ネット小説大賞受賞! 高校生のほろ苦い青春群像劇

この想いにどんな名前をつけるのか

 蒼汰と小毬はただの幼馴染なのか、恋愛なのか、家族愛なのか。二人が相手に対する想いにどんな名前をつけるのか。蒼汰と小毬の関係が、本書の軸となっている。

 蒼汰はある経験から、恋愛を信じられなくなっていた。どれほど小毬が特別な存在であろうとも、恋愛を選ぶことができない。一方の小毬は、そんな蒼汰の葛藤に気づいている。もう一度想いを告げたら今度は突き放されるかもしれないと思い、このままでいいのだと自分を誤魔化している。その結果、蒼汰と小毬が選んだのは、それぞれ別の相手だった―――。

 もっと単純に好きなら好きと言えばいいのに、なんだかややこしい......というのが評者の正直な感想だ。ただ、高校を女子校で過ごした評者は、その年齢の男女の友情や恋愛の経験がスッポリ抜け落ちているからそう感じるのかもしれない。実際はそうとんとん拍子に事は運ばず、彼らのように感情が絡まってしまうものなのかもしれない。青春の疑似体験をしながら、そんなことを思った。

 「はじめから、屋上で過ごしたあの時間はとても脆く、とても歪だった。そうしたのは僕たちだ。(中略)結局、みんな現実から目をそらして縋りついていただけで、全部まやかしだったんだ。」
 「あの苦しさもあの涙もあの悲しみも、すべてが青春だった。そう思えるときが、いつか、くるのだろうか。そう言ってまた笑い合えるような日が、俺たちには訪れるのだろうか。この苦しさもこの涙もこの悲しみも、今の俺を壊してしまいそうなほど痛むのに。」

 どれほど一緒に時間を過ごしても、どれほど好きだと想っても、いつまでも同じ関係でいることはむずかしい。あの時間はなんだったのかと思うこともある。本書は読者が自身の経験を振り返りながら読める、ほろ苦い青春小説だ。

 櫻いいよさんは奈良県出身、大阪市在住。2012年『君が落とした青空』(スターツ出版)でデビュー。以降、ライト文芸・児童書などを中心に執筆している。本書は「小説家になろう」に掲載されていたものを、改題・改稿のうえ書籍化したもの。

(BOOKウォッチ編集部 Yukako)

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2020年3月19日のライフスタイル記事

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