析した結果、ソロモンが潜んでいる特異点の座標を導き出したカルデアチーム。その特異点と融合してしまう前に、カルデアの施設ごと敵の領域に乗り上げ、レイシフトで侵入することになりました。
城攻め、魔術王の撃破、敵の領域からの生還というオーダーを達成するべく、ソロモンの元へ向かいます。戦場では今までの特異点で縁のできた英霊たちが登場し、襲い掛かる魔神柱を足止めしてくれました。そして決戦の場にて、ソロモンの中身が魔神柱の召喚式「ゲーティア」が意思を持ったものだということが発覚。自身を“魔神王”と言う彼の圧倒的な力を前に立ち尽くすも、マシュが身を挺して主人公を守り……そしてロマニ・アーキマンが突如現れ、その正体が2004年の聖杯戦争で願いを叶えたソロモンであったことが分かりました。ロマニは自身の指輪を使い第一宝具「訣別の時きたれり。其は、世界を手放すもの」を展開、いわゆる「自爆攻撃」、自身の存在を完全消滅させました。
それにより空間が崩れおちはじめ、ロマニは主人公に世界を救う役目を託します。憤っていたゲーティアも、宝具によって自身の命に終わりができたことにより“人生”を自覚し、その物語に終焉を迎えるべく主人公は最後の戦いに挑むのでした……。

今までのサーヴァントたちが大集合するという熱い展開が続きました。第3節から第9節までは、魔神柱を倒す前、後の2つずつあり、ボリュームもすごかったですね。第1部最後の戦いにふさわしい終わりとはじまりの物語でした。

◆気になる点、第2部につながるのか?
同窓会並みに多くのサーヴァントが登場したこの特異点。
熱いストーリーの中に気になる点もありましたので、あげていきたいと思います。

まずはモーツァルトの「アムドゥシアス」発言について。アムドゥシアスは魔神柱の一柱で、色々なゲームにも登場している悪魔の名前です。モーツァルトは魔術関係や属性が星であったりすることから、怪しいのでは?とファンの間でも言われていました。しかしこの時には、はっきりと「別の誰かが成ったのだろうさ」と言っています。なる可能性もあったようですが、この「別の誰か」というのも引っかかりますね。
音楽系のサーヴァントは一人しか出ていないので、今後何かしら出ることも期待したいです。

次にギルガメッシュの発言。終盤でビーストについて語っていますが「Iが顕れた時点で、終局のVIIはこの世界のどこかに出現しているのだろうよ」と話しています。「あの獣はその循環から脱却したようだがな」はキャスパリーグのことを指していると思われるので、このVIIはまた別の者のようです。そしてギルガメッシュの話から、人類悪は人類をより善くしようとする精神によって顕れるというようなことも言っています。今後も登場するならば、ハードなストーリーとなりそうですね……。


そして特異点Fのサーヴァントが誰も登場しなかったという点。これはファンからも疑問の声が多く、特異点Fには重大な何かがあるのでは?と言われている理由の一つです。特異点Fと他の特異点の違いは聖杯の回収、破壊がされていないことなので、その辺りが原因かなと考えていますが……ちなみに特異点Fでは「水晶体」という名前で出ているものが聖杯かと思われます。あと、今読み返すと、まるで終局特異点は特異点Fの再演のようなんですよね。

あえてだとは思いますが、特異点Fの最終節のタイトルが「グランドオーダー」で終局特異点の第14節は「Fate/Grand Order」。宝具から守りきるマシュの演出、そしてどちらも最後にマシュが「先輩、手を」と言うところ。
宝具シーンは演出も似ています。

他にもネロの頭痛がこの空間でもあったことは気になりますが、他の記事でもビースト説については書いておりますので割愛します。あとクリスマスイベントのエレシュキガルの伏線も8節にあるなど、今だからこそ分かる部分もあったりしました。

