新型コロナウイルスの感染が爆発的に広がるなか、いったい今夏の東京五輪・パラリンピックは開けるのか?

米国の有力メディア、ニューヨーク・タイムズとブルームバーグが相次いで「東京五輪に暗雲」と報道をしたことで、一気に「中止」の動きが加速している。

自民党では派閥領袖クラスも

「もうダメ。
中止となったら菅政権が持たない」

を公言し始めた。

五輪選手村村長の川淵三郎氏も「中止は8割の人が納得」

スポーツ報知(1月17日付)「東京五輪『中止の可能性』米で初めて踏み込んだ表現 NYタイムズ」は、組織委関係者の中でも、「中止」に言及する大物が出始めたことを伝えている。

「政府、都、五輪組織委、IOCは開催の意思を一貫して表明しているが、取り巻く空気は率直にいって厳しい。共同通信社が1月9~10日に行った世論調査では、中止と再延期を合わせた反対意見が80・1%を占めた。開幕まで残り200日を切りながら五輪出場枠の43%が固まらず、予選の開催は不透明。世界最大の選手団を派遣し、五輪の開催のカギを握る米国内でも、参加への慎重な声が上がり始めているという」
「日本でも五輪の選手村の村長を務める川淵三郎氏(84)=日本トップリーグ連携機構会長=がSNSで開催可否の最終決定は3月末との私見を述べた。
1月16日に自身のツイッターで『最終決定は私見だが3月末頃か。IOCの判断に日本は従うことになる。それまで選手はもちろんオリパラ関係者は必死で準備しなければならない』と呼びかけつつ、『中止は8割の人が納得し、決行は2割の人が喜ぶ。その割合が増えない限り国を挙げての成功は難しい』との見方を示した」

時事通信(1月17日付)「東京五輪、コロナ猛威で暗雲 高まる中止論、春がヤマ場 ワクチン頼みも見通せず」は自民党内からも「中止論」が台頭してきたという衝撃的な動きを伝えている。

「今夏の東京五輪・パラリンピックに暗雲が垂れ込めている。開幕が半年後に迫るなか、新型コロナ感染が急拡大し、自民党や世論には中止論が台頭。
菅義偉首相は『安心・安全な大会』実現を目指すが、感染収束の道筋は示されていない。開催の是非をめぐる決断が、政権運営に影響するのは必至。今春にもヤマ場を迎える」

として、自民党からも「悲観論」が出てきたとこう続ける。

「『五輪は選手以外に各国からのスタッフが6000~7000人いないとできない。日本だけでは賄えない。難しい』。
組織委の森喜朗会長は最近、開催環境がさらに厳しくなったと周辺に打ち明けた。自民党でも『中止やむなし』の悲観論が高まっている。発令中の緊急事態宣言の期限は2月7日までだが、自民党内では『延長不可避』の見方が大勢だ。党幹部は宣言延長となれば『五輪は開けない』と断言。各地で成人式が中止となり、『若者が、なぜ五輪はできて成人式はできないのか、と怒る』とも指摘した」
宣言が2月7日以降に延期されたら「アウト」だ

中止になると、菅政権にとって大打撃になるのは必至だ。時事通信は「開催できるかどうか米国次第」と、こう続ける。

「ある派閥領袖も『中止なら政権に打撃。五輪開催をコロナとの戦いの勝利宣言にすると言ってきたのだから、政治責任を問われる』と言い切った。米国でも感染拡大が続き、首相周辺は『開催できるかは米国次第。米国人選手が参加しないとスポンサーもつかない』と弱音をはく。その米国の有力紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は1月15日、IOC関係者らの間で安全な開催の実現に懐疑的な見方が出ていると報じた」

ワクチンの遅れも痛手だ。

「菅首相は1月7日の記者会見で、ワクチン接種が各国で始まり、日本も2月下旬から医療従事者らを対象に開始する方針を説明。
『しっかり対応すれば、国民の雰囲気も変わる』と、ワクチン効果に期待を示した。接種は現時点で欧米が中心で、途上国への供給や副作用のリスクが課題。感染力が強いとされる変異ウイルスへの有効性も未知数だ」

菅首相は五輪を経済再生の起爆剤と期待しており、「観客入り開催」が大前提。首相が旗振り役となって外国人の入国緩和を進めてきたのもそのためだ。しかし、変異種が日本でも確認されたことで、全世界を対象とした入国緩和策を停止。例外的に認めてきたビジネス関係者らの往来も一時停止に追い込まれ、五輪開催に向けた状況は厳しくなるばかりだ。

最終的な決定はいつになるのか。時事通信はこう結んでいる。

「3月25日には福島県から聖火リレーが始まる。昨年(2020年)は聖火リレー開始直前に1年延期が決まった。聖火リレー開始までに、緊急事態宣言を解除し、感染収束にめどを付けることができるかが焦点となりそうだ」

(福田和郎)