ゾッとする短編もたまらない。柚月裕子の作品集から、一押し紹介。
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 「佐方貞人」シリーズ、「孤狼の血」シリーズ、『盤上の向日葵』『慈雨』など、数々のベストセラーを世に送り出してきた柚月裕子(ゆづき ゆうこ)さん。

 本書『チョウセンアサガオの咲く夏』(株式会社KADOKAWA)は、デビューから13年、柚月さんが書き続けてきた短編をまとめた初のオムニバス短編集。

 「チョウセンアサガオの咲く夏」「泣き虫(みす)の鈴」「サクラ・サクラ」「お薬増やしておきますね」「初孫」「原稿取り」「愛しのルナ」「泣く猫」「影にそう」「黙れおそ松」「ヒーロー」の11編を収録。

 ミステリー、ホラー、サスペンス、時代、ユーモア、「佐方貞人」シリーズスピンオフなど、ジャンルもページ数も読み心地もいろいろ。なかには、柚月さんはこんな作品も書いていたのか! という意外なものも。

 「美しい花には毒がある 献身的に母の介護を続ける娘の楽しみとは......。」

美しい花のなかには

 ここでは、それまで見えていた景色が反転してゾッとした「チョウセンアサガオの咲く夏」と「初孫」を紹介しよう。

 「チョウセンアサガオの咲く夏」は、9ページのショートショートでありながら最も鮮烈だった。

 母の芳枝は今年72歳になる。認知症のうえ、半分寝たきりの状態だ。娘の三津子が世話をしている。医師の平山からは、「三津子ちゃんはほんとに偉いなあ」と感心されている。

 三津子は常にどこか怪我をしたり体調を崩したりして、親に心配をかける子供だった。そんな手がかかる三津子を、芳枝は溺愛した。


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