離職率28%だったサイボウズは、どうやってブラック企業から生まれ変わったのか

離職率28%だったサイボウズは、どうやってブラック企業から生まれ変わったのか
サイボウズ社内の様子
 「生産性の前に働く人の幸せ」の考えをベースに、第2回では、「やってみよう」因子を刺激し、チームで新たな価値を「生む」ことに触れました。

 そんなことを言うけれど、あなたは実践できているのか? そう思う読者の方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、なぜ「生産性の前に働く人の幸せ」という考えに至ったのかを、私が勤めるサイボウズの事例をもとに紹介します。

 今から13年前(2005年)のサイボウズは、創業して8年目、社員が83人という、いわゆるベンチャー企業でした。ただしその年、社員23人が退社し、離職率が28%となりました。どんどん社員は辞めていくが、業務は山のようにあり、休日出勤も常態化しているといった、いわゆるブラックな労働環境にありました。

 それが最近では、働き方改革といった視点で海外からも注目をいただく会社になりました。あまりの変わりようなので、当然ながらこの話をすると、どうやってブラック企業からホワイト企業になったのですか、という質問を多くいただきます。

 振り返れば、私たちは「働き方改革をしよう!」とか、「生産性を上げよう!」と言ったことは一度もありません。結論を先に言えば、社員一人一人がどうすれば働きやすいかということを考え続け、その後の13年間、さまざまな取り組みを続けてきた結果として現在があるだけです。

●オンラインでの情報共有量の膨大さ

 サイボウズに中途入社された方が必ず驚くことの1つに、「オンラインでの情報共有の密度」があります。社内では、社長のみが知っている情報はほとんどなく、全社員にあらゆる情報が公開されています。

 会議の議事録や営業の案件管理、部活動の報告、近隣のお得情報や社員のつぶやき、イベントの実況中継……など、仕事に関係あることからないことまで、ありとあらゆる情報がオンライン上で交わされており、コメントや「いいね!」を付け合って活発にやり取りをしています。例えるなら、まさにTwitterのタイムライン状態。社員には常に何かしらの通知が来ています。すべて見ることはほぼ不可能ですが……。

 一般的な会社では、入社してからその会社の風土や文化を知るまでに、半年~1年ほど時間がかかると思います。周りの同僚と少しずつ仲良くなって情報収集していき、社内でのやり取りなどを知っていく流れがほとんどでしょう。しかしサイボウズの場合は、オンライン上のやり取りを読んでいるだけで、「この会社ではこういうことが重視されるのか」とか「こういうケースはこんな結論になるのか」といったことが分かるので、1カ月もいれば会社の特徴がだいたい分かります。グループウェアが高速で風土や文化を学習する装置となっているのです。

 なぜ皆が書き込むのか――。基本は、オンラインに情報を残してノウハウを共有することが目的です。口頭で話したことも、1対1のコミュニケーションで終わらせるのではなくチームで状況を認識するために書き込みます。部署や拠点が離れていても、グループウェア上に現状や背景が書かれているので、いざというときに助け合えます。まさに、場所と時間を問わずチームになれるのです。

 とはいえ、サイボウズをご利用いただいている企業の中でも、ここまで使いこなしている組織はまれです。「自分の意見を書き込むのは難しいです」と言われることもよくあります。

 仕事の情報を共有することと、自分の意見を書き込むことは別のことだと思っている人が多いようです。

 前回のコラムにも書いた通り、自分の意見を言わずして、活発なコミュニケーションが成り立つことはありません。「誰も意見を出してくれないんだ」と悩むマネジャーも多いと聞きます。「意見を言えない」「意見が出ない」という悩みは表裏一体のように思えます。

どうしたら、こうしたことがなくなるのでしょうか。

●「質問責任」と「説明責任」で、もやもやを解決する

 サイボウズ社員が必ず守るルールの1つに、「質問責任」と「説明責任」があります。質問責任とは、「もやもやしたことは必ず聞かなければならない」ということ。分かりやすく言えば、もやもやを居酒屋などで愚痴るのではなく、「この人なら答えてくれそうだ」という人に必ず聞こう、ということです。

