「#MeToo」に火をつけたスクープの、複雑すぎる裏側。
拡大する(全3枚)

 アメリカにおける「#MeToo運動」は、この本から始まった、という触れ込みに引かれ、本書『キャッチ・アンド・キル』(文藝春秋)を手に取った。映画業界のセックス・スキャンダルがテーマで、著者は2018年ピューリッツァー賞を受賞した。しかし、単純なスクープものではなかった。いくつもの重層的な構造が隠れていた。

 著者のローナン・ファローは、アメリカ3大ネットワーク局の1つ、NBCの調査報道部門で働く記者だった。ハリウッドの大御所プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性的虐待疑惑を追いかけるというのが本筋だ。ワインスタインは「セックスと嘘とビデオテープ」「パルプ・フィクション」「英国王のスピーチ」などを手がけた、業界では神様も同然の大立者だった。

「#MeToo」に火をつけたスクープの、複雑すぎる裏側。
著者のローナン・ファロー氏  RonanFarrow_(c) Brigitte Lacombe

 著者は女優ミア・ファローの息子で、父親は映画監督のウディ・アレンというセレブ2世である。このことが、事態を複雑にする1つの要因になる。義姉のディランが父親のウディ・アレンを性的虐待で訴えたことについては、口を閉ざしてきた。そうした過去を封印してきたことが、決定的な局面である意味を持ってくる。両親についても折に触れて語っている。

 取材を始めると、過去にワインスタインから性的虐待を受けた女優が次々と浮かんできた。話せないと断る「被害者」が多かったが、次第に協力者も出てくる。しかし、高額な金銭と引き換えに猥褻行為については口外しないという秘密保持契約書がネックになり、報道に踏み切れないまま時間が過ぎていく。


この記事の画像

「「#MeToo」に火をつけたスクープの、複雑すぎる裏側。」の画像1 「「#MeToo」に火をつけたスクープの、複雑すぎる裏側。」の画像2 「「#MeToo」に火をつけたスクープの、複雑すぎる裏側。」の画像3