ただ問題なのは、本来的には成長の過程での一過的な現象であるはずの「中二病」が、新井克弥氏によると、現代社会ではインターネットの普及に伴い大人にも増えているということ。それが事実かどうかは、「中二病」という概念自体があいまいなため、実証はすぐにはできません。しかしながら、インターネットの普及が人の精神発達の過程に影響を与えていることは十分考えられるでしょう。つまり、インターネット上で構築されるバーチャル(擬似的)な世界と現実の世界の混同が、自我や対人関係の形成に与えるといった影響です。
ネット上の人間関係は確かに便利です。一つの理由は、双方向でありながら、実際は自分が気に入らなければ、何時でも一方的にその関係を切ることができるからです。現実の人間関係では簡単にはそういきません。このネット上の関係の手軽さが、逆に対人関係での未熟さ、また、それの前提となる自我の成長の未熟さに寄与していると言えます。例えば、米国ミズーリ大学の研究では、社会的に孤立している人がFacebookに友人関係を頼る場合、孤独感をより強めるとの結果が出ている。
「中二病」対策としてのボランティア活動のすすめ加速度的に進行するデジタル社会の中で、大人の「中二病」の増大は、ある意味で必然ともいえますが、その対策としては、結局バーチャルな世界から抜け出て、現実の人間関係を再体験するしかないでしょう。
ただし、「中二病」現象の根本的な問題解決は、デジタル社会でない、生身の人間に優しい持続可能な社会をいかに作り上げられるかにかかっているでしょう。