TBS退社後は一般男性と結婚、アナウンサーとしての活動を休止し、表立った活動はほとんどありませんでした。
第2回となる本記事では、アラフォーにして自動車免許の取得にチャレンジした際のエピソードをおおくりします(以下、アンヌさんの寄稿)。
大型犬との北海道生活で、必要に迫られて
朝晩の気温差が激しく、私はもう9月の半ばぐらいから室内ではフリースを着ているくらい。北海道出身で札幌の気候には慣れていますが、これからの雪の季節が怖くて仕方ない……というのも私、アラフォーにしてやっと普通自動車免許を取得した、若葉マークホヤホヤの新米ドライバーなのです。
20年間東京に暮らしましたが、東京で暮らしていると、車の運転ができなくても生活に困らないという方もいらっしゃるでしょう。もちろん身分証明書として運転免許があると便利だなぁと、なんとなく感じた事はありましたが、実際に免許を取ろう! と思ったことが一回もなかったのです。
ところが……やはり生活の拠点を札幌に移す、及びゴールデンレトリバーを飼育しているという2つの条件が重なった今、免許を持っていないなんてことはちょっと考えられないような状況に追い込まれてしまう訳で。私自身、大型犬の飼育は人生において3頭目ですが、思わぬ怪我や体調不良はつきもの。そんなときに自分が責任を持って病院に連れて行けないなんて、やはりありえませんよね。
そうして私はワンちゃんのために泣く泣くアラフォーにして普通自動車免許を取得することを決意したのです。しかし! 私ははっきり言って運動神経がない。
“異様な怖がり”の私に、教官は……
こんな異様な怖がりの私が運転なんて楽々にできるはずがない訳で。教習所でもまあ大変でした。
まず、アナウンサーだった私は目の前に起きている現象を実況してしまう癖があり、それが教習所の先生には非常に目に余ったようでした。
ここで左折してよろしいのでしょうか!? こんなスピードを出していたら、いざと言うとき止まれないんじゃないでしょうか!? 横断歩道に狐が! いや、猫!? 危ない!! と目の前の情報をそのまま口に出してしまう私。ギャーギャーうるさいこと。
教官の発言を受け、“脳内会議”を繰り広げた
「あのさぁ、物覚えが悪いのは年齢のせい? それとももともと?」
おぉ!?
これは、今の時代アウトではないでしょうか……? さすがの私も、これにはなんと答えるのが正解か、とっさに判断がつきませんでした。この発言は絶対に指導者として、及び人としてアウトだと思うのですが、車内の密な空間で教官も油断をしてしまったのでしょうかね。
思えばお酒の席などで、例えば身体的特徴を「いじられ」、それに複雑な気持ちを抱きながらも、なんとなく自虐的に流してしまう……なんていう経験、男性女性問わず、一度や二度は経験している方、いらっしゃるでしょう。
本来でしたら、
「先生、それはどういった意味でしょうか? 私のようなアラフォーが免許を取得するのはいけないことなのでしょうか?」
と詰め寄って抗議することが正解だったのかもしれません。その場が丸く収まればいいやという逃げは、結局次の世代にその負債を残してしまうことになるとよく聞きます。絶対に受け流してはいけない、と。
正面切って戦えない、へっぴり腰な私
これは本当に良くなかった。どういった意図でこの発言が飛び出したのかわかりません。どんなに教えてもまったく運転が上手くならない私に対していら立ちを覚えてしまったのかもしれませんが、いずれにしてもこれは年齢に対する暴言ともいえます。
今でも、その場で抗議しなかったこと、その場ではできなくても、例えば教習所側に抗議をするくらいのことはしてもよかったのかなあ……なんて考えることがあります。
それでも、思わぬときにこんな出来事に遭遇することがある、そしてまだ私は正面切って戦うことができない……。結局はまだまだへっぴり腰な自分の小ささに反省した次第なのです。
ちなみに、無事免許は取りましたが、肝心の車には納車してからまだ1回しか乗っていません。だって怖いんだもん! とほほ……練習しないとね。
【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道生まれ。お茶の水女子大学大学院修了。2010年、TBSに入社。情報番組『朝ズバッ!』、『報道特集』、『たまむすび』などを担当。2016年退社後、現在は故郷札幌を拠点に、MC、コメンテーター、モデルとして活動中。文筆業にも力を入れている。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中