リモートワークやステイホームで、家族全員が同じ屋根の下、濃密に時を過ごした去年と今年。聞こえはいいが、中の様子が見えない分、暴言や暴力に悩まされた妻も多いそう。

「コロナ禍で、家にいる時間が長くなった分、DVやモラハラなど夫婦間トラブルは増えています。いまは法律相談に赴く余裕すらないのが現状で、コロナの収束とともに離婚に向けて動きだす人は確実に増えそうです」

そう話すのは『こじらせない離婚』(ダイヤモンド社)の著書もある離婚専門弁護士の原口未緒先生。4回の離婚経験とカウンセラー的手法も取り入れ相談業務に当たる原口先生は、コロナストレスから家庭内でのモラハラは増えているという。

「私の実感としては40代、50代の主婦の方の相談が多い。ずっと外で働いていた夫が家にいるようになり、いままで見えていなかった相手の本性が露呈し、90歳まで生きるとしたら先の人生も長いので、別れるなら最後のチャンスと考える方もいます。でも、離婚を検討したほうがいいケースもあれば、いまは思いとどまったほうがよさそうなケースもあります。

慎重に判断して」

そこで、原口先生とともに具体的なDV事例を検証し、離婚か、新しい関係もありなのか、アドバイスをいただくことにしたい。

■勝手に役目を終えるな!

「ステイホームで夫婦げんかも多くなりましたが、ときには子どもたちが加勢してくれます。優しい2人の息子(小学3年生と中学2年生)は必ず私の味方について、『ママの言うとおりだ』『パパが家事をしないから!』と夫を攻撃。

けれど最近、夫が大爆発。息子たちに向かって『お前らは父親に意見ができるなんて大きくなったものだ。もう俺の役目は終わったから出ていくからな!』と。

これには子どもたちも大慌て。『パパ、出ていかないで』と下の子が大泣きして事なきを得たのですが。夫は味をしめたのか、事あるごとに『俺の役目は終わった』を乱用します」(44歳・パート・利子さん)

【回答】

「利子さんの夫は『かまってちゃん』な性格ですね。『行かないで』と引き止めてほしいのです。本当に出ていってもプチ家出で済むケースがほとんど。逆に、息子さんたちはそのつど『行かないで』と引き止めているのなら、メンタルに影響が出ないか心配です。

ただし私のクライアントさんで、気の強い妻との相性が悪く、『出ていく』と言って本当に家出し、10年帰宅せず、夫側の求めで遂に離婚したケースもあります。

利子さんはパートであれば夫からの生活費も必要でしょうし、愛があるのなら、あまりこじらせずに夫は“大きな長男”と思って、『頼りにしているよ』と言って適当にあやしてあげるのが得策かもしれません」(原口先生)

■セックスが苦痛で

「コロナになり、10年以上セックスレスだったのに、なぜか急に夫が求めてきました。探ってみると、夫には長年付き合っている部下のコがいたのですが、『田舎に帰る』と言って去っていったようなのです。

それでこちらに戻ってこられても不愉快なだけ。苦痛を通り越え、DVだと思うのですが。夫と向き合わないで済んでいたのに、こんなことでは『別れ』も考えてしまいます」(41歳・会社員)

【回答】

「苦痛であればお断りするべき。

夫とはセックスができないので断っている、という夫婦は私の知っている限りでも結構います。彼女がいなくなったからというのも失礼な話。『夫婦としての関係は子どものためにも継続するけれど、男女の関係は終わり』と伝えてもいいのでは。

日本では、夫婦間には愛情や性交渉が伴うもの、という根強い意識があります。しかし近年はポリアモリーといって配偶者の同意を得てほかに恋人を持ったり卒コンというスタイルもある。LGBTQも認知されたいま、家族のあり方も多様性を重んじる時代なのではないでしょうか」(原口先生)

■年上夫から「ババァ」呼ばわり

「コロナになり、それまではもうかっていた夫の経営する飲食店は、赤字続きで自転車操業に。

20歳年上で包容力もあり、『いつまでも二十歳くらいに見えるね!』と私を甘やかしてくれていた夫が、ガラリと変わってしまいました。口調もキツく『おいババァ!』と。

最初は衝撃でしたが、慣れました。名前を呼んでくれることもなく、『ババァ! 誰のおかげで生きていられると思っているんだ』と。機嫌のいいときでも『ババァちゃん。肩もんで』と。

勇気を出して、『ババァって言うのやめて』と言ったら、『もう金のかかる若いコはうんざりしたんだよ』と。だから私をババァ扱いしていたいそう。コロナで人の本性が見えた気がします」(31歳・専業主婦・実花さん)

【回答】

「これまで夫は、父親のようにあなたを庇護してなんでも与えてくれていた。それがコロナ禍で事業不振に陥ったとき、夫はあなたに対等な関係を望み、本音を漏らすようになったのでしょう。それを受け入れるか否かです。

愛情があるのなら、大変な思いをしている夫に『頑張ってくれているよね』というねぎらいの言葉をかけ、いまこそ本当の夫婦になれるときなのではーー」(原口先生)