アクション性の高いゲームをはじめ、様々な代表作で知られているヴァニラウェア。近年ではアトラスとタッグを組むことが多く、美麗なグラフィックや爽快感溢れるプレイ体験などが好評を博しています。


そんなアトラス×ヴァニラウェアの最新作となるのが、2019年秋に発売が決定したPS4ソフト『十三機兵防衛圏』です。本作は、2015年9月に実施した「SCEJA Press Conference 2015」にて正式発表。同時に公開された第一弾PVと共に、ゲームファンの注目を集めました。

その後、「2017 PlayStation Press Conference in Japan」にて第二弾PVを公開し、「東京ゲームショウ2017」ではステージイベントを実施。発売時期の変更などもありましたが、2019年3月14日に、本作が持つ魅力の一部に触れられる『十三機兵防衛圏 プロローグ』の発売へと至りました。

前述の通り、本作に関する映像などは何度かお披露目されてきましたが、ゲームの内容や設定面については伏せられている点も多く、謎めいたタイトルでもありました。
ですが、『十三機兵防衛圏 プロローグ』を通じて、主人公たちが置かれている状況や、本作がどのような物語を展開するのか、その一部が見えてきました。

そこで今回は、『十三機兵防衛圏 プロローグ』で気になったポイントや、ヴァニラウェアが生み出す魅力がどのような形で継承されているのか、気になった6点に絞ってチェックしてみました。『十三機兵防衛圏 プロローグ』と製品版には差異があるかもしれませんが、ひとつの参考にしてもらえれば幸いです。また、物語上のネタバレなどには触れないので、その点についてはご安心ください。

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◆職人芸が光る美麗なグラフィック! 研ぎ澄ませた2D表現に見惚れる

ヴァニラウェアの作品は常に、魅力的なグラフィックを伴っていました。ファンタジー世界を描くことが多く、和・洋を問わずオリジナリティの高いデザインをベースに、こだわり抜いたグラフィックで没入感を促進。
見ているだけでその世界に引き込まれる力強さを放っています。

本作は、詳しくは後ほど改めて言及しますが、現代に近い日本(1985年)が主な舞台となっています。今現在と比べるとクラシカルですが、ファンタジーとは一線を画しており、「ヴァニラウェアが現代日本を描くとどうなるのか」という点も注目ポイントのひとつでした。

そんな好奇心を抱いたまま『十三機兵防衛圏 プロローグ』を開けてみれば、予想を上回るような美麗な昭和時代が本作の中で展開。古めかしい木造の校舎、昭和を感じさせる街並み、樹木から小道具のひとつひとつまで、まさに微に入り細を穿つような出来映えでした。

また、文章では非常に伝えにくい点ですが、音楽との融合も見事のひとこと。
その一体感は、演出面も含め、非常に高い完成度となっています。美しい世界を、ビジュアルと音楽で描くヴァニラウェアの真髄は、『十三機兵防衛圏 プロローグ』にもしっかりと受け継がれていました。

◆豊かなのは表情だけじゃない! モーションと相まって、雄弁な“表現”を実現

引き込まれるのは、グラフィックだけではありません。キャラクターたちの表情も素晴らしく、台詞だけでは伝えきれない感情をより豊かに描いています。喜びや怒りといったベクトルの強いものはもちろん、苛立ちや戸惑いといった微妙な変化も数多く用意されており、各キャラの感情がダイレクトに伝わるほどです。

また、雄弁なモーションの数々にも目を奪われます。
ひとつひとつが滑らかなのはもちろん、それぞれのキャラクター性に合った動きが盛り込まれているので、台詞がないのに彼らの想いが伝わってくる場面もあるほど。

表情と動きの相乗効果で、プレイ中の感情移入度は増すばかり。絶望的な状況を感じさせる世界ですが、だからこそ「助けたい!」という思いが自然と沸き上がってしまいます。と同時に、その表情とモーションの変化を見逃したくなくて、ついついシェアボタンを押す指に力が入ってしまいました。製品版をクリアするまでに何枚撮ってしまうのか、今から恐ろしいばかりです・・・!