次のページではレフやマシュについて……

◆レフ・ライノールとゲーティア
レフの正体は魔神フラウロスであり、一見悪役。実際“悪”なのですが、悪という一言では言い切れない、ある意味一番どうにもならなかった人物でもあります。『Fate/stay night』でいう言峰綺礼の存在に似ているような……筆者もそうですが、第一印象「言峰」という人もいたのではないでしょうか?『Fate/stay night』で死ぬ運命から外れられないのが言峰綺礼ならば、『FGO』でその運命を与えられてしまったのがレフ・ライノールなのかもしれません。

レフは『FGO』のシナリオの他にも、マンガ「MELTY BLOOD 路地裏ナイトメア」と小説「2015年の時計塔」などに出てきます。「2015年の時計塔」については明確にレフ・ライノールではないのですが、内容や登場する単語から『FGO』に全く関係ないとは言えない内容なんですよね。「路地裏ナイトメア」についてはオルガマリーも登場していますので、気になる人はぜひ読んでみてください。

そんなレフは終わりまで迷いがあった一柱であり、魔神柱として最後の最後に活動停止をしました。さらには奈須きのこさんの「竹箒日記」に、早い段階で人間に感情移入し、マシュに感情移入をしていたのも……ということが書かれています。レフは二年限定でマシュの魔術部門の恩師だったので、以前は先生と生徒という立場だったようです。プロローグでは「断りもなしで移動するのはよくないと……」とマシュに言っているあたり、オルガマリーから見張っておけと言われていたのかもしれません。そう思うと、一緒にいる時間も多かったのではないかと思われます。魔神柱を自覚したのが2015年なので、それまでは普通に過ごしていたのでしょう。この辺りは、1.5部の新宿と似ている部分もありますね。

さらに終局特異点のアバンタイトルでは、ソロモンが「魔神フラウロスから君の話は聞いていた」とマシュに言っているので、気にかけていたことがよく分かります。しかしソロモンがそれまでにもマシュに声をかけたり、夢などに介入していたので、ゲーティア自身へかなり影響を与えていると言えますね。そのゲーティアは最期までレフの迷いの影響で、ヒトの理解者がほしいとマシュを生かそうとしますが……それまでの発言とは一変、まるで人間のような心の動きと台詞でした。こうしたマシュを思うという人間的な部分を構築したのがレフなのだと思います。そしてマシュが消えた後に「貴様の気持ちは理解できる」という発言、殴りかかっていいとも言いました。ゲーティアとレフは、七十二という魔神柱がいるので完全なイコールではないものの、限りなく近い存在だったのではないかと。

終局特異点ではゲーティアのモノローグが度々出てきましたが、マシュを「ただの、ごく普通の女の子だったんだよ」と表した言葉に本当に驚きました。もしかしたらマシュを一番理解していたのは、ずっとその旅を見続けていたレフとゲーティアだったのかもしれません。まるで主人公のようです。上記でも言いましたが、ギルガメッシュの発言では、「人類悪は人類を善くしたいと思うもの」。「人類愛」なんて言葉も別の章で使われていましたね。もし人類を救いたいと言う意思を持つものが主人公/ヒーローに成りうるならば、人類悪は主人公/ヒーローに成れたはずの誰かの成れ果てなのでは?ただ、ここでは“生きたい”というごく普通の願いを持つ人間が主人公に成っただけの話で、視点が違ったというだけなのかもしれません。

◆ドクター・ロマンとマシュ・キリエライト

ロマニとマシュについてですが、ロマニはカルデアに赴任しても、しばらくマシュのことを知りませんでした。マシュがデミ・サーヴァント実験により体調を崩したため、マリスビリーに助けを求められてようやく知ります。ロマニが「初めまして」と言っている回想の時期が2012年と思われるので、マリスビリー死亡前後にマシュと初めて対面している可能性がありますね。なので1部が終わっていない頃に、マリスビリーを殺害したのはロマニではないかと勘ぐっておりました。それも今では笑える話ですが……。カルデアについては別記事でも掲載予定ですのでぜひそちらも読んでみてください。

