1~2歳くらいの子どもで強く泣いたあとに息を止めてしまい、場合によっては意識を失ってしまうような状態になったという経験をお持ちのママはいませんか?
これは「憤怒けいれん」という症状です。
憤怒けいれんは別名「泣き入りひきつけ」、英語ではbreath-holding spells(一時的な息止め)といいます。
憤怒けいれんを初めて経験したママは、強い不安に襲われるでしょう。そこで、今回は小児科医である筆者が、憤怒けいれんについてお伝えします。
憤怒けいれんは生後6ヶ月から2~3歳ごろに見られ、全体の半数が生後6~12ヶ月で発症します(※1)。
新生児の発症も報告されていますが、頻度は多くありません。
憤怒けいれんの頻度は、乳幼児の数パーセントと言われています(※1)。
軽症例を含めれば、比較的多い疾患です。
一般的な症状としては、一時的に呼吸を止める程度です。
全身を反り返らせて白目になるような、いわゆる“けいれん状態”に至るような、とても重症な場合は限られています。
ですので、英語名であるbreath-holding spells(一時的な息止め)のほうが、筆者はしっくりくる名前なのではと感じています。
憤怒けいれんは、痛みや不安などで強く「わーっ!」と泣いて、泣き切ったあとに呼吸が停止します。
このとき、「チアノーゼ」という顔色が悪くなる症状がみられますが、軽い症状であれば短時間でまた泣きだします。
また比較的強い症状であれば意識を失ってしまうことがありますが、すぐに意識は回復します。
重症例であれば強く泣いて呼吸がとまった後、“けいれん”することもあります。
いずれにせよ、一般的にこれらの発作は1分以内におさまります。重症例では1分以上続く場合もありますので、子どもの様子を見守って下さい。
憤怒けいれんの原因は?治るの?憤怒けいれんには2つの原因があるとされます。
1つは、強く泣くことで胸腔内圧(きょうくうないあつ)が上昇し、心臓が圧迫されてうまくポンプの機能を果たせなくなり、脳血流が落ちるというもの。
もう1つは、痛み刺激や怒り、驚きが原因で迷走神経反射が起こり、心拍が停止し脳血流が落ちるというものです(※2)。
難しい単語が並んでいますが、どちらの原因であっても、心機能が低下して脳血流が落ちるという過程は同じです。
こうやって書くと、憤怒けいれんのメカニズムはなんだか怖そうに思うかもしれませんが、予後は一般的に良好です。
憤怒けいれんの「治療」は?息を止めてしまった場合、特に何もしなくても呼吸は再開します。
ネルソン小児科学には、“親に対しては、小児が憤怒けいれんを起こしても無視するようにアドバイスする”とまで書いてあります(※3)。
さすがに無視することは心情的にできないと思いますので、優しく背中をさすってあげることはしていいと思います。
また、ネルソン小児科学では、“タイムアウト法”というしつけを推奨しています(※3)。
タイムアウトとは、ものごとを一時中断し、冷静に状況を確認することで、憤怒けいれんのときの対応として、以下3つを心がけて下さい。
・静かな場所に子どもを移動させる。
・子どもを1人にして落ち着かせる。
・しかし、親の目は届くようにする。
いかがでしたか?
憤怒けいれんを経験したママは、子どもが強く泣くことに恐怖を感じるかもしれません。
この記事で、ママの不安が少しでも軽くなることを願います。
【参考】
※1 Q6:泣き入りひきつけは何故起こるのですか? – 日本小児神経学会
※2 泣き入りひきつけの対処法を教えてください。 – 日本小児神経学会
※3 Robert M. Kliegman 他(2015)『ネルソン小児科学 原著第19版』2015
※ 憤怒けいれんとタイムアウトというしつけ。 – 笑顔が好き
※ Maja Marjanovic , Mcimage / Shutterstock