唐揚げブームが終焉。と思いきや、新しい風が吹きはじめています。
唐揚げ専門店ブームは終焉? いや、潮目が変わってきた

こだわりの味、ご当地感を売りにした専門店が、自分の街や近所に登場したという方も多いかと思います。その後新型コロナウィルスが落ち着きはじめた頃、“専門店の倒産ラッシュ”が話題に。高級食パンのようにブーム終焉を迎えると思われましたが、2024年に入ってから潮目が変化してきたと言います。
どうやら唐揚げブームが、“定着”というフェーズに移行したようなのです。
私はこの状況について、食トレンドを研究する立場としてもう少し具体的に掘り下げたいと思いました。そしてある結論に至ったのです。それは、「唐揚げ人気に陰りなし、実はレベルがますます上がっている」ということ。そこで今回は、唐揚げ専門店の倒産理由をひも解きながら、唐揚げのリアルトレンドを見ていきたいと思います。
唐揚げは敵が多すぎる。専門店が倒産しやすい理由とは?

そこから見ていくと、唐揚げはブームという概念でくくられるものではないことに気がつきます。家庭での手作り、ファミレス、スーパー、コンビニ、弁当・おにぎりなどの専門店、冷凍食品……、実にたくさんの選択肢を増やして愛されているではないですか!
唐揚げと同じくらい手頃で親近感があり、購入の選択肢がある料理を探すとなると、同レベルはなかなか見つからないのではないでしょうか。
つまり唐揚げ自体は、ますます盛り上がっている。小規模な唐揚げ専門店が倒産してしまう大きな理由は、おいしくないからではなく、敵が多すぎるからなのです。

唐揚げ単品では商売が成り立たない

コンビニでは1個からの購入が可能になっています。つまり唐揚げのように1000円を超えない購入単価では、専門店を継続運営していくためには相当しんどいのです。
ちなみに家族でがっつり食べたいという場合はコスパ重視となり、冷凍食品に頼る、面倒とは感じながらも自宅で揚げる選択肢に切り替える人は少なくないはず。
専門店の中で生き残っている企業を見ていくと、「からやま(「かつや」を運営するアークランドサービスホールディングス)」、「から好し(すかいらーくグループ)」など大手が目立つ結果に。そして企業としての事業内容を見ると、唐揚げ専業ではないことがわかります。
裏返せば、その中で生き残っている専業専門店は、よほどの実力があるということになります。
おいしい唐揚げが100円台で買える時代に

正直なところどこで買ってもレベルが高く、「唐揚げにハズレなし」という時代が到来。食料品高騰や個人所得が上がらない状況下において、多くの人々を喜ばす名店を探してみると、テイクアウト専門の弁当チェーンに確かな強みを発見することができます。
お客にとっては少量から買えること、価格がリーズナブルであることがメリット。企業側からすると大手になればなるほど原料調達が優位で新商品にチャレンジしやすいという強みを発揮することができます。
私自身が最近リピートしているのが、「キッチンオリジン」。運営するオリジン東秀はイオングループの一員であり、安くておいしい唐揚げが人気になっています。

台湾唐揚げは“ごほうび”として

唐揚げは安くてうまいは当たり前になっています。また、飛びぬけたおいしさがあれば高くてもファンがつくことも。
私たちからすれば唐揚げの選択肢が広がる恵まれた時代になっていますが、今後は安さやおいしさに加えて、その店(ブランド)ならではの個性や、食べるときの楽しさなどがシビアに求められるでしょう。そういう点でもますます注目していきたいと思います!
<文/食文化研究家 スギアカツキ>
【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。