
2020年9月から国が仕掛ける大型還元キャンペーン「マイナポイント」が始まった。春先のコロナ対策給付金のために「マイナンバーカード」を取得した人も多いが、今回初めて取得する人もいるようだ。8月現在の取得率はまだ18.2%に留まっているマイナンバー。12ケタの番号には何の意味もないが、世の中には意味を持つ番号も少なくない。本書『番号は謎』(新潮新書)は、番号の世界に魅せられた著者が書いた雑学本の傑作である。
国道マニアの元化学研究者
著者の佐藤健太郎さんは1970年生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了のもともとは化学の研究者。医薬品メーカーの研究職を経て、現在はサイエンスライター。『医薬品クライシス』(科学ジャーナリスト賞受賞)、『炭素文明論』、『世界史を変えた新素材』などまじめな著書もあるが、評者が記憶していたのは、「極道者」ならぬ『国道者(こくどうもの)』(新潮社)というマニアックな本だった。
全国の国道を走り回り、標識の写真を撮影して回るのが、何よりの楽しみという佐藤さん。国道にまつわる蘊蓄を傾けた本を書いた。だが、鉄道や高速道路にはいっさい興味がないのに、なぜ国道には「萌え」るのか。はたと気がついたのは、国道には「番号」がついているということだ。
1から順に番号がついているものが好きな性分らしい。化学の周期表も元素が1番から順に並ぶ。番号フェチであることを意識した佐藤さんが、「新潮45」に連載した「謎解きナンバリング」に加筆修正し、さらに書き下ろしを加えたものである。