13人の主人公たちが時間を超えて絡み合う、濃密なSF群像劇!

◆舞台は1985年・・・だけじゃない! 過去と未来が交錯する物語に引き込まれる

本作の起点となるのは、1985年時点のとある学校。ですが、その物語が進んでいくと、描かれる時間軸は拡大していきます。
あまり詳しく書くとネタバレになってしまうので、大まかな話となりますが、更なる過去や、現代日本すら飛び越す未来とも関わりがあり、厚みのある物語が展開します。

少なくとも『十三機兵防衛圏 プロローグ』の段階では、各時代の移り変わりは自動的に進行し、任意で切り替えるようなゲームシステムはありません。ですが、物語上で密接に噛み合っているのは間違いなく、“単なる別の時代”ではなく“直接関連する過去と未来”と言えます。

『十三機兵防衛圏 プロローグ』は、一通り遊んでも数時間程度のボリュームですが、そのプレイ中だけでもあちこちの時代に跳び、多彩な情報や謎めく状況に直面します。この密度が製品版でどうなってしまうのか、大きな期待を抱くと共に、時間泥棒の気配をひしひしと感じます。

◆異なる立場、異なる想いを持つ13人の主人公─意外な関係に驚くことも!?

本作の主人公は“13人の少年少女”たちですが、全員が同じ立場や状況に置かれているわけではなさそうです。
「機兵」と呼ばれるロボットに乗り込む搭乗員という共通点こそあるものの、少なくとも『十三機兵防衛圏 プロローグ』を遊んだ時点の感想としては、各主人公にそれぞれの境遇があり、交錯や繋がりこそあれ、ひとつに結束するのかはまだ判別つかないといった印象です。

その一方で、“関わり”については奥深く、主人公たちは、別の主人公を含め、多数の人物と接点を持ちます。物語を読み進めていくたびに広がっていく人間関係は、プレイヤーの驚きや意外な過去を伴うことも。プロローグ版だけでも人間関係図はかなり多岐に渡っており、壮大なSF群像劇を予感させます。

世界の危機という軸を持つ物語の上を、13人の主人公たちが折り重なるように交錯していく様は、時に複雑に絡み合い、更なる謎や衝撃的な展開を招くことも。その全てを解明するためには、まずは製品版の登場を待つほかありませんが、この絡み合った糸の全てが解かれる時には想像以上の心地よさを得られることでしょう。そこに、悲劇の涙が加わるのか、安堵の歓喜が加わるのか。その結果を知る日が待ち遠しいばかりです。

ゲームシステムもチェック! 「クラウドシンク」が物語の鍵を握る

◆重要なキーワードが物語を動かす「クラウドシンク」

プロローグ版で明らかとなったのは、美しい世界や厚みのある群像劇だけではありません。ゲーム進行に欠かせない「クラウドシンク」というシステムの存在が明らかとなりました。この「クラウドシンク」は、主人公が見聞きした言葉や情報などをキーワードとして記憶し、そのことについて考えたり、誰かに尋ねたりできるシステムです。

全ての単語を相手に尋ねられるわけではありませんが、逆に必要な単語が自動的に絞られている状態でもあるので、ADV系のゲームが苦手な方もご安心ください。また、各単語について考えることで、情報の再確認や各キャラの考え方・性格を窺うこともできるなど、様々な利点があるように感じました。

これは完全な想像ですが、この「クラウドシンク」の使い方次第で、物語の流れや結末が変わるようなシステムが製品版にあるかもしれません。「クラウドシンク」が『十三機兵防衛圏』のプレイ体験をどのように広げてくれるのか、今から楽しみです。

◆エピソードクリアで、他のキャラが選択可能

これもプロローグ版だけのシステムかもしれませんが、ゲーム開始当初から全ての主人公を選択できるわけではありません。最初は、チュートリアルを兼ねる「鞍部十郎」のプレイから始まり、彼のエピソードをクリアすることで新たに3人のキャラが選択可能に。そしてこの3人を全てクリアすると、更に選択可能キャラが増え・・・といった形で広がり、最終的に13人の物語を一通りプレイできるようになります。

