「中二病」自体は、人の発達過程において以前から存在

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メディア研究者の新井克弥氏は、「中二病化する現代社会」と題するブログの中で、成人の「中二病患者」が増えていると述べています。この「中二病」、1999年にタレントの伊集院光氏が自身のラジオ番組で、中学校2年生くらいの思春期によくある「成長過程にありがちな恥ずかしい行動をすること」を指して使いだしたのが発端とのことです。
その後、インターネット上で広がるにつれ、その意味も拡散しているが、基本的には「思春期にありがちな自意識過剰の言動を揶揄的に表現したもの」といえるでしょう。したがって、「中二病」自体は別に目新しい現象ではなく、人の発達過程において以前から存在していたものなのです。

大人の「中二病」は、ネット社会の産物

ただ問題なのは、本来的には成長の過程での一過的な現象であるはずの「中二病」が、新井克弥氏によると、現代社会ではインターネットの普及に伴い大人にも増えているということ。それが事実かどうかは、「中二病」という概念自体があいまいなため、実証はすぐにはできません。しかしながら、インターネットの普及が人の精神発達の過程に影響を与えていることは十分考えられるでしょう。つまり、インターネット上で構築されるバーチャル(擬似的)な世界と現実の世界の混同が、自我や対人関係の形成に与えるといった影響です。

ネット上の人間関係は確かに便利です。一つの理由は、双方向でありながら、実際は自分が気に入らなければ、何時でも一方的にその関係を切ることができるからです。現実の人間関係では簡単にはそういきません。このネット上の関係の手軽さが、逆に対人関係での未熟さ、また、それの前提となる自我の成長の未熟さに寄与していると言えます。例えば、米国ミズーリ大学の研究では、社会的に孤立している人がFacebookに友人関係を頼る場合、孤独感をより強めるとの結果が出ている。

「中二病」対策としてのボランティア活動のすすめ

加速度的に進行するデジタル社会の中で、大人の「中二病」の増大は、ある意味で必然ともいえますが、その対策としては、結局バーチャルな世界から抜け出て、現実の人間関係を再体験するしかないでしょう。

具体的には、援助を求めている人を助けるボランティア活動が良いと考えます。なぜなら、バーチャルな世界に現実逃避の居心地の良さを感じている「中二病者」には、報酬を得る代わりに競争が不可欠な「仕事」ではリスクが高すぎてついていけないかもしれないからです。しかしながら、報酬や競争を前提としない「ボランティア活動」であれば、気軽に取り組むことができるでしょう。そして自らが相手から必要とされていることを実感し、また、同時に自らできることの限界も身をもって知る体験の中で、自我が成長し、対人関係を再学習することにもつながります。

ただし、「中二病」現象の根本的な問題解決は、デジタル社会でない、生身の人間に優しい持続可能な社会をいかに作り上げられるかにかかっているでしょう。