マシュは2年と短い年数ですが、カルデアに勤務していました。色々な人とも関わっていたらしいということが、2部プロローグで登場したAチームのマスターの話からも分かりましたね。ダ・ヴィンチは、序盤でマシュが初対面のような反応でしたが、「マシュは相変わらず物わかりがいい」と言っているので、別の姿の時にあっているのかもしれません。そう思うと、マスターとの旅で色々なことを学んでいるのはもちろん、それまでに関わった人たちの存在もマシュにとって大きいのではと。「名乗るほどのものではない」「ほぼワニと同義」という言葉のセンスは、書物やそれまでに出会った人々の影響ならどういう教育をしたんだと思ってしまいますが……。

しばらく無菌室の中で生活していたマシュに、一番身近な存在として写っていたのはロマニでしょう。ロマニとマシュは親子のような兄妹のような関係にも見えますが、血の繋がりはもちろんなく、似ていません。でも最後の最後に「二人はこんな所が似ていたんだ」と驚いたところがあります。マシュはロマニに「自分を過小評価しすぎ」と叱咤激励したり、度々似たようなことを言っていました。でも、マシュは「悔しいです」背を向けて言った後に「最後に一度くらいは、先輩のお役に、立ちたかった」と。この台詞を見た時の気持ちは言葉にできません。一番自分を過小評価していたのはマシュだったんです。その時のマシュの思いが、マシュが自分の生を肯定した事が、ロマニの覚悟を決めることになりましたが……ここが話の妙と言うか。ロマニはマシュの死を知っても生は知らず、マシュはロマニの死を知らず生を得ました。だとしても、本物の青い空をマシュが見たことは、ロマニの願ったことのひとつではないかと。

そういえば、この物語は主人公がマシュの手を握ったことから始まりました。だからこそマシュは、自分の物語の終わりに手を握ってほしかったのかもしれませんね。

◆まとめ
この章はひたすらに一個の選択肢が多かった印象ですね。完全に意思を委ねている感じで自由がないなぁと思ったこともありましたが、よくよく考えれば「進む」という選択肢が与えられていました。スキップもできるし、ゲームの電源を切る事だってできましたが、進むことを選んだのはプレイヤー自身。たくさんのアプリゲームがある中で『FGO』を選び、最後まで進めたマスターたちだけが得られるもの。それが2016年の末にあったのです。

ということで、「第1部を改めて振り返ろう」短期連載、いかがでしたでしょうか?こんな過酷な企画をどうしてはじめてしまったのだろうと頭を抱えましたが、第2部が始まる前に最後の記事が終わって良かったです。ここまで読んでくださりありがとうございました。筆者はこの後知性も特性もなくなりますが、年明けに掲載する『FGO』記事も準備していますので、そちらも楽しんでいただければ幸いです。皆様、良いお年を!

■過去の連載はこちら

●『FGO』一体どうなるの?全員怪しすぎて頭を抱える第2部を徹底推察【特集】

●『FGO』第2部の前にストーリーを振り返る~第七特異点バビロンの巻~【特集】

●『FGO』第2部の前にストーリーを振り返ろう~第六特異点キャメロットの巻~【特集】

●『FGO』第2部に向けて第1部を振り返る~第五特異点イ・プルーリバス・ウナムの巻~【特集】

●『FGO』第2部の前にストーリーを振り返ろう~第四特異点ロンドンの巻~【特集】

●『FGO』ネタバレ有りで振り返る第1部~第三特異点オケアノスの巻~【特集】

●『FGO』ネタバレ有りで振り返る第1部~第二特異点セプテムの巻~【特集】

●『FGO』ネタバレ有りで振り返る第1部~第一特異点オルレアンの巻~【特集】

●『FGO』第1部を改めて振り返ろう~特異点F・冬木の巻~【特集】

©TYPE-MOON / FGO PROJECT