2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(当時は小林悠として活動)。

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 TBS退社後は一般男性と結婚、アナウンサーとしての活動を休止し、表立った活動はほとんどありませんでした。
2024年8月31日、自身のインスタグラムで婚姻関係の解消を報告。故郷である北海道に“出戻り”、38歳で再スタートを切ったアンヌさんが、北海道での生活のようすや心境をつづる連載をスタートしました。

 第2回となる本記事では、アラフォーにして自動車免許の取得にチャレンジした際のエピソードをおおくりします(以下、アンヌさんの寄稿)。

大型犬との北海道生活で、必要に迫られて

“元TBSアナ・38歳”で北海道に出戻った私が、教習所の男性教官に言われた“衝撃の一言”。今の時代アウトでは…?
道内のこうした取材にも車で行けたら最高なのに!と思っていました
 札幌は秋を通り越して、冬の足音が聞こえ始めています。

 朝晩の気温差が激しく、私はもう9月の半ばぐらいから室内ではフリースを着ているくらい。北海道出身で札幌の気候には慣れていますが、これからの雪の季節が怖くて仕方ない……というのも私、アラフォーにしてやっと普通自動車免許を取得した、若葉マークホヤホヤの新米ドライバーなのです。

 20年間東京に暮らしましたが、東京で暮らしていると、車の運転ができなくても生活に困らないという方もいらっしゃるでしょう。もちろん身分証明書として運転免許があると便利だなぁと、なんとなく感じた事はありましたが、実際に免許を取ろう! と思ったことが一回もなかったのです。

 ところが……やはり生活の拠点を札幌に移す、及びゴールデンレトリバーを飼育しているという2つの条件が重なった今、免許を持っていないなんてことはちょっと考えられないような状況に追い込まれてしまう訳で。私自身、大型犬の飼育は人生において3頭目ですが、思わぬ怪我や体調不良はつきもの。そんなときに自分が責任を持って病院に連れて行けないなんて、やはりありえませんよね。

 そうして私はワンちゃんのために泣く泣くアラフォーにして普通自動車免許を取得することを決意したのです。しかし! 私ははっきり言って運動神経がない。
そして運転は下手! と断言できます。

“異様な怖がり”の私に、教官は……

“元TBSアナ・38歳”で北海道に出戻った私が、教習所の男性教官に言われた“衝撃の一言”。今の時代アウトでは…?
お出かけが好きな愛犬の希望を叶えてあげたかったのです
 私は昔から変なところで怖がり。例えば道を歩いていてバットの素振りの練習をしている人を見ただけで、恐れおののいてしまうのです。なぜなら、そのバットがちょっとした弾みでその人の手から滑って、ものすごい勢いで飛んできて、私の脳天を破壊するんじゃないか……という心配性を通り越した、恐ろしい妄想が脳内を一瞬で追い尽くしてしまうわけです。いわば過剰妄想。

 こんな異様な怖がりの私が運転なんて楽々にできるはずがない訳で。教習所でもまあ大変でした。

 まず、アナウンサーだった私は目の前に起きている現象を実況してしまう癖があり、それが教習所の先生には非常に目に余ったようでした。

 ここで左折してよろしいのでしょうか!? こんなスピードを出していたら、いざと言うとき止まれないんじゃないでしょうか!? 横断歩道に狐が! いや、猫!? 危ない!! と目の前の情報をそのまま口に出してしまう私。ギャーギャーうるさいこと。

教官の発言を受け、“脳内会議”を繰り広げた

“元TBSアナ・38歳”で北海道に出戻った私が、教習所の男性教官に言われた“衝撃の一言”。今の時代アウトでは…?
『朝ズバッ!』時代、25歳頃の私
 あるとき、私とほとんど年齢が変わらないと自己紹介のときにおっしゃっていた男性教官が、ハンドルをブルブル震えながら握り締める私に向かってこんなとんでもない一言を放ったのです。

「あのさぁ、物覚えが悪いのは年齢のせい? それとももともと?」

 おぉ!?

 これは、今の時代アウトではないでしょうか……? さすがの私も、これにはなんと答えるのが正解か、とっさに判断がつきませんでした。この発言は絶対に指導者として、及び人としてアウトだと思うのですが、車内の密な空間で教官も油断をしてしまったのでしょうかね。

 思えばお酒の席などで、例えば身体的特徴を「いじられ」、それに複雑な気持ちを抱きながらも、なんとなく自虐的に流してしまう……なんていう経験、男性女性問わず、一度や二度は経験している方、いらっしゃるでしょう。
私もそうでした。ここに来て、そういったセクシャルな不規則発言のみならず、年齢に関してもこういった暴言が飛んでくるフェーズに自分は入ったのか!? といった脳内会議を数秒のうちにその場で繰り広げた私。

 本来でしたら、

「先生、それはどういった意味でしょうか? 私のようなアラフォーが免許を取得するのはいけないことなのでしょうか?」

 と詰め寄って抗議することが正解だったのかもしれません。その場が丸く収まればいいやという逃げは、結局次の世代にその負債を残してしまうことになるとよく聞きます。絶対に受け流してはいけない、と。

正面切って戦えない、へっぴり腰な私

“元TBSアナ・38歳”で北海道に出戻った私が、教習所の男性教官に言われた“衝撃の一言”。今の時代アウトでは…?
そろそろ服装もセーター中心に
 年齢やセクシャリティに対する何らかの嫌がらせのようなものが発生した場合は、自分だけのためのみならず周りのためにきちんと戦うべきなのだと、頭ではわかっているのに……。私は結局その場を笑ってやり過ごしてしまったのでした。要するに「大人の対応」なるものにかこつけて誤魔化し、逃げてしまったのです。

 これは本当に良くなかった。どういった意図でこの発言が飛び出したのかわかりません。どんなに教えてもまったく運転が上手くならない私に対していら立ちを覚えてしまったのかもしれませんが、いずれにしてもこれは年齢に対する暴言ともいえます。

 今でも、その場で抗議しなかったこと、その場ではできなくても、例えば教習所側に抗議をするくらいのことはしてもよかったのかなあ……なんて考えることがあります。
世の中は年齢や性別による区別及び差別についてどんどん厳しくなっており、昔に比べればそれを取り巻く環境は良くなっているのでしょうが……。

 それでも、思わぬときにこんな出来事に遭遇することがある、そしてまだ私は正面切って戦うことができない……。結局はまだまだへっぴり腰な自分の小ささに反省した次第なのです。

 ちなみに、無事免許は取りましたが、肝心の車には納車してからまだ1回しか乗っていません。だって怖いんだもん! とほほ……練習しないとね。

“元TBSアナ・38歳”で北海道に出戻った私が、教習所の男性教官に言われた“衝撃の一言”。今の時代アウトでは…?
納車したらこの笑顔!この笑顔のために運転がんばらなくては
<文/アンヌ遙香>

【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道生まれ。お茶の水女子大学大学院修了。2010年、TBSに入社。情報番組『朝ズバッ!』、『報道特集』、『たまむすび』などを担当。2016年退社後、現在は故郷札幌を拠点に、MC、コメンテーター、モデルとして活動中。文筆業にも力を入れている。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中
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