プロローグ版における各主人公のエピソードは、それはど長くはないため、各キャラの物語をテンポよく楽しむことができます。ですが、製品版のボリュームで一キャラの最初から最後まで一気にクリアするというのは、少々大変かもしれません。

製品版は、例えば章毎の構成などで区切られ、短めのスパンで切り替わる流れで全体のサイクルを作るのか。または、各主人公を任意で切り替え、様々な場面で「クラウドシンク」の単語を集めて進めるようなゲームになるのか。もしかしたら、プロローグ版とは全く異なるゲーム進行になる可能性もあります。

現段階では想像するほかありませんが、どんなゲームになるのか期待を込めて推測してみるというのは、詳細がまだ不明な今だからこそできる楽しみ方のひとつかもしれませんね、

気になったポイントは、6選だけじゃ収まらない!? お馴染みの要素からまさかのサプライズまで

◆気になる点はこのほかにも! ヴァニラウェアらしいポイントや続報が気になるマル秘情報も!?

『十三機兵防衛圏 プロローグ』で気になった大きなポイントは、これまでに紹介した6点ですが、このほかにも関心を惹かれたところは多々あります。まずは、“ご飯を美味しそうに描写する”ヴァニラウェア作品の血脈は、本作にも受け継がれています。

「おはぎ」を渡すシーンは、残念ながら風呂敷に包まれており、その美味しいビジュアルを拝むことができませんでした。しかし、包まれているからこそ、想像力が余計に刺激されます。製品版には、あの包みが解かれるシーンはあるのだろうか・・・!?

そしてもうひとつ、「焼きそばパン」がプロローグ版に登場。こちらは、そのフォルムなどもしっかりと描写されています。具となる焼きそばだけじゃなく、添えられた紅ショウガまでしっかりと分かるレベル。本作でも、ヴァニラウェアの“飯テロ”を食らいそうです。『十三機兵防衛圏』を遊ぶのは、しっかり食べた後にしましょう!

またヴァニラウェアのゲームは、ビジュアルを堪能できる初回特典などが付属することも多々あります。『十三機兵防衛圏 プロローグ』は様々な形で発売・配信されていますが、その中のひとつ『十三機兵防衛圏 MUSIC AND ART CLIPS』にはビジュアルブックが付属。

このビジュアルブックは、本文34ページ(表紙、裏表紙含まず)の冊子となっており、各キャラクターのビジュアルや作中のシーンを見開きで紹介しています。また、機兵や敵なども掲載。気になる情報としては、各機兵の搭乗者が記されている点でしょう。どの機兵に誰が搭乗するのか、知りたい方はビジュアルブックをチェックしてみてください。

ちなみにプロローグ版では、恐るべき敵と機兵の戦いは全てADV形式で表現されており、今のところ、ゲームシステムでバトルを表現するといった要素はありません。製品版も同様なのか、それともシミュレーションパートのようなものがあるのか、続報に注目したいところです。ちなみにセガの製品情報サイトには、「機兵による戦闘シーンも」「街を護るためには、複数の機兵が力を合わせる必要がありそうだ」といった一文が。そのシチュエーションをどのように描くのか、こちらも気になります。

そして最後の気になるポイントは、全エピソードクリア後に開放される「EXTRA」について。この「EXTRA」では“シークレット映像”が視聴可能。そして、この映像の詳細については、『十三機兵防衛圏』完成後に発表する予定とのこと。気になるシークレット映像が見られるのも、このプロローグ版を体験した人だけの特権です。

『十三機兵防衛圏』の断片だけでなく、嬉しいサプライズ映像も飛び出した『十三機兵防衛圏 プロローグ』。興味が惹かれた方は、ぜひプレイしてみてください。製品版までグッと我慢するのも手ですが、その魅力を垣間見られるのも贅沢な楽しさのひとつに違いありません。プレイ時間と懐に余裕がある方は、是非!

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