「僕は一番最初に会うとき、自分をキレイだ、とか可愛いと思っている女の子の心をへし折ってやろうって思っているんです」

そう語るのは、元イエロー・キャブの取締役社長・野田義治氏(78)。90年代を中心に多くのグラビアアイドルを発掘・プロデュースし、日本で「巨乳ブーム」を牽引した人物だ。

“野田社長”の愛称で知られる同氏は、今も現役の芸能プロデューサーでもある。

野田氏が発掘したグラビアアイドルの中から、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の北条政子役が記憶に新しい小池栄子(43)、美容系書籍『キレイはこれでつくれます』(ダイヤモンド社)の大ヒットなどで活躍の幅を広げ続けるMEGUMI(42)が大きく羽ばたいたのは周知のとおり。

そんな野田氏が“最後の女優”としてプロデュースしているのが、矢崎希菜(23)。透明感あふれるルックスと特徴的なハスキー・ボイスを兼ね備える矢崎は、Netflix『今際の国のアリス』、TBS系ドラマ『闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん』などへの出演で近年注目を集めている。

■ルックスだけで勝負している子は2年もてばいいほう

二人の出会いには、どのような経緯があったのか。

「スカウトされた後、お母さんと一緒に(野田氏の)芸能事務所に行って。

そのときが野田さんとの初対面だったのに、『お前はそんなに可愛くないんだから』って言われて(笑)。最初はとにかく怖かったです」(矢崎)

中学三年生の時に野田氏の事務所スタッフにスカウトされた矢崎。「(野田氏を)全く知らなかった」という矢崎は当初、小池栄子やMEGUMIを育てた名物社長の経歴はもちろん知る由もない。しかし野田氏の厳しい鑑識眼により、矢崎は女優デビューを果たした。

野田氏は言う。

「この子、17年間も阿波踊りをやっているんです。

部活もそうだけど同じことを17年やれるという根性が凄い。昔からそうなんです。ひとクセありそうな根性の子の方が頑張ってくれるんですよ」

「根性強さ」という点でこれまで発掘してきたスターたちと重なる点をもつ矢崎。だが、矢崎が彼女たちと決定的に違ったのは売り出し方だ。

「芸能界という世界に入れた以上は、この子をグラビア方面で終わらせたくないと思っていました」と語る野田氏。かつて小池栄子など、有望な女の子を水着にして売り出してきたのに、なぜなのか。

「ルックスだけで勝負している子は2年もてばいいほうですよ。『花の命は短くて~』っていう言葉は全くその通りで。胸の大きい子はのちのち胸が邪魔になる。スタイルをセールスポイントにすれば、スタイルでしか売れなくなる。ルックスだけでは女優の魅力は頭打ちとなり、結局は短命に終わってしまう。だから最近も“どうして水着やらないの?”と言われることがあるけど、現在でそれをやって売れるとは思わないんです」

「そんなに可愛くない」や「見た目はそこそこ」と、矢崎にたいして辛口な評価を下す厳しさも。

あえて厳しい態度は、矢崎を慢心させまいという愛情のため。野田氏が「根性強さ」をもっていると言う矢崎は、その要求に応えるメンタルを持ち合わせていると言えるのかもしれない。矢崎は、いまでは野田氏の辛口発言に「免疫」ができたという。

「最初に会ったときに言われた『お前はそんなに可愛いくない』って発言は真に受けっちゃって、少しグサッときていたんです。でもこういう事を誰にでも言うし、みんなの前でも言うから慣れてきて免疫ができちゃいました(笑)」(矢崎)

■女優に必要なのは“パクリ”

野田氏が手塩にかける矢崎は、現在CMやドラマを中心に活躍の場を広げている。近年では「ミスタードーナツ」や「かんぽ生命」のテレビCMなど着実にメディア露出が増加。

そんな矢崎の目標は、現在放送中のNHK連続テレビ小説『虎に翼』のヒロイン・伊藤沙莉。伊藤と矢崎には特徴的なハスキー・ボイスという共通点もある。

「伊藤さんのような朝ドラのヒロインを目標にしています。ですが、最終的にはいろんな作品にコンスタントに出ている女優さんになりたい。癖のある役もやっているのにずっと使われ続けているような、自分の色を持っている役者さんに」(矢崎)

コンプレックスだった声も、徐々に自分の個性であると前向きに捉えられるようになったという。

「声がいいとほめてもらえることが増えました。

前はコンプレックスだったんですけど、この仕事を始めてからほめてくれる方々が本当に多くて、自分の個性なんだなって」(矢崎)

現在は野田氏の指導の下、女優としての基本的な所作を重視してレッスンに励んでいるという。

「できることは一通りやらないと。お芝居も発声も踊りも。いつなんどき役に立つか分からない。自分の引き出しを広げること。まだその重要性を本人が分かっていないかもしれないけれど」(野田氏)

「最初は演技のレッスンに5年くらい通わせてもらいました。1年前からは別の演技レッスンに通って、合わせて最近は歌のボイス・トレーニングに行っています。あとは日本舞踊の所作の勉強もしているんです」(矢崎)

意外だが、野田氏にとってタレントの外見にこだわりはそれほどないという。

「今ではキレイとか可愛いなんて子は履いて捨てるほどいる、あとは演技の腕しかないんです。一番肝心なことは常に言っているんだけど、それは『パクり』。要するにまず猿真似でもいいんです。

特に往年の女優たちから学んでもらいたいね。大竹しのぶさんが出演している初期の作品『青春の門』なんかね。ほかにも昔の女優でいえば大原麗子さんと加賀まりこさんとか。コケティッシュだけどどこか明るさを持ち合わせているような、彼女たちみたいなお芝居が理想的ですね。『不適切にもほどがある!』の河合優実も、少しタイプが違うけれど独特な存在感がありますよ。じつは彼女のマネージャーは昔俺のところにいた人なんだけどね」

演技の基本を学ぶ一方、「バラエティの楽しさも最近知った」という矢崎。阿波踊りやクラシックバレエ、バスケットボールで鍛えた運動神経も持ち味だ。

「アクションとかもやってみたい。バック転とかできたらいいですね(笑)」(矢崎)

野田氏は、矢崎の可能性を「未知数」であるという。

「もちろん、水着にしないとかNGはある。まだチャレンジしてないことが多すぎますね。のちのち敷居の高いところに放り込もうと思っています。舞台も一回やらせたい。とりあえず50歳、60歳になっても、この仕事で飯を食えてるよという事になってほしいですね」

「野田氏が手掛ける最後の女優と言われているが」という質問に笑顔で答える矢崎の回答は、非常に心強いものだった。

「プレッシャーですかね、でも全然大丈夫です!!」