国内でも指折りの人気を誇る「ガンダム」シリーズの最新作として、TVアニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」が現在絶賛放送中です。過去作の多くでは、戦争や紛争などを通じて描かれる人間ドラマが主軸でしたが、本作は学園を舞台としており、これまでとは一味違う雰囲気の「ガンダム」作品として注目を集めています。


国家よりも企業の力が強く、その影響は学園にも色濃く及んでいますが、決められたエリアで行われるモビルスーツ同士の戦い──「決闘」はパイロットの生死を問うものではなく、迫力溢れるバトルシーンを展開しながらも、過去作が持つ戦いの重みとは異なる意味合いになっています。

そのため、この「水星の魔女」はいわゆる学園モノとも受け止められる作品になっており、学生である少年少女たちの青春群像劇を描く一面が印象的です。特に、健気ながら内向的でコミュニケーションが苦手な主人公「スレッタ・マーキュリー」と、父親に敷かれたレールに抗おうと奮起する「ミオリネ・レンブラン」との関係性は、行き違いや誤解を挟みながらも距離感を縮めていき、視聴者の関心を大きく引く魅力的なポイントと言えるでしょう。

現時点では第11話までの放送が終わり、1月8日に第1クール最終回となる第12話を放送予定。どのような結末が訪れるのかまだ分かりませんが、その締めくくりと同じくらい気になるのが、予定されている第2クールの展開です。

第2クールの詳細はまだ明かされておらず、正確な情報は公式の発表待ち。しかし、これまでの展開とあるゲームソフトを重ね、今後の展開に恐れを抱いている一部の方々がいます。そのゲームの名は、『ファイアーエムブレム 風花雪月』(以下 風花雪月)。果たしてこのゲームと「水星の魔女」をどのように結びつけているのでしょうか。

■そもそも『風花雪月』ってどんなゲームなの?
『風花雪月』は、戦略シミュレーションにRPGの要素を加えた『ファイアーエムブレム』(以下、FE)シリーズに名を連ねるゲームです。2019年に発売されており、今も多くのファンたちがこの作品を力強く支持しており、SNSなどでもたびたび話題に上がります。

『FE』シリーズの世界観はファンタジーなので、この点は「ガンダム」シリーズと真逆です。
しかし、作品のほとんどで戦争や戦乱を描いており、一度失われた命は取り戻せない過酷さ(ゲーム設定や特別な条件を除く)を正面から描く姿勢などに、共通点が垣間見えます。

また、これまで戦争を描き続けてきた『FE』シリーズですが、『風花雪月』では「学園の日々」を綴る作品に一転。主人公は教職につき、それぞれの国ごとに分かれた3学級のいずれかの担任として少年少女たちを導き、成長を見守るゲームになりました。

『風花雪月』の学生たちはそれぞれ立場が違い、皇女や貴族、庶民など千差万別。「水星の魔女」の生徒たちも、大企業の子息がいる一方、スレッタのような過酷な環境(水星)からやってきた者もいます。また、スペーシアン(宇宙生まれ)とアーシアン(地球生まれ)といった差別構造が根付いていることも窺わせます。

一般社会なら、その格差や差別によって生活圏すら重ならない者同士です。しかし、学園という枠の中で身近に存在し合い、対等とは行かずとも言葉を交わすこともできる環境下にあるという点で、「水星の魔女」と『風花雪月』は近しい構造にあると言えます。

その身分・立場を超えた交流からドラマが生まれていく群像劇は、少年少女だからこその純粋さを伴い、どちらの作品でもその日々が眩しく輝いているのです。

■『風花雪月』で味わった、学生編の次に訪れた悲劇
そんな輝かしい日々があるからこそ、『風花雪月』を知るゲームファンは、「水星の魔女」の第2クールに恐れを抱いています。というのも、『風花雪月』は2部構成のゲームで、第1部は先ほど触れた通り学生編です。そして第2部では、それぞれが身を置く国同士が戦乱に臨む戦争編を展開しました。


しかも、単に「それぞれの国が戦争状態に突入した」だけではありません。各学級の生徒たちはいずれも、その身を戦場に投じます。そもそも学級の長である級長たちが、この戦争を率いる立場にあり、主導的に戦いを進めています。

その結果、かつて同じ学び舎で育った者同士が戦場で対峙し、互いの命を奪うべくその武器を振るう惨劇が訪れました。自軍の命を救おうと思えば、敵軍の命を奪うしかない。その過酷な選択は、元生徒同士の間でもなんら変わりはありません。

主人公もまた、担当した学級の国に所属し、かつて同じ場所にいた元生徒たちと刃を交えます。シミュレーションRPGなので、ユニットを動かすのはプレイヤー自身。ある意味、プレイヤーがかつての生徒たちを直接殺める判断を下す形でもあるのです。

こうした衝撃的な展開を突きつけられたプレイヤーは、第2部で描かれた戦争編の重みに翻弄されました。しかし『FE』シリーズは元々、「不可逆な死」を通して「命の重さ」を描いてきたゲームシリーズ。『風花雪月』もまた、例外ではなかっただけです。


■「水星の魔女」は『風花雪月』と同じ道を辿るのか!?
「水星の魔女」は第2クールの放送が決定しています。その内容がどうなるか、それ以降の展開(例えば劇場映画など)はあるのか。いずれもまだ明らかになっておりません。ですが……いえ、だからこそ、『風花雪月』で「学生編からの戦争編」という衝撃を味わったプレイヤーたちが、「水星の魔女」にその構成を重ね、「第2クールで戦争編が来るのでは」と恐れを抱いています。

また、ペイル社の「ザウォート・ヘヴィ」、ジェターク社の「ディランザ・ソル」、グラスレー社の「ハインドリー・シュトルム」などのプラモデル化が決定していますが、これからはいずれも「実戦用モビルスーツ」とのこと。こうした事前情報も、「今後“実戦”があるのでは」と予感させるひとつの要因と言えます。

もちろん、戦争を描くこと自体が悪いわけではありません。また、『風花雪月』の戦争編も衝撃的でしたが、プレイヤーがそれを否定的に捉えているわけではなく、むしろ作品としての魅力として理解しています。ただ、戦争の重みや命を失う辛さを描くドラマが胸に刺さり、その痛みを今も忘れられないだけなのです。

感情を揺さぶられる場面は多数ありましたが、ここまでの「水星の魔女」は学園モノという形に収まっていました。学園モノだからこそ描けた交流や心のふれあいもあります。だからこそ、その雰囲気もままでいたい……と望むのは、ごく自然な話でしょう。


ようやくスレッタとミオリネの関係性も落ち着きを見せ、互いにとって良い場所であろうとしています。そんな純粋で無垢なふたりと、この学園で育った多くの生徒たちは、第2クールで戦争に巻き込まれてしまうのか。はたまた、『風花雪月』が辿ったものとは異なる道を歩んでくれるのか。そのヒントが、1月8日の放送で示されるかもしれません。

(C)創通・サンライズ・MBS
編集部おすすめ