 そして、聞かれた人には説明責任が生じます。説明責任とは、「聞かれたことは答えなければならない」ということ。「自分では分からない」も含めて、誠実に答えることを要求します。分からなければ、分かってそうな人に一緒に尋ねに行きます。

 700人以上が働くサイボウズほどの企業規模の場合、このルールだと、尋ねる相手の2~3人目には社長に行きつきますので、最終的には、社長に説明責任が生じる形になります。

 説明責任は重要です。説明責任が果たされると、「自分の疑問に応えてくれる」という安心感が湧き起こり、信頼関係が生まれます。逆に、説明を求めた人に軽くあしらわれたり無下にされたりすると、質問をした人は2度と質問をしなくなります。

 このルールを実直に行うことで、コミュニケーションの安心安全の場が保たれ、自分の意見を出すことのハードルが下がっていきます。サイボウズのコミュニケーションが活発なのは、各個人がもやもやを放置することなく、何でも質問したり意見を言ったりして、そのもやもやを受け止め対処するやり取りが、ところどころで見られるからなのです。

●もやもやに、いちいち対処する≒多様性を実感し、選択肢を増やす

 この質問責任と説明責任を愚直に実践すると、1つ1つのもやもやに対処していくことが求められます。「えー、そんなの面倒だよ」と思われた方もいるかもしれません。その通り、大変です(笑)。

 しかし、仕事の優先順位を決める裁量が各自にあること、そうした1つ1つの質問に誠実に対応することを優先して良いとされているため、思ったより負担ではありません。大半の質問は仕事に関係あるものがほとんどですので、結果として業務改善などにつながります。

 一人一人の意見に対応していると、1つの制度だけでは対応しきれず、例外を作ることになります。例外だらけの制度はもはや機能しなくなるので、サイボウズでは、いくつかの選択肢を設け、本人に選んでもらう方法をとったり、一人一人のニーズに応じてルールや制度を作ったりしています。

 例えば、出退勤時間は一人一人違います。体調や家族の状況、天候などに合わせて会社に出社するか在宅勤務とするかも、日々個人に任されています。

 このように一人一人のニーズに応えていくのは、手間がかかり、ともすれば生産性が悪くなるのではないかと思えます。しかし、やってみた結果、離職率が下がり、社員の満足度が上がり、売り上げも増えました。生産性の向上にも寄与したと言えるでしょう。

 目の前の働く人のもやもやに対応していった結果であるので、「これをすれば売り上げが上がる」とか、「満足度が上がる」とは言えません。しかしサイボウズが、ホワイト企業だと言われるようになった背景には、こうした愚直なコミュニケーションの蓄積があります。逆に言えば、それのみです。本当は何か魔法があったかのようなことを言いたいのですが、残念ながらそのようなものはこの15年弱、なかったような気がします。

 私たちが、「生産性より働く人の幸せを」と思うようになったのは、こうした自分たちのやってきたことを振り返ってきた結果です。

 今回は、サイボウズの事例を話しましたが、果たしてこれは特殊な例なのでしょうか? 実はそうではありません。次回は他の企業の例についても紹介します。

(なかむらアサミ)

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「離職率28%だったサイボウズは、どうやってブラック企業から生まれ変わったのか」の みんなの反応 6
  • 匿名さん 通報

    だいたい、テレビで働け!(低賃金で)と言ってるのは、高額所得者。バイト情報誌のCM出ているあの人は、高額のCM出演料貰って、低賃金バイト労働者を、働かせようとしているのだから、労働搾取である。

    3
  • 匿名さん 通報

    人手不足と言いながら人を使い捨てぐらいにしか思ってない企業が多いのが問題。日本社会はお先真っ暗になるのが目に見えている。

    2
  • 匿名さん 通報

    休日出勤=ブラックではない。なかむらアサミ。お前は一般企業で働いたことあるのか?

    0
  • 匿名さん 通報

    サービス残業は当たり前、週休1日も当たり前、12時間労働も当たり前、ボーナス無しも当たり前、資格も無いバイトを雇い、歯科技工士学校も支那人ばかりの歯科技工士

    0
  • 匿名さん 通報

    サイボウズなどは、働き方の効率化が分かっている企業だが、企業の多くは業務効率化に疎い。「昔からこうやっている」では無理だ。少子化で昔ほど人が居ない事が分かっていない。

    0
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