吉野さん「IT革命と生まれ育つ」=リチウムイオン電池―ノーベル化学賞

 ノーベル化学賞に決まった旭化成名誉フェロー吉野彰さんは9日夜、東京・日比谷の同社で記者会見し、自らが開発したリチウムイオン電池について、「IT革命というとんでもない大きな変革とともに生まれ育ってきた」と語った。「幸せだと思っている」という。

 リチウムイオン電池を開発しても3年ぐらい、全く売れない時期があり、精神的、肉体的にきつかった。しかし、「ある日突然のごとく売れ出したのが1995年。まさにIT革命が始まった」ことで一変した。携帯電話に搭載され、普及に大きく貢献したが、吉野さん自身は携帯電話に拒否感があって長らく持たず、5年前からスマートフォンを使うようになった。

 ノーベル賞関係者から授賞連絡の電話があった際には、「環境問題に一つの答えを出してくれることに非常に期待されていた。うれしく思う」と笑顔を見せた。

 吉野さんは「リチウムイオン電池で電気自動車の普及が進み、クリーンになるだけでなく、巨大な蓄電システムができることになり、太陽電池や風力発電が普及しやすくなる」と説明。この点が環境問題への一番大きな貢献だという。

 リチウムイオン電池の開発が難しかったのは、燃えやすかったからだ。吉野さんは共同受賞が決まったグッドイナフさんが発見したコバルト酸リチウムを正極、特殊な構造の炭素を負極とする新電池を開発したが、安全性を確認する必要があった。

 川崎市の研究拠点は多摩川に近かったが、河川敷で行うわけにはいかなかった。宮崎県延岡市にあるダイナマイト試験場で新電池に鉄の塊を落とすなどの実験を行い、発火しないか確認した。吉野さんは「あの実験で前へ進めた。本当の意味でリチウムイオン電池が誕生したのはあの瞬間かなと思う」と振り返った。

 リチウムイオン電池は今後、電動飛行機の実現も期待され、吉野さんは電解質を固体にする「全固体電池」の開発に取り組んでいる。「リチウムイオンはまだ謎だらけ。今までと全然違う発想の技術が出てくる可能性があり、わくわくしている」と話した。

 ノーベル賞については「化学賞の分野は広く、デバイス(電子部品)系はなかなか順番が回って来ない。順番が回って来たら絶対取りますと言っていたが、まさか、まさかです」と語った。 

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